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ウィズ~オズの魔法使い~ 東京国際フォーラムCホール [ミュージカル]

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オズの魔法使い [DVD]

オズの魔法使い [DVD]

  • 出版社/メーカー: ファーストトレーディング
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ウィズ [DVD]

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天使には『オズの魔法使い』への強烈な思い入れがある。小学3年生の時に、生まれて初めて観た本格的な舞台で、たぶんミュージカル仕立てだったような気がする。故郷の市民会館にやって来たカンパニーは混成チームで、主演のドロシーは童謡歌手の小鳩くるみ、オバケのQ太郎やパーマンの吹き替えで人気のあった石川進が参加していた。幕が開くと魔女の足だけが、竜巻に飛ばされたドロシーの家の下から出ているという驚愕のファーストシーンから、かかし、ブリキのきこり、ライオンに出会ってオズの国を目指すという予想外の展開で、もうぽか~んと舞台を凝視していたと思う。空飛ぶ猿の場面では、石川進が得意の物まねで猿の声?を一人で担当して「ウィキッー」とマイクで叫んでいたのが印象に残っている。

そして中学生の時に、ジュディ・ガーランド主演の『オズの魔法使い』がテレビで放送されたときは、ラジカセをテレビにつないでカセットに音だけ録音。何度も何度も繰り返して聞いた。そのおかげで主題歌の。「Over The Rainbow」は暗記してしまうほど聞き込んだ。

さらに「オズの魔法使い」がオール黒人キャストのミュージカルとしてブロードウエイで上演され映画になったと聞き、公開初日にスーパーシネラマ方式の劇場、テアトル東京の初回に駆け付けた。2階席の最前列でみたのだけれど、観客はなんと天使ひとりだけ。記録的な大コケだった。サントラ盤の音楽は以下の通り。若き日のダイアナ・ロスやマイケル・ジャクソンが出ていたけれど、さすがに1978年の日本の観客には受け入れ難い内容の映画だったようである。数あるナンバーで最も印象に残ったのはEase On Down The Roadだった。いつか日本で上演される機会があれば観てみたいという願いが、今回ようやく実った感じである。

ディスク:1
1. Main Title (Overture, Part One)
2. Overture (Part Two)
3. The Feeling That We Have
4. Can I Go On?
5. Glinda's Theme
6. He's The Wizard
7. Soon As I Get Home/Home
8. You Can't Win
9. Ease On Down The Road #1
10. What Would I Do If I Could Feel?
11. Slide Some Oil To Me
12. Ease On Down The Road #2
13. (I'm A) Mean Ole Lion
14. Ease On Down The Road #3
15. Poppy Girls
ディスク:2
1. Be A Lion
2. End Of The Yellow Brick Road
3. Emerald City Sequence
4. So You Wanted To See The Wizard
5. Is This What Feeling Gets? (Dorothy's Theme)
6. Don't Nobody Bring Me No Bad News
7. A Brand New Day
8. Believe In Yourself (Dorothy)
9. The Good Witch Glinda
10. Believe In Yourself (Reprise)
11. Home

主人公が自分の家を出て冒険し、最後にまた家に戻るといった物語は、バレエ『くりみ割り人形』や『青い鳥』など、いろいろなパターンがあるが、『オズの魔法使い』が異色なのは、それが竜巻という自然災害によって始まるという点である。2012年10月にこの作品を観る観客としては、どうしても日本の自然災害である東日本大震災を思い出さずにいられない。その後の人災である原発事故は「悪い魔女」だし、無力で無責任なオズの魔法使いは、指導力のないどこかの国の首相を思い出さすにおれなかった。この国の閉塞状況を打ち破る為に、この作品の上演を思いついたという宮本亜門の社会状況を見る目は正しかったのかもしれない。

もっとも大多数の観客は、そうした想いに関係なくAKB48からオーディションで選ばれた増田有華や小柳ゆきあたりがお目当てだったり、小さなお子様を連れた親子連れなど、純粋に「オズの魔法使い」を楽しみに来たようだった。舞台はそれにふさわしく、シンプルだけれど工夫の凝らされた舞台装置、ルーツであるブラックミュージックと元になった映画を連想させる衣裳の数々、CGを使った映像演出など、21世紀にふさわしいものになっていたと思う。

客席に入ると一面の壁でアパートの窓が並んでいる感じ。中央にドロシーたちが住む一室があって、ぬいぐるみや鏡台、キッチンなどが見える。テレビには天気予報が竜巻の来襲を告げている。キャスターが陣内孝則でレポーターが森公美子だったりと芸が細かい。竜巻がやってきてドロシーはオズの国に吹き飛ばされる。一面の壁が飛ぶと、後ろには大きな白い円形舞台が出てくる。回り舞台は舞台が回転して舞台装置の転換が行われるが、こちらはレコードのような円形の部分に溝が2重にあって、その溝に沿って舞台装置が動くという仕掛け。

マンチキンたちは事務用の椅子?に腰掛けて縦横無尽に動き回ったりと宮本亜門らしい冴えをみせて上手いし、驚きが楽しさに通じるというミュージカルの王道を突き進む舞台だった。かかしはパパの持っていたアイスクリームに。ブリキのきこりは、流し?のカトラリーの中に。ライオンはママの編み物の毛糸の束にと、家の中のさまざまなものが生かされていて、日頃のドロシーの空想が具現化されたような雰囲気があってよかった。一行をオズの国へ導く黄色い道の案内人のジョンテ・モーニングの存在は舞台ならではの存在で好ましい。

とはいうものの、注目はやはりドロシーを演じた増田有華ということになるようだ。20歳前後ということらしが、少女にしかみえないあどけなさが残っているので大人が少女を演じる違和感がなかった。それも劇団四季の大人の子役のような不自然さがまったく感じられず、自然体で演じていたのが、ドロシーの必死とも重なって、なかなか見応えがある。単なるアイドルの実演というレベルではなかった。ただ少女から大人へ成長していくといった芝居ができていないのと、主役としてはオーラが不足していて存在感が今ひとつなのは、AKB48の立ち位置とも重なるものだったかもしれない。

映画でダイアナ・ロスが演じただけあって、パンチが効いて、説得力のある歌を歌わなければならず、単なるアイドルという枠を超えなければならない難役中の難役だったはずだが、成功していた部分もあり、物足りない部分もあった。成功していたのは役に寄り添いつつ、自分のAKB48での苦難や苦悩を重ねつつ体当りして役を自分のものにしようと、もがいている姿が感動的である。物足りなさは旅を通じて自分も成長していくという部分を描ききれていなかったことだろうか。当然のことながらPAを使用しているので、音さえ外さなければ声量や声質はなんとか加工できる。それでも森久美子や小柳ゆきといった経験豊富な歌手と比べれば、その表現力や歌心といったものはまだまだだった。

かかしのISSA、 ブリキ男の良知真次、ライオンのエハラマサヒロと個性的で身体の能力に優れた共演者を得て、舞台に弾みがでた。たまたま観た日にはライオンのエハラマサヒロが高音で声が伸びず苦しそうだったが、原作のブラックミュージカルといったテイストを感じさせたのもお手柄だった。

対するイブリーン(西の悪い魔女)の森公美子、 グリンダ(南の善い魔女)の小柳ゆき、アダパール(北の善い魔女)の瀬戸カトリーヌも個性的で歌唱力と演技に優れていて、舞台を大いに盛り上げたが、小柳ゆきなど出番が少なくてもったいないなあと思ったが、よくぞ舞台に出てくれたと感謝をしたい。そして黄色い道の案内人のジョンテ・モーニングの驚きの身体能力を誇るダンスは楽しめたし、エメラルドシティの門番の吉田メタル、 ウィズの陣内孝則も芸達者なところを見せてくれて楽しめた。

アンコールでは客席に出演者が降りていくなど、楽しい演出があって大いに盛り上がっていた。それはそれでいいのだが、果たしてBelieve In Yourself だけで問題解決できるのかどうか。元気のない日本を元気な日本にできるのか、変われるのか。変われないのか。もっと観客に訴えかけがあってもあれば大人の観客も満足できたのではないだろうか。映画でダイアナ・ロスがありなら、小柳ゆきがドロシーなんていうサプライズ配役なんていうのもありかも。パルコ制作なら、美輪明宏先生あたりにご登場願えば、もっと凄い世界が展開したのかも。清潔すぎて、少々毒が足りなかったのが物足りなさの原因だったかも。


【ミュージカルナンバー】
第1幕

プロローグ      ♪Prologe
あの時の気持ち ♪The Feeling That We Had
彼はウィズ ♪ He's The Wizard
帰るの!家に ♪ Soon As I Get Home
一昨日生まれて ♪I was born on the day before yesterday
行くんだ♯1 ♪ Ease On Down The Road #1
オイルを差してよ ♪ Slide Some Oil To Me
行くんだ♯2 ♪ Ease On Down The Road #2
俺様はライオン ♪ Mean Ole Lion
行くんだ♯3 ♪Ease On Down The Road #3
真のライオン ♪Be A Lion
会いたかったんだろう 私に! ♪So You Wanted To See The Wizard
心を持ったら ♪What would I do if I could Feel

第2幕

嫌なニュース    ♪Don't Nobody Bring Me No Bad News
ブラン・ニューディ ♪Everybody rejoice a Brand New Day
何様? ♪Who do you think you are?
ガリ! ♪Y'all got it
休みなさい ♪A rested body
ビリーブ ♪ Believe In Yourself
我が家 ♪ Home

原作/ライマン・フランク・ボーム『オズの魔法使い』
脚本/ウィリアム・F・ブラウン
作詞・作曲/チャーリー・スモールズ
翻訳・演出/宮本亜門
訳詞:森雪之丞
音楽監督・編曲:Nao'ymt
振付:仲宗根梨乃
美術監修:増田セバスチャン
衣裳デザイン:岩谷俊和
ヘアメイク:川端富生
歌唱指導:ちあきしん
音楽助手・稽古ピアノ:中條純子
演出助手:河合範子
舞台監督:藤崎遊

キャスト:
ドロシー ・・・ 増田有華(AKB48)
かかし ・・・ ISSA
ブリキ男 ・・・ 良知真次
ライオン ・・・ エハラマサヒロ
イブリーン(西の悪い魔女) ・・・ 森公美子
グリンダ(南の善い魔女) ・・・ 小柳ゆき
黄色い道の案内人 ・・・ ジョンテ・モーニング
アダパール(北の善い魔女) ・・・ 瀬戸カトリーヌ
エメラルドシティの門番 ・・・ 吉田メタル
ウィズ ・・・ 陣内孝則

アンサンブル
丞威、永瀬匡、廻修平、丘山晴己、加賀谷真聡、泉野翔大、DAICHI、U-YEAH、YORI(DA PUMP)、森実友紀、MIHO BROWN、エリアンナ、KAE THE FUNK、今枝珠美、Medusa、矢野祐子


企画製作:(株)パルコ


ウィズ [DVD]

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ジェーン・エア  日生劇場 [ミュージカル]



日生劇場で東宝制作ではなく、珍しくも松竹制作のミュージカルが上演された。あの「レ・ミゼラブル」の演出家であるジョン・ケアードが、脚本・作詞補・演出を担当した「ジェーン・エア」の3年ぶりの再演である。もっとも慣れないミュージカルの制作だったため、ターゲットが絞りきれなかったのかたった1ヶ月の興行だというのに集客には苦労したようで、イープラスでS席の半額程度のチケットが手に入ったので日生劇場へでかけてみた。そうした努力が実ったのか、客席はそこそこ埋まっていたけれど、リピーター割引なるチケットを終演後に売っていたので、アノ手コン手の販売努力は続けているようである。さらに日によっては終演後にトークショーなどもあったようである。

初演は高い評価を得たようだけれど、宣伝用のポスターでは世界の名作文学という重いイメージが先行しているので、ちょっとチケットを買うのがためらわれるような気がした。斬新な手法を使ったなかなかの傑作だったのだが、広報活動を含めて宣伝には失敗したようだ。チケットを買おうという観客に対するアプローチが甘かったようで、松たか子の人気だけでは劇場をいっぱいにできないという現実が露わになってしまった格好である。

観客が集まらない舞台が必ずしもつまらないとは限らない。音楽、演出、美術ともに高水準で最初から最後まで一瞬たりとも目が離せない高水準の舞台だったのは確かである。ミュージカルというと1曲終わる毎にお約束の拍手というイメージだが、本作では最初から科白と歌が入り交じり、舞台もどんどん進行していくので、なかなか拍手のタイミングがなく、ようやくアリア?風に高らかに歌いあげるナンバーでようやく拍手が起こるといった具合に進んでいった。芝居を止めなずに演技を連続させていく演出のせいもあって、ミュージカルでありながらダンスの要素はほとんどなく、台詞劇の中に歌がはさまるといった構成でストレート・プレイを観ているような気分に何度もなった。それに笑いの要素がほとんど存在しないし、ちょっと特殊な「愛」を扱っているだけに、なかなか感情移入の難しい物語で、ブロードウエイで長期ロングランができなかったり、トニー賞を逃したのも仕方がない。

劇場へ入るとオーケストラピットは舞台面まで嵩上げされていて、張り出し舞台は円形になっている。左右に客席から舞台に上がる階段がついていて、SP席という舞台上に作られた客席へ上がっていく観客と案内嬢を普通の観客は観ることになる。舞台の手前には上手と下手に奈落へ続く階段が設けられている。演技は主に円形舞台の中央で行われる。日生劇場にはグランドサークルという中2階の席があるが、それがそのまま舞台に伸びたような感じで、闘牛場の観覧席あるいは野球場の外野席といった風に、本舞台を斜め後方から見下ろす特別の客席が設けられている。平成中村座の桜席のようなもので、劇団四季の「エクウス」、「春のめざめ」を引き合いに出すまでもなく、舞台上へ観客席を設けるのは珍しくないのだが、この舞台の凄いところは、一般の観客の注意を中央のアクティングエリアに集中させて、SP席の観客の存在を全く意識させないところである。

舞台中央から後方にかけては、イギリスの田舎風景が広がっていて、上手奧には階段状の丘が広がり一本の大きな木が立っている。中央には池がある心で、そこがオーケストラピットになっているという意表をつく仕掛け。そこにかかる小さな橋を渡ると下手へ通じる通路があって、幕開きは下手の奧からジェーン・エアの松たか子が登場する印象的な場面となる。それはイギリスの自然と光を感じさせる卓越した照明の力に負うところが大きい。あのように清涼な空気を感じさせる照明は初めて見た。客席内には小鳥のさえずりが聞こえてきて、まさしく英国人が理想とする田舎が再現されていた。

芝居は、最小限の小道具と幼少期のジェーン・エアや成人したジェーン・エアを上手く組み合わせ、手際よく物語を進めていく。それが単なる説明に終わっていないのは、松たか子の見事な歌唱とジェーン・エアが乗り移ったかと思えるような演技で物語世界を支えていたからである。共演者では、橋本さとしが安定した歌唱と演技力で松たか子を支えたし、寿 ひずる、旺 なつき、阿知波悟美といったベテラン女優陣が舞台をよく締めていた。ダンスナンバーがなかったのは作品の性格上仕方がないが、この舞台で足りないのは、そうした華やかさであろうか。地味で救いようのない話なだけに、よけいにそうした味付けが欲しいような気がした。

強い意志をもった松たか子のジェーン・エアは芝居に歌に大忙しで、深く役柄を掘り下げることができなかったのか、出ずっぱりの大活躍にもかかわらず感情移入ができなくて客観的に眺めるだけだった。貴女の意志は強く、自分の運命を自らの手で切り開いていくので、悩みは苦しみとは無縁なように思えてしまった。もっと屈折した人間像が描ければ、より感動は深くなったと思う。作品でもうひとつだったのは、記憶に残るナンバーが少なかったことで、物語の重心がかけられていたようで、音楽の突出した目立ちすぎは、あえて避けたかのようである。

それでも深い感動にたどりつくことができたのは、ジョン・ケアードならではの、舞台でしか表現できない工夫が凝らされていたことと松たか子の存在である。安定感のある歌唱力、なかでも明瞭な言葉を発することでドラマを最後まで牽引した実力は見事というしかない。期待していなかった分だけ、感動も大きかったように思う。生真面目すぎるほど真面目な舞台だったことが、動員を妨げているとしたら、この舞台を選択しなかった観客の方が悪いと思う。少なくとも支払った金額以上の感動は手にすることができるのだから。

[キャスト]

ジェーン・エア:松たか子
ロチェスター:橋本さとし
.フェアファックス夫人:寿 ひずる
スキャチャード夫人/バーサ・メイソン/デント夫人:旺 なつき
リード夫人/レディ・イングラム:阿知波悟美
ジェーンの母/ローウッド学院教師/ソフィ:山崎直子
ブランチ・イングラム/ロードウッド学院教師/辛島小恵
ジェーンの父/イングラム卿/シンジュン・リバース:小西遼生
リチャード・メイスン:福井貴一
ブロクハースト氏/デント大佐/牧師:壤 晴彦
.
ロバート:小西のりゆき
ローウッド学院教師/グレース・プール:鈴木智香子
ヘレン・バーンズ/メアリ・イングラム:さとう未知子
ローウッド学院教師/リア:安室 夏
ローウッド学院教師/ベッシー:谷口ゆうな
ローウッド学院教師/ロージー:山中紗希
エイブラハム:阿部よしつぐ
.
幼いジェーン/アデール(トリプリキャスト):齊藤真尋
幼いジェーン/アデール(トリプリキャスト):蒲生彩華
アデール(トリプリキャスト):笹近実佑
幼いジェーン(トリプリキャスト):松田亜美
ジョン・リード/教会の侍者(ダブルキャスト):春口凌芽
ジョン・リード/教会の侍者(ダブルキャスト):吉井一肇

[スタッフ]

脚本・作詞補・演出:ジョン・ケアード
作詞・作曲:ポール・ゴードン
翻訳:吉田美枝
訳詞:松田直行
演出補:ネル・バラバン
音楽監督:ビリー山口
編曲:ブラッド・ハーク
ラリー・ホックマン
スティーブ・タイラー
美術:松井るみ
照明:中川隆一
衣裳:前田文子
音響:湯浅典幸
ヘアメイク:河村陽子
舞台監督:鈴木政憲
制作協力:古川 清
制作:真藤美一 高橋夏樹 吉田実加子

製作:松竹株式会社

第1幕 5:00~6:20

休憩 20

第2幕 6:40~8:00
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ミュージカル・CHICAGO 米倉涼子凱旋公演初日 赤坂ACTシアター [ミュージカル]



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かつて市川染五郎(現・松本幸四郎)がブロードウェイの『ラ・マンチャの男』の主演した時も、各国のセルバンテス・ドン・キホーテ役を集めて上演するというロングラン公演でのイベントでの出演だった。米倉涼子のブロードウェイ版『CHICAGO』への出演もそうしたイベントの一環だったらしく、意地悪な見方をすれば、現地の主なキャストが夏休み?を取る間に割り込んだ形とも言えなくない。しかも、8月から9月にかけての来日公演の前宣伝としては絶妙のタイミングである。

オペラの世界でも佐藤しのぶが今秋来日するソフィア国立歌劇場の『トスカ』のタイトルロールを演じたりする訳で観客動員のためなら、なんでもありはミュージカルの世界に限ったことではない。NYの観光客相手?に16年も上演している『CHICAGO』の上演の質が初演通りに維持されていないとしても、いやしくもプロとして世界の檜舞台に立つからには、米倉涼子に英語、芝居、歌唱、ダンスなど、それ相当の実力がなければ実現しないはずである。たとえツアー版の上演とはいえ、相手役はブロードウェイ公演と同じなので、果たして米倉涼子は無事に演じきることができるのかと興味本位で初日の舞台にでかけてみた。

劇場前にはレッドカーペットが敷かれたスペースがあり、セレブ?なゲストがインタビューを受けていたようだったが興味がないので素通り。劇場の中は初日とあって、芸能人から贈られた花のスタンドでロビーは埋まっていて花屋が開けそうな勢いで驚く。

舞台の周囲は黄金に輝く額縁。舞台上には同じく黄金の額縁で縁どられたオーケストラというかジャズバンドが陣取っていて、その左右と真ん中にいる指揮者のお隣にも通路があって役者が出入りするという黒一色のスタイリッシュな舞台装置。というか役者が座って舞台をみつめるときに座る椅子以外は道具らしい道具はないシンプルさ。照明の力を借り、役者のナレーションと歌とダンスで芝居が進んでいくというブレヒト劇みたいな構成だった。もっともブレヒト劇のような堅苦しさはなく、半裸のような薄物のモノトーンの衣裳をつけた役者達が、お色気と毒をいっぱい含んだ芝居を展開していくので最後まで退屈しなかったのは何よりだった。

米倉涼子は東京の初日だからか、最初は少々硬さがあったり、マイクで拾う歌声に雑音が混てしまうなどのアクシデントもあったが、プロ意識の高い共演者に支えられて最後まで破綻なく演じきっていた。英語の台詞、歌唱、ダンスも無難にこなして見事だった。それは米倉涼子の努力の賜物であるのは間違いがないが、ヴェルマ役のアムラ=フェイ・ライト、ビリー・フリン役のトニー・ヤズベックなど、ブロードウェイ版と同じ共演者によって米倉自身が輝いていたように思う。それだからか、第1幕の長台詞や後半の米倉一人でのナンバーなどは、周囲の助けがない分、彼女の輝きは消え失せて残念な結果に終わった部分もあったのも事実である。

台詞には、「5000ドルなんてどうして作るのよ!」といった日本語が混じったり、「赤毛のコーラスガールだったの」が「日本のコーラスガールだったの」といった米倉に合わせて変更された部分もあった。日本語の台詞には少なからず客席にいた外国人向けなのか、その部分だけ英語が縦書きで字幕表示されるという演出?もあった。

舞台端とオーケストラのひな壇までのわずかな奥行の舞台で、フォッシースタイルのダンスや芝居が繰り広げられるので、狭い舞台ならではの想像力の翼が広がったのは何よりだった。共演者では主役級の三人が上手いのは当然として、看守ママ・モートン役のケシア・ルイス=エヴァンズの歌の迫力や、エイモス役のロン・オーバックの哀感をにじませる歌が印象に残ったが、一番のサプライズは華麗なコロラテューラのテクニックを披露したメアリー・サンシャイン役を演じたD・ミッシーチの正体を知ったとき…。


第二幕の開始時やカーテンコールでは出演者を紹介する小粋な演出が洒落ていた。送り出しの音楽が始まっても初日だからか席を立つ人はほとんどいなくて、音楽が終わって場内が明るくなっても拍手が鳴り止まないのでもう一度幕が上がったが、案外あっさりと初日のカーテンコールが終了したのも確かにブロードウェイっぽい。最後はスタンディング・オベーションになったが、これは米倉の努力と共演者の好演に向けて正当なものだと思った。

毎度のことながら休憩時間のトイレの大混雑には閉口。今年の夏の来日ミュージカルのなかでは一番楽しめたし、観客の年齢が高めなのも大人のミュージカルだったかた当然で良い傾向だと思った。代役の関係者が多数客席にいたからか、なかなかノリがよい客席だったのは平均年齢の高さから見て異例なことだった。大人の気分に浸りたいならご覧になることをおすすめしたいです。


ボブ・フォッシー
脚本、オリジナル版の演出、振付

ウォルター・ボビー
演出

ジョン・カンダー
作曲

フレッド・エップ
脚本、作詞

アン・ラインキング
振付


キャスト

米倉涼子[ロキシー・ハート]
RYOKO YONEKURA / Roxie Hart

アムラ=フェイ・ライト[ヴェルマ・ケリー]
AMRA-FAYE WRIGHT / Velma Kelly

トニー・ヤズベック[ビリー・フリン]
TONY YAZBECK / Billy Flynn

ロン・オーバック[エイモス・ハート]
RON ORBACH / Amos Hart

ケシア・ルイス=エヴァンズ[看守ママ・モートン]
KECIA LEWIS-EVANS / Matron “Mama” Morton

D・ミッシーチ[メアリー・サンシャイン]
D. MICCICHE / Mary Sunshine

シャミーカ・ベン[ゴー・トゥ・ヘル・キティ]
SHAMICKA BENN / Go-to-Hell-Kitty

レイチェル・ビッカートン
[ジューン/看守ママ・モートン代役]
RACHEL BICKERTON/ June, Matron “Mama” Morton u/s

レニー・ダニエル[陪審員/エイモス・ハート代役]
LENNY DANIEL / The Jury, Amos Hart u/s

P・グロフト[ドクター/裁判所書記官/メアリー・サンシャイン代役]
P. GROFT / The Doctor, Court Clerk,Mary Sunshine u/s

ダニエル・グティエレス[廷吏]
DANIEL GUTIERREZ / The Bailiff

ブレント・ハウザー[フレッド・ケイスリー/ビリー・フリン代役]
BRENT HEUSER / Fred Casely, Billy Flynn u/s

マーラ・マクレイノルズ[アンサンブル]
MARLA McREYNOLDS / Ensemble

シリア・メレンディ[モナ]
CELIA MERENDI / Mona

ジル・ニクラス[リズ]
JILL NICKLAUS / Liz

ニーナ・オードマン[ハニャック]
NINA ORDMAN / Hunyak

アダム・ペルグリン[ハリー/ハリソン]
ADAM PELLEGRINE / Harry, Harrison

スティーヴン・ソフィア[ダンス・キャプテン/アンサンブル]
STEVEN SOFIA / Dance Captain, Ensemble

ジェイソンド・トーマス[アーロン]
JASOND THOMAS / Aaron

メラニー・ウォルドロン[アニー/ヴェルマ・ケリー代役]
MELANIE WALDRON / Annie, Velma Kelly u/s

コルト・アダム・ワイス[スウィング]
COLT ADAM WEISS / Swing

コリー・ライト[フォガティ巡査部長/裁判官]
COREY WRIGHT / Sergeant Fogarty, Judge




楽曲

第1幕

OVERTURE「オーバーチュア」 The Band

ALL THAT JAZZ「オール・ザット・ジャズ」Velma & Company

FUNNY HONEY「ファニー・ハニー」 Roxie

CELL BLOCK TANGO「監獄タンゴ」Velma & Girls

WHEN YOU'RE GOOD TO MAMA「ウェン・ユーアー・グッド・トゥ・ママ」Mama Morton

TAP DANCE「タップ・ダンス」Roxie、Amos、Boys

ALL I CARE ABOUT「オール・アイ・ケア・アバウト」Billy & Girls

A LITTLE BIT OF GOOD「ア・リトル・ビット・オヴ・グッド」Mary Sunshine

WE BOTH REACHED FOR THE GUN「ウィ・ボース・リーチト・フォー・ザ・ガン」
Billy、Roxie、Mary Sunshine、Company

ROXIE「ロキシー」Roxie & Boys

I CAN'T DO IT ALONE「アイ・キャント・ドゥ・イット・アローン」Velma

MY OWN BEST FRIEND「マイ・オウン・べスト・フレンド」Roxie& Velma


第2幕

ENTR'ACTE「エントラクト」The Band

I KNOW A GIRL「アイ・ノウ・ア・ガール」 Velma

ME AND MY BABY「ミー・アンド・マイ・べイビー」Roxie & Boys

MISTER CELLOPHANE「ミスター・セロファン」Amos

WHEN VELMA TAKES THE STAND「ウェン・ヴェルマ・テイクス・ザ・スタンド」Velma & Boys

RAZZLE DAZZLE「ラズル・ダズル」Billy & Company

CLASS「クラス」Velma & Mama Morton

NOWADAYS「ナウアデイズ」Roxie & Velma

HOT HONEY RAG「ホット・ハニー・ラグ」Roxie & Velma

FINALE「フィナーレ」Company


上演時間

第1幕 19:00〜20:10

休憩   20分

第2幕 20:30〜21:20
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ラ・マンチャの男  初日 帝国劇場2012年8月3日 [ミュージカル]



このところの松本幸四郎は、相変わらずで歌舞伎とミュージカル&現代劇の二足の草鞋を履く状態が続いている。歌舞伎では70歳近くになって初役、特に黙阿弥など高麗屋の芸ではないものまで食指を伸ばしている。その一方で、ミュージカルや現代劇は、かつてのような新作へ挑戦するような姿勢はなく、もっぱら『ラ・マンチャの男』と『アマデウス』の再演に集中している。しかも自ら演出を担当するようになり、役者の視点に立って作品の理解を深める方向に向かっているようである。ただし、そうした歌舞伎役者にとっては回り道をしてきたことで、例えば人間国宝としての認定が弟の吉右衞門に先を越されるなど損をしている部分もあるように思う。

10月には七代目松本城幸四郎の追善で、従兄弟同士である團十郎と昼と夜で弁慶と富樫を交互に演じるというのが話題で、新しい歌舞伎座の座頭としての活躍も期待されているなかでのミュージカル最大の当り役である『ラ・マンチャの男』の待望の再演である。

ある時期、東宝のミュージカルの稼ぎ頭といえば森繁久彌の『屋根の上のヴァイオリン弾き』、幸四郎の『ラ・マンチャの男』、そして『マイ・フェア・レディ』に『サウンド・オブ・ミュージック』という時代があった。もしろん新作も上演されるが、単独のスターによる再演ものが幅をきかせていた時代だったのである。それが『レ・ミゼラブル』や『エリザベート』あたりから環境が変化し、必ずしも『ラ・マンチャの男』が興行的に価値のある作品でもないようである。

月末に自らが主催する舞踊会があるとはいえ、8月3日から25日の通常より短い公演期間と30回ほどの上演回数のみとは寂しい限りである。しかも全席売り切れではなく、初日でも空席が少なからずあったのが残念である。幸四郎もよほど客の入りが気になるのか、カーテンコールでは千秋楽までに再度の観劇を観客に呼びかけていた。入口でお土産やお弁当を配る様な団体の動員もしていたようだが、休憩時間がない2時間10分の舞台なのにお弁当を配る感覚って…。

客席に入ると舞台には牢獄の舞台装置が見えている。舞台中央奥の上方には牢獄の外に通じる通路があって、牢獄に降りる階段が空中に吊り下げられている。これは必要に応じて上下する仕掛けである。この芝居は、『ドン・キホーテ』の作者であるセルバンテスの宗教裁判まで、牢屋の囚人と『ドン・キホーテ』の物語を演じることによって、牢名主による裁判が行われるという多重構造である。それなのに、牢獄という舞台に変化がないとろが面白いところである。

オーケストラボックスの上にまで基本舞台が迫り出しているので、オーケストラは上手と下手の端に分かれて陣取っている。かつては、開幕と同時に指揮者が舞台中央に進み出て序曲の指揮をするという演出もあったのだが、幸四郎の演出になってからかなのか、舞台にギターを抱えた囚人が現れ、ギター1本で序曲を奏ではじめ、やがてオーケストラが加わるという印象的な始まり方である。

最も変化していたのはカーテンコールで、かつては『屋根の上のバイオリン弾き』の影響なのか、客席から劇場スタッフによって小さな花束が多数投げ込まれ、それを拾った出演者が客席に投げ返すという臭い演出がされていた。そうしなければ、かつてのミュージカルの観客は燃えなかったのかもしれない。さらに『見果てぬ夢』を幸四郎が英語で歌うパフォーマンスなどが追加されたこともあった。これでは、せっかくの感動も台無しになってしまうと、過剰なサービスには天使は反対だった。今回は、そうした演出はすべて排除されていた。しかし、それが作品を生かす本来の姿なのだと思う。観客は勝手にスタンディングオベーションをしてくれるし。

今回の上演は、すでに博多座で上演を重ねているだけあって練り上げられた名舞台なのは期待通りであった。もっとも心を動かされたのは、『ドルシネア』から『見果てぬ夢』が歌われる場面と、やはり『ドン・キホーテ』の臨終の場面であった。両方とも幸四郎と松たか子の芝居で泣かされた。

さらに幸四郎で感心したのは、多重構造を明確にするため歌舞伎の台詞回を駆使していることだった。劇中劇のドン・キホーテは歌舞伎の時代物の登場人物の台詞で話す。一方、牢屋の住人は歌舞伎の世話物の調子である。さらにセルバンテスを演じるときには、現代語を使用しての台詞になるなど、よく考えられていた。だからこそ、劇中劇の床屋に人気のお笑いタレントの決め台詞を喋らせる演出は、歌舞伎でもよくある手で違和感を感じなかったのも、歌舞伎同様に幸四郎の演じているセルバンテスとドン・キホーテをという枠組があったからでもある。

けっこうずくめのようだが問題もある。ミュージカルで私用するマイクが進歩したのか、PAを使用しても台詞や歌が極めて自然に聴こえてきた。たぶん声量がなくても、音程さえあっていれば、音量はいくらも調節できてしまうようである。しかしながら、観客を不安に陥れるような外れっぷりでハラハラさせてくれる歌手が少なからずいたのが残念だった。


上演時間 18:00-20:10

<スタッフ>
演出:松本幸四郎
脚本:デール・ワッサーマン 作詞:ジョオ・ダリオン 音楽:ミッチ・リー 
訳:森 岩雄、高田蓉子 訳詞:福井 崚   振付・演出:エディ・ロール(日本初演)
演出スーパーバイザー:宮崎紀夫 振付:森田守恒 装置:田中直樹 照明:吉井澄雄 
音響設計:本間 明 衣裳協力:宇野善子 音楽監督・歌唱指導:山口琇也 音楽監督・指揮:塩田明弘 歌唱指導:櫻井直樹
プロデューサー:齋藤安彦

<キャスト>
松本幸四郎(セルバンテス/ドン・キホーテ)
松たか子(アルドンサ)

駒田一(サンチョ)/松本紀保(アントニア)/石鍋多加史(神父)/荒井洸子(家政婦)/
祖父江進(床屋)/福井貴一(カラスコ)/上條恒彦(牢名主)

大塚雅夫/鈴木良一/萩原季里/塚本理佳/片岡身江/ICCOU/美濃 良/山本真裕/中尾和彦/土屋研二/
柴崎義則/藤田光之/小川善太郎
山本直輝/市川裕之/石丸隆義/高木裕和/村上幸央/羽山隆次/斉藤義洋/安倍幸太郎/原 佳宏/穴沢裕介/
松本錦一/仲由幸代


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カム・フライ・アウェイ  ブロードウェイ・ミュージカル Bunkamura オーチャードホール [ミュージカル]



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天使がトワイラ・サープの振付作品と出会ったのは、彼女のカンパニーがパリ・オペラ座のエトワールだったイザベル・ゲランを連れて来日公演を新宿の東京厚生年金会館で行なった時なので、かなり前のことになる。たぶんゲランの踊る「グラン・パ」などを観たはずだが、超絶技巧を次々に繰り出すダンサー達に圧倒された記憶がある。

その後は、パトリック・デュポンとイザベル・ゲランが世界バレエフェスティバルで踊った同じく「グラン・パ」やパリ・オペラ座の来日公演だったか代表作の「プッシュ・カムズ・トゥ・ショヴ」などを観ている。最近では来日公演でビリー・ジョエルの楽曲に振付られた「ムーヴィン・アウト」が記憶に新しい。またバレエファンならば、彼女がフランク・シナトラの楽曲に振付をした「9シナトラ・ソングス」や「シナトラ組曲」をABTなど海外のバレエ団の来日公演などで観た人も多いはずである。

今回はブロードウェイミュージカルとして、よりショーアップされ、歌声はシナトラの音源を用いつつも、舞台上のビッグ・バンドの生演奏に合わせての公演という異色の作品となった。今秋には、映画『ウエストサイド物語』の音源と台詞に合せ、佐渡裕の指揮するフルオーケストラが演奏するというイベントがあるらしいので、デジタル時代の技術としては、それほど難しいことではないのかもしれない。

客席に入るとオーチャードホールのプロセニアムアーチは極限まで黒い壁で狭められ、舞台の左右にはスピーカータワー、舞台上の天井中央にはPA用のスピーカーが吊るされていた。舞台の大きさは幅がブロードウェイの劇場サイズにまで縮小されていたのは、東急シアターオーブの「ウエスト・サイド・ストリー」と同じ。最小限の装飾がされた枠があって、シナトラのサインが浮かび上がる緞帳が下がっていて、舞台裏からはバンドのチューニングの音が流れてきた。

上演時間は1時間半ほどの舞台だが、主な登場人物である4組8名の男女とアンサンブル6名の計14名が踊り継いでいくという展開。それも並みの振付の作品ではなくで、トワイラ・サープらしい超絶技巧が次々に繰り出されるという超難易度の高いもの。回転、リフト、跳躍、さらに女性ダンサーを放り投げて受け止めるなど驚くべき技の数々が盛り込まれた作品となっていた。有名なバレエ団の出身者も多いダンサーたちは、難易度の高い技も笑顔で次々に成功させていくので、難易度の高い技も普通の技巧にみえてしまうほどだった。

舞台は舞台奥の一段高くなった場所にバンドが並び、その下の部分には電飾が仕込まれていて、NYあたりのナイトクラブといった設定だろうか。上手にはバーカウンター、下手には店に入ってくるという設定の階段があるだけのシンプルな装置。そのナイトクラブに集う4組の男女の恋愛模様をシナトラの歌声に合わせてダンスだけで表現するという趣向。

アイディアは悪くないのだが、極限の振付を踊れることを最低条件にして選んだためか、あるいはプリンシパル達に華がないからなのか、舞台を漫然と見ているだけでは人間関係がなかなか飲み込めない。衣装の違いだけが手掛かりなのだが、凝った振付、超絶技巧を盛り込んだことを強調するあまりに、登場人物の心の動きまではなかな読み取れなかったし、伝わってくるものは少なかったように思う。特に後半は少々退屈してしまった。

一番の原因は、時々ソロまで披露する舞台上のバンドが生演奏なのに対して、仕方がないこととはいえフランク・シナトラの声が録音であったこと。生と録音の声がこれほど溶け込まず分離してしまっていては楽しみのはずの音楽が苦痛にもなった。今月は同じようなバンド編成の北島三郎の公演にもでかけ、さぶちゃんの歌声に感動したばかりだったので、よけいにそう感じたのかもしれない。もっとも北島三郎も最後の方は生歌ではなかったかもしれないのだが…。

それに1時間半も手を変え品を変えダンスが続くと、さすがに種切れになるのか、トワイラ・サープらしい振付もいささか食傷気味になってしまって楽しめなかった。どうしてこんなにあれもこれも盛り込まなければ気が済まないのだろう。余白といったものも絶対に観客の生理として必要なはずだが、唯一箸休めというかダンサー達の着替えや休憩時間となるバンドのみの演奏が一番楽しめたのは皮肉である。

最後はドレスアップしたダンサーが『マイ・ウェイ』を全員が踊って幕となり、『ニューヨーク・ニューヨーク』デ」カーテンコール。さらにソロを含んだバンド演奏があり、再び『マイ・ウェイ』が繰り返され、さらに、『ニューヨーク・ニューヨーク』の演奏があってという演出。まあ、観客の気持ちはわかるけれどビックバンドのジャズ演奏に合わせての手拍子はかなり難しい。お隣の御婦人の手拍子のリズムの悪さに驚く。よく聞くと客席の手拍子はかなりバラバラでハラハラさせられた。

Friday evening,2012 July 27

CAST
Betsy RAMONA KELLY
Marty JEREMY COX
Sid STEPHEN HANNA
Kate MARCEEA MORENO
Slim IOANA ALFONSO
Hank JUSTIN URSO
Chanos MATTHEW STOCKWELL DIBBLE
Babe CANDY OLSEN

THE ENSEMBLE
Jeffrey B.Hover,Jr.,Carolyn Judson,Marina Lazzaretto,
Nathan Maddenm,Mindy Wallaace,Michael Williams

THE BAND

Conductor/Piano:Chris Sargent
Reeds:Dong Lawrence,P.J.Perry,Julian Tanaka,Adam Schroeder
Trumpets:Mike Herriott,Jim Keen,Sam Oatts
Trombones:Michael Joyce, James Nelson,Mark williams
Bass:Clifton Kellenm
Guitar:Buddy Fambro
Drums:Paul Ringenbach

MUSICAL NUMBERS

“Stardust” ……… Marry & Besty
“Luck be a Lady” ……… Company
“Let’s Fall in Love” ………Marty & Besty
“Fly Me to the Moon” ………Hank,Katy & Ensemble Men
“I’ve Got a Crush on You” ………Sid & Babe
“Body and Soul” ………Sid,Babe,Chanon & Ensemble
“Here’s to the Losers” ……… Company
“You Make Me Feel So Young” ………Marty , Besty & Sid
“Witchcraft” ………Sid, Babe & Ensemble Men
“Yes Sir, That’s My Baby” ……… Chanon,Slime & Ensemble
“Learnin’ the Blues” ………Kate,Hank,Slim & Ensemble Women
“That’s Life” ………Hank & Katy
“Makin’ Whoopee” ………Slim,Kate,Marry,Betsy & Ensemble
“I Like to Lead When I Dance”………Sid & Babe
“Jumpin’ at the Woodside” ………The Band
“Saturday Night is the Loneliest Night of the Week” ……… Company
“I’m Gonna Live ‘Til I Die” ……… Company
“Pick Yourself Up” ………Marty & Besty
“Let’s Face the Music and Dance” ………Hank,Katy,Slim & Ensemble
“Teach Me Tonight” ………Sid & Babe
“Take Five” ………Sid,Babe,Marty,Besty & Ensemble
“Lean Baby” ………Slim & Ensemble
“Makin Whoopee” (reprise) ………Slim,Chanos,Kate & Ensemble
“One for My Baby” ………Hank & Katy
“The Way You Look Tonight/My Funny Valentine” ………Marty & Besty
“My Way” ……… Company
“New York, New York” ……… Company

“Come Fly With Me”………The Band
“Jumpin' at the Woodside” (reprise) ………The Band
“My Way” (reprise) ……… Company
“New York, New York” (reprise) ………The Band






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ウエスト・サイド・ストーリー  東急シアターオーブ -こけら落とし公演- [ミュージカル]

東急文化会館跡地にできた「渋谷ヒカリエ」。その11階に1900名収容する日本最大級のミュージカル劇場「東急シアターオーブ」が7月18日にオープンしたので、早速にこけら落とし公演の『ウエスト・サイド・ストーリー』を観にでかけた。

この「東急シアターオーブ」のある場所に、劇場を建ててくれるよう東急のワンマン経営者であった五島慶太に直談判?したのが若き日の浅利慶太だったとか。結局映画館やプラネタリウムのある東急文化会館になったのだけれど、浅利慶太は日比谷に新しくできた日生劇場の取締役となり、ベルリン・ドイツ・オペラやブロードウェイ・ミュージカルの『ウエスト・サイド物語』を招聘した。その時から数えてブロードウェイ版の上演は48年ぶりとなるらしい。

この「東急シアターオーブ」の「オーブ」という意味は、古い英語で「天球」という意味らしい。かつての「五島プラネタリウム」へのオマージュということだ。外からも確認できるように11階から始まる吹き抜け空間には、確かに球体が浮かんでいるように見えなくもない。しかし、そんな大仕掛けが必要だったかどうかはなはだ疑問である。この省エネの世の中に、西日が差す西側にむけて全面ガラス張りの吹き抜け空間を平気で作ってしまう神経が全く理解できない。

しかも商業施設、オフィスビルとの共用なので、11階という立地は仕方ないにしても、観客にとってもスタッフにとってもかなりの負担であることは容易に想像できる。これから劇場へでかける人は、開演前と終演後にかなりの混雑と不愉快な想いをすることを覚悟して欲しい。

渋谷駅からは2階の仮設?の連絡通路で結ばれているので、雨や暑さを心配することなく渋谷ヒカリエに到着することができる。その通路を進むと左側にチケットカウンターやインフォメーションのブースが見え、さらに進むと11階へ通じるエレベーターホールが左側に見えてくる。エレベーターは4基で右側の2基が直通で左側2基が各駅停車。エレベーター自体が大きいので開幕前は、ほとんど待ち時間なしで乗れるが、終演後は1回は待つことを覚悟しなければならない。フロアの反対側の南側にもエレベーターはあるし、下の階へエスカレーターで降りる手もあるので、帰りを急がなければ夜景など楽しみながら、ミュージカルの余韻に浸った方が賢いかもしれない。

さてエレベーターを降りると何故かローソン。さらにシアターテーブルというイタリアンとシアターコーヒーというカフェ、ビジネスフロアへの受付とセキュリティゲイトなどがあって、吹き抜けの広場に出る。本来なら、この階にモギリがあるべきだと思うのだが、長い階段を登りきったところにある上階が劇場のエントランスとなる。エスカレーターはあるのだが入場時は危険防止のため?使えない。観客は2列でエントランスのある12階から11階まで階段を2列で並ばされる。列はえんえんと伸び開場時にはエレベーターホールまで迫る勢いだった。

12階まで登ると、確かに階段の踊り場くらいのスペースしかないので、エスカレーターを稼働させたら将棋倒しの危険がある。しかも当日券売り場が踊り場のところにあって、11階にモギリを設置することができない構造的な欠陥がある。とにかく劇場へ入るまで大行列に並ぶのは覚悟しなければならない。それでも外の景色が楽しめるので退屈はしないのだが…。

エレベーターがあるのに使えないとは何とも理不尽な話である。観客の集中が怖いなら、客席開場を30分前、ロビー開場を60分前に設定すればいいことなのだと思う。バーやグッズ販売の収入も上がるし、トイレの混雑も多少は緩和されるのではないだろうか。

劇場全体のトーンはグレーのモノトーンでモダンなデザイン。大きな吹き抜けとガラス窓から見える景色に迫力があるので劇場内の装飾はほとんどない。わずかに1階席へ向かう正面階段に、渋谷パンテオンの舞台を飾っていたという、ルコルビュジェ作の緞帳の1/5のタペストリーが飾られていたのが目を惹いた程度である。

2階席と2階席と3階席のバルコニー席へは12階から。この階にはカフェもあって、開幕前や幕間に飲み物や軽食などが楽しめる。コーヒー1杯500円といったところで妥当な金額だが、幕間に何か飲もうとすると、ここも大行列なので大変だった。

せっかくなので1階席、2階席、3階席とくまなく回ってみたが、最近の劇場らしく最後列でも舞台が身近に感じられるように工夫がされているようで、確かに3階席後方でも1900名収容の劇場としては近いほうかもしれない。まあ同じオーチャードホールが酷すぎるのだけれど…。劇場内の雰囲気は黒を基調にダークブルーの壁といった装飾をそぎ落としたモダンな内装で、赤坂ACTシアターに印象が似ている。演目もミュージカルで被りそうなのだが、ひと回り小さい赤坂ACTシアターの方が色々な面で有利なのかししれないと思った。どちらもTBSが関係しているようだが。

さて劇場への不満は少なからずあったが舞台の成果は、最近では傑出したもので最後は感動の涙でボロボロ。涙が乾くまでなかなか立ち上がれなくて劇場係員に声をかけられるまで号泣していたという、舞台に関してはすれっからしを自認していた天使なのに、ミュージカルでこれほど大きな感動を手にすることができるとは思いがけないことだった。近頃の何かというとスタンディングオベーションをしたがる安っぽい感動しか手に入れていない観客に、本当の感動はこれなのだと味あわせてあげたいくらいだった。

天使の最初の想いは、何故今更『ウエスト・サイド物語』なの?だった。日本でも48年の他に、外来カンパニーの公演が何度かあり、宝塚、劇団四季、ジャニーズ事務所と様々なカンパニーで上演が繰り返されてきた。初演から半世紀以上も経過した名作とはいえ古びた作品を、何故にこけら落としに上演するのかさっぱり理解できなかったのである。ところが客席を見て納得した。平日のマチネ公演とはいえ高齢者が目立ったからである。映画の公開当時に青春時代を過ごした年代の観客である。素晴らしいマーケッティング力である。満員なのも当たり前である。お隣に座っている老紳士は、公開当時の映画を見てきっと指を鳴らしたり、足を上げてダンスの真似を一度はしているに違いないのである。

今回のリバイバル版では、、1957年オリジナル版の脚本を手がけたアーサー・ロレンツの演出には次のような特徴があるという。

シャークスの登場人物は、科白のほぼ半分程度をスペイン語を話す。字幕が出るので語感の違いを知る程度の効果しか天使にはなかったけれど、ヒスパニック系のアメリカ人が増えつつあるアメリカでは現実的なのかもしれない。

エンディングの演出の変更。トニーの遺体は運ばないで、もっと感動的な工夫で幕になる。マリアが自らの手で黒いショールをかけてくれた敵であるジェッツのメンバーの手をグッとつかむ。「この現実を一緒に変えていかねばならないんだ」という強い決意を演技で表現するように変更になった。天使はマリアのその崇高な姿をみて、聖母マリアの姿を重ねあわせて見た。間違いなくマリアは1回のSEXでトニーの子を宿しているように感じた。もちろん処女懐胎ではないのだが、彼らの未来は生まれてくるであろう子に託されたような気がした。生まれてくる子は、天使と同年代のはずである。どんな人生を送っているのか想像してみた。ジェッツもシャークもヴェトナム戦争の戦場で闘うことになったのだろうかとも想像してみた。今までの「ウエスト・サイド物語」とは違った深い感動があった。

Aーラブはクラプキ巡査への悪ふざけに参加しない。何故なら、新しいリーダーになったアクションに納得していなかからだとか。

振り付けも交渉して一部変更。広げた手をグーにする程度のものらしいが、マスターベーションを思わせる手の動きや露骨なSEXシーンなど、劇団四季版では曖昧にされた部分もストレートに表現されていた。

そして従来は舞台裏で歌われる「サムウェア」のナンバーをリバイバル版ではボーイソプラノが舞台上で歌う演出にしたらしいが、子役を日本につれてくることができずに、ボーイッシュなエニボディズが舞台上で歌う演出に変更されたそうである。シャークでもジェッツでもない彼女が、トニーとアリアと手をつないで歌う場面は新たな感動を誘った。

舞台装置は吊り物を中心にして左右から必要最小限のものが出てくるツアー用の装置なのかと思うくらいの簡便さなのだが、ダンスを中心に考えているらしく床はダンス用のパネルが一面に敷き詰められていたようだった。舞台奥には床にLEDライトが埋められているような不思議な効果があった。装置で大きな変更は高速道路の高架下での決闘の場面で金網のフェンスが舞台前面に降りてきたこと。したがって金網を飛び越える振り付けはない。彼らの閉塞状況を象徴して効果的だった。

そして体育館のダンスシーンもモダンな感じに改められていた。プロセニアムの広さはオリジナルのサイズそのままので10から12mくらいだろうか。左右を狭めた形式での上演なのでダンスの迫力は増していたようにかんじたが少々狭苦しくも感じた。

今回の成功の要因はまず音楽。日米の混成チームが最初は不安定な部分もあったものの、ジャズの味付けがより鮮明になって見事な演奏だった。リードやパーカションの担当者はめまぐるしく楽器を持ち替えるが、ベテラン
奏者が多いのか難なくこなしていたようだった。

そして「泣きのトニー」とでも名づけたいようなトニーの歌と演技が独特で深い感動に誘ってくれたのが大きかった。「歌の上手いウドの大木」というイメージを変え、初めての恋の予感に心震わす青年の初々しさを見事に表現していた。彼らはまだまだ若いのである。

出演者はいずれも好演していたが、目を惹いたのはドクを演じたジョン・オークレイがいかにもNYにいそうな見事な太っ腹ぶりでなかなか渋い芝居で舞台に厚みをもたせていた。何ら新しい発見などないと思っていた『ウエスト:サイド・ストーリー』に大いに刺激を受けた。是非ご覧になることをおすすめしたい。

2012年7月19日(木)
13:30開演

第一幕(85分)

13:30-14;55

休憩(25分)

第二幕(40分)

15:20-16:00

スタッフ
脚本&ブロードウェイ・リバイバル演出:アーサー・ローレンツ
音楽:レナード・バーンスタイン
作詞:スティーブン・ソンドハイム
初演時演出・振付:ジェローム・ロビンス
ツアー演出:デイヴィッド・セイント
振付再現:ジョーイ・マクニーリー

キャスト

ジェッツ
アクション ジョン・ドレイク
エニィ・ボディズ アレスサンドラ・フロリンジャー
Aーラブ クレイ・トムソン
ベビー・ジョン クリストファー・ライス
ビッグ・ディール ネイサン・キーン
ディーゼル ケイシー・ガーウィン
グラジェラ クリステン・ポラチェリ
ホッスイ カースティン・タッカー
マグジー ジェシカ・スウェージー
リフ ドリュー・フォスター
スノーボーイ ハリス・ミルグラン
トニー ロス・リカイツ
ヴェルマ スカイ・マトック
ザザ ローラ・イリオン


シャークス
アリシア アリシア・チャールズ
アニタ ミッシュル・アラビナ
ベベシタ ダニ・スピーラー
ベルナルド ジャーマン・サンティアゴ
ボロ ジェフリーC.スーザ
チノ ジェイ・ガルシア
コンスエーラ ローリ・アン・フェレーリ
フェデリコ エリック・アンソニー・ジョンソン
フェルナンダ キャサリン・リン・テレザ
インカ ディーン・アンドレイ・ルナ
マリア イヴィ・オルティーズ
ペペ ウォルドマー・キノネス=ヴィラノバ
ロザリア ジゼル・ヒメネス
ティオ ジェイス・コルナド

アダルツ
ドク ジョン・オークレイ
グラッドハンド ジェームス・ルドウィック
クラプキ ウォーリー・ダン
シュランク マイク・ボーランド


スイング マヤ・フロック
スイング ニコル・ヘルマン
スイング ティム・ハウスマン
スイング パトリック・オルティーズ
スイング アレクサンドラ・ブレイク・リデルコ


指揮 ジョン・オニール

キーボード/アソシエイトコンダクター  スティーヴン・サンダース
リード 鈴木徹/金山徹/網川太利/小笹貞治
ホルン 木原英士
トランペット ダグラス・ミケルス/竹田恒夫/中野勇介
トロンボーン 渡辺善行
ドラム リチャード・ド・ナト
パーカッション 長谷川友紀/本間麻美
ベース 千葉一樹
キーボード ダニエル・ベイリー/白石准
ヴァイオリン 遠藤雄一/阿部奈穂子/伊藤彩/松本亜土
チェロ 篠崎由紀/向井航/土山如之/松 穣
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帝国劇場ミュージカル『エリザベート』 [ミュージカル]

1992年にオーストリアのアン・デア・ウィーン劇場で初演されたミュージカル『エリザベート』の何故かウィーン初演20周年を記念しての公演である。モーリス・ベジャール振付、シルヴィ・ギエムが踊ったバレエ『シシィ』や、ウィーン初演の演出を、オペラで数々の名舞台を生み出しているハリー・クプファーが担当していることなど、興味は前からあったのだが、宝塚版が日本で先に上演された経緯もあって、これまで観ることを避けてきた。

今回重い腰を上げた理由は、ウィーン版でトートを演じたマテ・カマラスという外国人が日本語で演じ歌うという一点にあった。古くは当代の松本幸四郎がブロードウェイで『ラ・マンチャの男』を英語で演じたり、同じく『王様と私』をロンドンで演じた例はある。最近では米倉涼子がブロードウェイでミュージカル『シカゴ』の主人公ロキシー・ハートを演じたりしている。

また日本人のオペラ歌手がイタリア語やドイツ語で海外の歌劇場へ出演するのも珍しくない。しかし日本語となれば別である。一度覚えても二度目の上演がないような日本語のオペラ歌詞をわざわざ稽古しようという外国人歌手など皆無だと思う。大昔にジョージ・チャッキリスが佐久間良子と東京宝塚劇場で共演したことなども記憶になるが、けっして優しくない日本語で歌い演じられるものかどうかということで帝国劇場へでかけた。もちろん劇団四季で活躍する韓国人や中国人が日本語で演じるのは、もはや珍しくない光景だが、さしがにウィーンで同じ主役級の役を演じた俳優が日本に来るなど確かに夢のような出来事に違いない。

さて、そのマテ・カマラスだが、トリプルキャストの山口祐一郎や石丸幹二に比べれば、まずヴィジュアルの面で当然のことながら圧勝。外国人なのだから当然なのだが、両性具有の妖しい魅力があり、多少は科白にたどたどしさがあり、迫力で押し切るような部分はあっても、ほぼ完璧に歌っているばかりでなく、驚くほど芝居が上手く彼が外国人であることが気になったのは冒頭の場面くらいで、後は日本人キャストと変わらない働きをみせて、彼を起用しようと考えたプロデューサー?は大いに賞賛されていい。

題名役を歌たったのは春野寿美礼である。宝塚の男役でトップにまで登りつめた歌唱力に定評のある女優さんらしい。現代的な音楽を用いていて難易度の高い楽曲の連続なのだが、多少の瑕はあっても、その存在感と舞台姿の美しさで堂々たるエリザベートを演じた。

舞台に最初から最後まで登場していて狂言回しの役割を演じる暗殺者・ルキーニを演じたのは髙嶋政宏。初演からずっと演じているだけに危なげないのだが、手馴れた役だけに軽妙な方向へ走っているような部分も見受けられたように思う。ヨーゼフを演じた石川禅は出演者の中で最も安定した歌唱力で実力をしめしたし、子ども店長で売れた子役の加藤清史郎は、歌の部分はもちろんだが、なかなか芝居が上手くて感心させられた。主役級で問題があったのは、ルドルフを演じた大野拓朗。歌はともかく姿勢が悪いので舞台映がしないし、ダンスの実力にも問題があるように思った。美しすぎるウドの大木とは彼のことだろう。

ウィーン産のミュージカルらしく、モーツアルトのオペラのように重唱で登場人物が心情を吐露する場面が多いので、なんとなく雰囲気や空気感はわかるのだが、発声の方法が悪いのは何を歌っているのかわからない場面が何度もあった。歌の内容がよくわからない上に、オーストリア国民や周辺諸国の人々には周知の史実であっても、そうした歴史に疎い日本人には最初は理解できないことだらけで困った。宝塚からのファンや、コアなミュージカルファンにとってはお目当てのスターが出演しているだけでも舞台に引き込まれるだろうけれど、そうでもない普通の観客には、ドラマが動き出すまではなかなか理解できない物語である。特にトートの存在、エリザベートへの愛など、少々強引な展開のような気もした。

最小限の舞台装置で左右に動く壁、移動する台などを組み合わせ、照明で細かな変化をつけていく手法は、地方公演があって大掛かりな舞台装置を使えない制約を逆手にとって、観客の想像力をかきたてる上手いアイディアだと思う。

問題なのは生演奏される音楽で、出演俳優達も涙ぐましい努力でなんとか聴かせる歌を歌っているのに、オーケストラは緊張感が不足しているのか、何度も音程が定まらいない部分があったり、微妙なズレが発生してしまったりと残念な結果に。カーテンコールがあって、平日の昼公演ながら満席の場内が最後は総立ちのスタンディングオベーション。お約束っぽい展開なので、何故にこの程度のレベルの舞台に熱狂するのか肯けなかった。


エリザベート:春野寿美礼
トート:マテ・カマラス
ルイジ・ルキーニ(皇后暗殺者):髙嶋政宏
フランツ・ヨーゼフ:石川 禅
ゾフィー:杜けあき
ルドルフ:大野拓朗
少年ルドルフ:加藤清史郎
マックス:今井清隆
ルドヴィカ(エリザベートの母):春風ひとみ
エルマー:岸 祐二
マダム・ヴォルフ:伊東弘美
リヒテンシュタイン伯爵夫人:小笠原みち子
ヴィンデッシュ:河合篤子
ツェップス:大谷美智浩
グリュンネ伯爵:治田 敦
シュヴァルツェンベルク侯爵:阿部 裕

脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出・訳詞:小池修一郎
オリジナルプロダクション:ウィーン劇場協会 
製作:東宝株式会社
制作協力:宝塚歌劇団 
後援:オーストリア大使館
協力:オーストリア航空

音楽監督:甲斐正人
美術:堀尾幸男
照明:勝柴次朗
衣裳:朝月真次郎
振付:島﨑 徹・麻咲梨乃
歌唱指導:林アキラ・飯田純子
音響:渡邉邦男
映像:奥 秀太郎
ヘアー:坂井一夫・富岡克之(スタジオAD)
演出助手:小川美也子・末永陽一
舞台監督:廣田 進
オーケストラ:(株)ダット・ミュージック・東宝ミュージック(株)
指揮:西野 淳
翻訳協力:迫 光
プロダクション・コーディネーター:小熊節子
プロデューサー:岡本義次・坂本義和

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オペラ座の怪人 電通四季劇場「海」 [ミュージカル]

日生劇場での1988年4月29日の日本初演から24年を迎える劇団四季の「オペラ座の怪人」を汐留の電通四季劇場「海」で観る。初演から1週間後に初めて観てから、日生劇場、新橋演舞場、赤坂ミュージカル劇場、電通四季劇場「海」と東京公演は毎回観ている。主役のファントム役だけでも市村正親、山口祐一郎、村俊秀、今井清隆、高井治と5人を数える。

当時の日生劇場は貸劇場として運営されていて、東宝、松竹、劇団四季がそれぞれ数ヶ月を分担していた。それが劇場を改造してのロングラン公演ということで仕込みの期間も含めて6ヶ月も劇団四季が日生劇場を占有するという異例の処置がとられた。その後も日生劇場と新橋演舞場という東京を代表する劇場で公演されたが、1998年以降は劇団四季の専用劇場で上演が続けられている。

今回の電通四季劇場は2階席のある劇場構造ながら最後列でも舞台が近いのが売り物。実際に初演の日生劇場に比べれば舞台と客席の距離が驚くほど近い。また舞台の間口もオリジナルに近いのか緊密な劇空間を造りあげている。

もっとも1階席に2階席が大きく迫り出しているので、1階席の後方ではシャンデリアや黄金のプロセニアムアーチが見えないという欠点がある。何よりも同じようにオフィスビルの一画を占めていながら、劇場の入口から劇場の1階席のあるビルの3階部分までの導線が、階段を登るにつれて期待感が高まるという設計がなされている劇場らしい劇場である日生劇場と違い、電通四季劇場「海」の入口あたりの貧相な佇まいは劇場としては残念な設計である。

ホテルの宴会場並みにパーティーも出来そうなホワイエのある日生劇場に対して、電通四季劇場「海」は休憩時間にトイレ待ちの大行列でロビーが大混雑になる狭さである。劇場の格といったら問題なく日生劇場に軍配があがる。電通四季劇場「海」は、徹底的なコスト監理がなされ余分な経費をかけずに済むように設計がなされたかのようである。

オペラもできるような大きさのオーケストラピットのある日生劇場と違い、電通四季劇場「海」は溝か?と言いたいほどの幅が狭く、落下防止のネット?で蓋がされているので、バイロイト祝祭劇場風と言えないこともない。観客の視線は舞台に集中できるように設計されていて、客席の壁も反射によって光ってしまわぬように黒一色なのも設計思想はバイロイト並みなのかもしれない。

初演時のキャストは、怪人が市村正親、クリスティーヌが野村玲子、ラウル子爵が山口祐一郎と当時最も人気のあった俳優が演じている。彼らには演技も歌も上手いのは当たり前で、スターとしてのオーラがあった。また観客も、海外で人気の新作ミュージカルを観るという行為に酔っているような部分があって、日生劇場で「オペラ座の怪人」を観るというのは、現在と比べると遙かに大きなイベントだった。

現在のキャストは、建前は現在最もコンディションの良いキャストが舞台に上がるということだが、全国であまりに多くの作品を上演し、準備しているだけあって、必ずしも劇団のエース級が出演しているとは限らない。人気や実力のある俳優は次々に退団しているので、なんとか作品を上演できるであろうレベルの俳優を集めたという印象が拭えない。

今回は一部のキャストを除いて初演時のキャストを超えるような存在感のある俳優は誰一人いなかった。各役とも相当に高いレベルの歌唱や演技をしているのだが、それだけでは感動に至らないという難しさがミュージカルにはあるようである。1900回以上も怪人を演じているという高井治も残念ながら満足できるレベルではなかった。歌唱はともかく、少々エキセントリックな怪人の複雑さを緻密に描くという演技までには到達していなくて物足りない。

クリスティーヌの笠松はる歌唱はそれなりに健闘しているのだが、二人の男性の間で揺れ動く女心といったものは表現しきれていなくて、今回なかなか感動できなかったのも彼女の非力が大きな原因と言えなくも無い。科白や歌唱からなる言葉の意味を正確に伝えるというのも大事なのだが、何故幕切れで怪人に接吻するために戻ってくるのか謎の行動になってしまった。それに序幕に主役オーラというものが皆無で脇役の中に埋もれてしまって誰が誰やら見比べることさえできなかった。

ラウルも何人かいるキャストの中でも若い世代に属しているのか、明らかに舞台経験が少ないのがわかってしまう飯田達郎に奮起を望みたい。キャストも週によって変化があるようだが、最良のキャストというよりも、ロングラン公演を支えるローテションの維持が最優先なのだろうと思う。出演者のスター性のなさで、なんとも地味なミュージカルに変化してしまった劇団四季の「オペラ座の怪人」には大いに退屈した。客席には学生の団体や中年男性の団体などで埋まっていたが、果たして彼等が楽しめたのかどうか疑問である。終演後の客席の反応は醒めていたように思う。舞台の出来とは正比例していたと思うので、有名ミュージカルなら有りたがる田舎者?や盲目的に劇団四季を愛するコアなファンならともかく、この舞台成果では、次も機会があったら観てみようと思う観客よりも「次はないな」という観客の方が多いのではないないだろうか。

そんな中で注目したのは、ムッシュー・アンドレを手堅く演じた増田守人である。海外でクラシックの勉強をしてきた人らしく舞台経験もあるのか、歌唱力は確かで芝居が上手く、存在感も主役級をしのぐのではないかと思われる部分もあって、彼の演技も歌唱も大いに満足させられた。:

あまりに大きく劇場ビジネスを広めてしまった劇団四季。いくら何でも劇団四季と劇団を名乗るような組織ではなくて、ミュージカルをプロデュースする集団に変わってしまったようである。確か昔は主役級はプリンシパルと呼ばれていた時期もあったように思うが、バレエ並みに階級制度を設けて、劇団四季生え抜きのスター俳優を育ててくれれば劇団も当分の間は安泰なのだと思う。


オペラ座の怪人 : 高井 治
クリスティーヌ・ダーエ : 笠松はる
ラウル・シャニュイ子爵 : 飯田達郎
カルロッタ・ジュディチェルリ : 河村 彩
メグ・ジリー : 中里美喜
マダム・ジリー : 横山幸江
ムッシュー・アンドレ : 増田守人
ムッシュー・フィルマン : 平良交一
ウバルド・ピアンジ : 永井崇多宏
ブケー : 寺田真実


【男性アンサンブル】
瀧山久志
五十嵐 春
林 和男
斎藤 譲
野村数幾
伊藤礼史
井上隆司
田中元気
見付祐一


【女性アンサンブル】
小林貴美子
高瀬 悠
小澤可依
菊池華奈子
村瀬歩美
松ヶ下晴美
馬場美根子
高田直美
森田真代
野手映里
園田真名美
岸田実保

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サウンド・オブ・ミュージック 土居裕子=マリアじゃなかった! 劇団四季 四季劇場秋 [ミュージカル]

確かに前日の公演までは、土居裕子がマリア役だったはずなのに、劇場へ到着してキャスト表を確認すると、なんとマリア役はオリジナルキャストの井上智恵が出演!何のために浜松町まで、それほど観たくもないミュージカルに来てしまったのか・・・。キャストは当日発表が大原則の劇団四季とはいえ、土居裕子が念願?の役であるマリアを演じるというので、楽しみにしていたのに。仕方がないとはいえ、恐ろしく期待値は下がってしまい、観ないで帰ろうと思ったくらい。しかも900人収容の劇場に300人台の超ガラガラの入りで、2階席はほとんどが空席で驚く。何故、記録的な不入りに陥ったのか考えながら舞台を眺めることにした。【彼女は16日までの出演予定だったのに風邪?で降板とか】

カラオケでミュージカルを上演が常識?の劇団四季には珍しく生演奏つきという贅沢さ?さすがに子役にはランプの点滅で歌を歌ったりは難しかったのかもしれないし、台詞から歌への切り替えのタイミングが原因だったかもしれない。もっとも東京以外で上演される場合はカラオケになるんだろうけれど。

東宝ではサウンド・オブ・ミュージックやマイ・フェア・レディの主演者といえば大地真央という時代が続いた。劇団四季の方針?は、作品第一主義なのでスターはいらないとはいえ、主役のマリア役井上智恵、トラップ大佐役の村 俊英ともに華が乏しいので、普通のオバサンとオジサンが歌ってお芝居しているようにしかみえない。
ロンドンのように、ミュージカルの主役をテレビ番組で公開オーディションするようなわけにはいかないのだろうが、あまりに主役に魅力が乏しいのは致命的である。

さらに二人とも歌唱スタイルに癖がありすぎて、素直に音楽が響いてこないのである。たとえばマリア役は、劇団四季の野村玲子「型」とでもいいたいような、妙に子供じみた歌い方というか発声があって、違和感がありすぎる。子供向けのミュージカルの癖、あるいは浅利慶太夫人の演技崇拝?の結果なのだろうか。村俊英は、オペラ座の怪人のファントム役で売ってきた人のなのだが、なんとも歌唱方法が固くて、もっと柔らかく歌って欲しい瞬間が何度もあった。

浅利慶太は、日本の音楽大学の教育システムを評価していないようだが、日本語で歌い演技するということに関して、決して成功していないのは同じなのではないかと思う。大問題は「四季節」と呼ばれ、劇団内では「開口」と呼ばれる発声方法である。母音と子音となる台詞を分解して母音を強調して発声するというもの。

確かに日本語の意味は理解できるのかもしれないが、例の「戦場カメラマン」の物言いのように、当たり前の生活を送っている日本人の日本語とかけ離れているので、なんとも居心地の悪いことになる。思想や哲学を伝えるには便利な方法論なのかもしれないが、「愛を語る」には全く向いていないのを今回も露呈。リーズルとロルフの逢びきの部分など、まったく心が通じ合っている風に感じられなくて、なんとも酷い出来。同じくマリアとトラップ大佐の愛情表現も下手すぎて観ていられない。

同じ役に何人も配役されている子役たち。規律を重んじ、言われたことを言われたとおりに演じているのは、笛で機械的に動いているトラップ一家の子供たちと同様である。もっと子供らしい伸びやかさがあってもいいと思うのだが、型にはめられているからかなのか窮屈である。子供たちの個性が立ってこないので、思い入れができないので、子供たちがまったく可愛く思えないのが困る。あまりに良い子たちで、いたずらでマリア役を困らせるような屈折した部分がまるでないので、サウンド・オブ・ミュージックの歌を通じて和解するという名場面も引き立たなかった。

21時以降は子役が劇場を出なければいけないのでと後半のカーテンコールに子役を出演させないのも、ワザとらしく不自然。それなら、子役も登場するカーテンコールで止めればいいわけで、カーテンコールが一番の売り物の劇団四季らしいやり方。客電が点いたら、早く帰るべきだと思うのだが、劇団四季のお客は何故か帰らない。カーテンコール後の送り出しに演奏する曲なんて、聴きながら帰る方が楽しいのに、最後まで座っている人の神経がわからない。あんなにガラガラの客席で・・・。

ロングラン公演、ロングラン公演と喧伝する劇団四季。でも、劇場経営と劇団経営が同じ団体というのは、実は問題ではないのかとも思い始めている。彼の地では、新聞の劇評が芳しくなければ、即日打ち切りという厳しい世界だそうである。それを潜り抜け、多くの観客に支持されて何年ものロングラン公演になるはずである。

ところが、劇場経営もしている劇団四季の場合は、最初からロングラン公演ありきなのである。観客に支持されるどころか、空席の目立つ劇場であっても上演を無理矢理続けるというのは、不自然だし、作品にとっても、役者も、観客にも不幸な状態だと思う。ためしに、劇団四季で公開しているチケットの販売状況をチェックしてみるといい。一部の人気作品を除いて、大量のチケットが売れないまま放置されている。

ロンドンやニューヨークでは、売れ残ったチケットを当日半額で観客に提供するシステムがあるのに、頑なに定額販売にこだわっているようである。今では航空機やホテルなど、需要と供給のバランスで売値が決まるなんていうのは普通のことなのに、いつまで売れないままの空席をむなしく放置するのだろうか。

入場システムもQRコードを使用したチケットレス化を導入しているわけだし、航空会社なみに各種割引制度を検討してもいいのではないだろうか。

修道女が大挙登場する場面では、後ろは全員男優が演じているのが丸わかりで、笑いをこらえるのが大変。なんとかならないものだろうか。

スタッフ
企画・制作浅利慶太
日本語版演出浅利慶太
日本語版台本・訳詞藤川和彦 宇垣あかね 劇団四季文芸部.
日本語台本協力湯川裕光.
訳詞ペギー葉山(「ドレミの歌」)
照明監修沢田祐二
照明劇団四季照明部.
音楽スーパーバイザー鎮守めぐみ
演出助手藤川和彦 宇垣あかね
子役担当太田浩人 大徳朋子 遠藤剛

2011年1月14日(金) 18時30分開演

キャスト
マリア : 井上智恵
トラップ大佐 : 村 俊英
修道院長 : 秋山知子
エルザ : 西田有希(劇団俳優座)
マックス : 勅使瓦武志
シュミット : 大橋伸予
フランツ : 青山裕次
シスター・ベルテ : 佐和由梨
シスター・マルガレッタ : 矢野侑子
シスター・ソフィア : あべゆき
ロルフ : 亀山翔大
【フォン・トラップ家の子どもたち】
リーズル : 池松日佳瑠
フリードリッヒ : 竹林和輝
ルイーザ : 木村奏絵
クルト : ラヴェルヌ拓海
ブリギッタ : 石井日菜
マルタ : 鳴戸瑶姫
グレーテル : 片山佳音


【男性アンサンブル】
高橋基史
前田貞一郎
柳 隆幸
長手慎介
蛭沼建徳
北山雄一郎
奥田直樹
見付祐一

【女性アンサンブル】
黒崎 綾
松尾千歳
浅井美波
小島由実子
小林貴美子
原 彩子
趙ミンジョン
深見雅子


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キャッツ 劇団四季・横浜公演 キヤノン・キャッツ・シアター [ミュージカル]


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横浜で劇団四季のミュージカル「キャッツ」を上演しているというので、ル テアトル銀座の市川海老蔵の公演が中止になったのをきっかけに足をのばしてみた。劇団四季には、いくつかの専用劇場があるが、四季劇場「海」のように本格建築のビルに組み込まれた劇場もあるが、その多くは、都市の遊休地を借り受けて建設する安普請?の大きなプレハブ小屋のような劇場である。

豪華な装飾を極力排除しているのが共通の特徴で、上演される芝居に力を集中といえば聞こえはいいが、コストを押さえるのが目的なのだろうと思う。しかも、借用期限が切れたという名目で撤退となれば、簡単に取り壊せるし、そうした建てては壊しを繰り返してきたのが劇団四季である。エコ的に考えれば、言語道断の経営姿勢なのだが、そうした面には一切目をつぶぶるというのが基本のようである。

さて、この1月には札幌に劇団四季の専用劇場が、いつでも取り壊せる形式の劇場で建設され、杮落とし公演が始まる。かつてあったJRシアターは不況の波をもろにかぶり、客足が伸びずに撤退したという経緯がある。それなのに、あえて再進出するのは、ロングランを前提にした「ライオンキング」を上演する必要に迫られたからだと思う。未だに「ライオンキング」を上演していない北海道での公演は悲願というかなんというか。何しろ「ライオンキング」の舞台装置や衣裳は二組あるので、保管料や上演契約などの条件から、無理しても上演する必要に迫られたのだと想像する。

「文化の一極集中をふせぐ」という美名のもとに福岡にあった劇団四季専用劇場の「福岡シティ劇場」が客足の現象で撤退した失敗をどう思っているのだろう。こちらはビル内の劇場で、簡単に撤退できないはずだったのに、撤退のドタバタ劇は記憶に新しい。4億かけて改装されたキャナルシティ劇場は、音楽や演劇にも門戸を開いた「マルチ劇場」に生まれ変わったという。朝日新聞の記事はこちら

そうした訳で、いままでのビジネスモデルが通用するほど甘くはないと思うのだが、札幌の劇場がいつまで持つのか疑問である。たぶん、ライオンキングのロングランは1年程度で、次は動員力からいって「キャッツ」あたりが行くのではないかと想像するが、手持ちのロングラン作品を全て上演できるかどうか注目していきたい。

そうした中での横浜「キャッツ」である。五反田でのロングラン公演に続いての上演で、観光地でもある横浜での団体客の動員が期待できるということなのだろうが苦戦しているようである。今行かないとなくなってしまうかも、しかも「キャッツ」専用劇場なので、横浜での劇場公演自体がなくなることを意味するので、遠征してみたのである。

横浜のキヤノン・キャッツシアターは、横浜駅の直ぐそばにある国道1号線沿いの空き地に建設されていた。きっと将来は、ビルが建設されるに違いないのだが、景気低迷のため?再開発が遅れているのかもしれない。昼過ぎには、箱根駅伝の一行が走り抜けたようである。

天使のキャッツとの出会いは、日本初演の年の西新宿でのキャッツシアターでテント劇場だった。12月1日で、コンピューターによるチケットの発券が試みられた頃で、公衆電話にかじりついて入手した記憶がある。そのおかげで、回転席の最前列ど真ん中という良い席を手にいれることができた。今はPCでの予約にQRコードで入場という形式に進化しているのは、本当に隔世の感がある。

その後、南新宿、品川とキャッツシアターが建設されるたびにでかけ、ロングラン終盤のニューヨークの劇場にもでかけている。五反田では2階席のあるシアターに生まれ変わったが、横浜のようにワンスロープの劇場の方が観やすいし親近感があるようだ。

今さら「キャッツ」でもないと思ったのだが、横浜で娼婦猫のグリザベラの「メモリー」を聴くのも悪くないかなと思ったからである。横浜には、かつて「横浜メリー」という老婆の街娼がいたらしい。ドキュメンタリー映画にもなったし、ある年代の横浜人は、知らない人はいないというくらい有名だったようである。歌舞伎役者のような厚い白塗りのメイクをしていながらも、その立ち居振る舞いは高貴な人のようだったという。外国人を相手に商売したパンパンだったらしいが、そんな伝説のある横浜の街に登場する娼婦猫・グリザベラに興味があったからである。
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もちろん、そんな想いなど関係なく、舞台は清潔感に満ちていて、娼婦猫という存在感も希薄だったのが不満といえば不満である。かつては泣かされた名曲「メモリー」にも、あまり心が動かされなかったし、ミストフェリーズの見せ場にも不安定な部分があって、驚きに満ちた舞台とはならなかった。それは天使が新しく愛を捧げるべき人を見つけて、幸福な状態にいることも無関係ではないのだが…。

日本初演時に比べ、ダンサーのテクニック、プロポーションは各段に進歩してりるし、演出にも新しい試みが取り入れられているのが目に付いた。その一方で、観客との間には慣れといったものが垣間見えて嫌らしい。拍手のタイミング、手拍子のタイミング、もっともっと素朴に楽しめる観客の方がいいと思うのだが、妙に訳知りの観客ばかりだったのは興をそがれた。

それにしても横浜駅前とはいえ、平日の夜公演の観客動員など苦労するだろうなと想像した。それに狭い敷地だからか、休憩時間の男女ともにトイレの大行列はなんとかならないものだろうか。今までで一番酷い混雑だったかもしれない。

2011年1月3日(月) 14時開演
曲=アンドリュー・ロイド=ウェバー
詞=T.S.エリオット「Old Possum's Book of Practical Cats」より
日本語台本=浅利慶太

スタッフ
製作・演出 浅利慶太
振付 加藤敬二
山田 卓
照明 沢田祐二
美術 土屋茂昭
劇団四季美術部
音楽進行 鎮守めぐみ

オリジナルクリエイティブ・チーム
演出 トレバー・ナン
振付 ジリアン・リン
美術デザイン ジョン・ネイピア
照明デザイン デビッド・ハーシー


グリザベラ 早水小夜子
ジェリーロラム=グリドルボーン 金平真弥
ジェニエニドッツ 礒津ひろみ
ランペルティーザ 石栗絵理
ディミータ 原田真由子
ボンバルリーナ 西村麗子
シラバブ 江部麻由子
タントミール 八鳥仁美
ジェミマ 撫佐仁美
ヴィクトリア 廣本則子
カッサンドラ 蒼井 蘭
オールドデュトロノミー 米田 優
アスパラガス=グロールタイガー/
バストファージョーンズ 橋元聖地
マンカストラップ 武藤 寛
ラム・タム・タガー 荒川 務
ミストフェリーズ 岩崎晋也
マンゴジェリー 龍澤虎太郎
スキンブルシャンクス 劉 昌明
コリコパット 入江航平
ランパスキャット 高城将一
カーバケッティ 齊藤太一
ギルバート 鈴木伶央
マキャヴィティ 桧山 憲
タンブルブルータス 川野 翔


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