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ジェイク・シマブクロ @Zepp Sapporo 2007.9.29 [演奏会]2007-10-01 [演奏会 アーカイブス]

 劇場の天使と名乗る以上、旅に出ても劇場には行きたい。今回選んだのはZepp Sapporoで行われた「Jake Shimabukuro Japan Tour2007」の札幌公演である。映画「フラガール」の音楽を担当していたので初めてその名前を知った。ウクレレといえば、牧伸二か高木ブーという年代の天使なのだが、ジェイク・シマブクロというハワイ育ちの日系人ミュージシャンのライブとは?という興味本位で出かけてみた。スタンディングなら2000人収容という規模のライブハウスでコンサートを聴きに行くというのも初めてで興味があったし…。ほとんど聴いたことがない曲ばかりでセット・リストなど書きようがないのが残念ではある。

 会場は余計な装飾のない倉庫のような建物でホール内は黒一色。劇団四季の劇場みたい。入口で500円のコインを買ってドリンクと引き替えるのと、手荷物検査があること、立ち見のライブ用なのかクラブみたいにコインロッカーがズラリと並んでいたりして面白かった。場内には全席指定なのでフラットなスペースに椅子が並べられているが舞台が高いので案外と見易い。

 開演前は舞台の青いホリゾントにアメリンカンエキスプレスカード提供であるコンサートツアーを示す文字が浮かび上がっていた。コンサート中にもJakeによる生CM?あり。終演後の指圧マッサージにカードを使うみたいな話もしていたけれど、普通は現金払いが普通のような気がしたが・・・。いきなりカードをだされてうろたえるマッサージ師を想像して笑ってしまった。開演少し前に弟のブルース・シマブクロが前座的にギターを抱えて数曲唄う。

 会場の雰囲気が盛り上がったところでホリゾントの前の黒い幕が閉まってJakeが登場。はっきり言ってしまうと曲目は全く知らないのだが、とてつもない超絶技巧を披露しながらも歌心を忘れない素晴らしいウクレレで観客を圧倒した。最初の曲とアンコール最後の曲はロック魂が炸裂という感じで、ただただ驚くばかりである。

 津軽三味線とフラメンコギターの叩きつけるような奏法、それも驚異的な速さと強さで身体がしびれるような感覚を何度も味わった。とにかく約2時間のステージを怪しげな日本語と理解しやすい英語のMCで笑わせながら飽きさせなかったのも凄かった。「・・・シバブクロ!」のギャグ連発も可笑しかったが、ずっと笑顔を絶やさなかった二人のステージマナーの素朴さにも好印象を持った。人柄のよさが出ていたと思う。

 でも一番感動したのは、ビートルズの曲をカバーし「In My Life」の優しくて透明感あふれる音色である。照明も暗闇にJakeが浮かび上がるような構成で思わず涙がこぼれてしまった。「癒し」は簡単に使いたくない単語なのだが静かな曲には、確かに琴線を震わせる響きが隠されていたと思う。まさに興奮と感動のあるライブだった。

 帰りのJALの機内ではJakeが好きだと語っていた「Sky Time」を頼んでみた。昔はキウィ味だったような気がしたが、今はゆず味。さっぱりして案外美味しい。クセになりそうである。北国でハワイ生まれの音楽を聴くのも悪くないと思った。最後は全員がスタンディングで彼の熱演に応えていたが、オペラの客電のタイミングを操作して作りだしたようなわざとらしいスタンアディング・オベーションと違って、観客の興奮と感動が伝わってくるような迫力があったのも好印象である。たぶん来年は東京で聴くことになると思うが音楽好きの友人の誰かを誘っていきたい。独りじゃこの感動を話せないから…。

 あまりに気分が高揚してしまって街に飲み繰り出し、気がついたら朝の3時。完全な午前様である。しかもホテルに帰り仮眠を取ってチェックアウトしたのが7時半。飲んでいた時間の方がホテル滞在時間より長かったのにショックを受ける。いくらなんでもお転婆が過ぎたようである。翌日の旭山動物園がバスツアーで良かった。車中ずっとグッスリでした。

Bruce Shimabukuro
1. Like A Rolling Stone
2. You Could
3. If I Could Fly
4. Bits and Pieces
5. Walk Me To The Stars

Jake Shimabukuro
1. Toastmaker's Revenge
2. Me and Shirley T.
3. Let's Dance
4. In My Life
5. A Slow Dance
6. Grandma's Groove
7. Time After Time (with Bruce)
8. Wes On Four
9.Beat Of My Heart
10. Sakura
11. 見上げてごらん夜の星を
12. Going To California
13.Hula Girl Medley
14. While My Guitar Gently Weeps
15. 3rd Stream

encore
16. Blue Roses Falling
……………………………………
15. A New Day (with Bruce)
16. Tokada (with Bruce)
17. Orange World



2007-10-01 23:35
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ウラル・フィルハーモニー管弦楽団 LA FOLLE JOURNEÉ au JAPON「熱狂の日」音楽祭2007  [演奏会]2007-05-05 [演奏会 アーカイブス]

 歌舞伎が終わればまっすぐ帰るか、飲み屋で終電まで過ごすかなのだが、演奏会が21時半からなので出かけてみた。22時30分頃には終わるのだが、その時間から始める演奏会もあったようだ。さすがに時間が早いだけあって昨日よりはお客がずっと入っていたのが何より。

 しかも熱心な音楽ファンから初心者らしき人までが集まった。国際フォーラムのホールAは、およそクラシック向けの作りではない。また演奏家も世界の超一流からすれば、チケット代が10分の1という以上に違いがあったかもしれない。しかし極上の贅沢jな音楽ではないにしろ、小さな頃から研鑽を積んだ音楽家が集まってチャイコフスキーを演奏しようという心意気にまず感じてしまった。

 さらに5000人もの聴衆と同じ演奏の感動を分かち合えるのもなかなか無い体験である。ホールが広すぎて音圧が物足りなかったり、細部のニュアンスまで聴き取れないといった不満があるにせよ多くの人々と同じ演奏を聴くことの喜びにはかえられないと思った。

 たしかに第三楽章と第四楽章の間で盛大な拍手が巻き起こってしまったり、指揮棒が降りて拍手が起こるまで、もう少し長い沈黙の時間があっても良いかなとは思った。でもそれが「熱狂の日」音楽祭なのだ。拍手してしまったことに落ち込む必要などまったくない。知らないことなどなんら恥じる必要がない。まず客席に座ったことが大切なのだろうと思う。たとえ眠ってしまっても贅沢な子守歌?だと思ってもらいたい。演奏そのものよりも音楽を取り巻く環境に感動してしまったようである。とにかく天使の「熱狂の日」は終わった。来年はシューベルトの特集だという。必ず聴きに行くつもり。チケットの購入計画も早めに立てようと思う。

2007年5月3日(木) 21時30分開演 22時15分終演予定
 ウラル・フィルハーモニー管弦楽団
 ドミトリー・リス指揮

 チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」


2007-05-05 23:53
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トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ LA FOLLE JOURNEÉ au JAPON「熱狂の日」音楽祭2007  [演奏会]2007-05-04 [演奏会 アーカイブス]

5月3日はカフカと名づけられたホールCの9時15分から始まるコンサートからスタート。3歳以上入場可なので戦々恐々としていたが、案の定、小さなお子様と一緒の家族連れが目立つ。それと同じくらいに空席も。さすがに休日の朝は集客が難しいようだった。

 演奏するトウキョウ・モーツァルトプレーヤーズは。指揮者の沼尻竜典の呼びかけにより結成された団体。三鷹市芸術文化センターを拠点に活躍しているらしい。メンバーは国内外で活躍している演奏家で編成され、N響はじめ在京オケからの参加者で構成されているという。若い演奏者が多かったが失礼ながら意外に上手いのでビックリ!

 そして前に座った5歳くらいの女の子が演奏が始まった途端にママにニッコリと微笑んだ。小山清茂の「弦楽のためのアイヌの唄」という未知の曲だが変化に富んでいて子供の心をガッチリと掴んだよう。その様子を見ていて、自分が初めてオーケストラを聴いた時を思い出した。あの素直に感動できた日が思い出されて、何故か天使もニコニコと笑って聴いていた。子供達と一緒に音楽を聴くのも悪くない。いつも減点法で音楽を聴いていた態度を大いに反省。素直に音楽を受け入れることがどんなに大切なことか子供に教わったような気がした。後半のラヴェルまで飽きずに聴いて、みんな偉かったです!

スポンサーである大塚製薬提供の「SOYJOY」のサンプルも美味しかったです。

2007年5月3日(木)9時15分
ホールカフカ

トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ
沼尻竜典(指揮)

小山清茂:弦楽のためのアイヌ唄
ラヴェル:「マ・メール・ロワ」組曲
ラヴェル:組曲「クープランの墓」


2007-05-04 01:34
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フォーレ「レクイエム」 LA FOLLE JOURNEÉ au JAPON「熱狂の日」音楽祭2007  [演奏会]2007-05-04 [演奏会 アーカイブス]

 5月2日は、20時30分まで仕事をしていた。普通ならここから東京に出てコンサートなどあり得ない話だが、さすがにラ・フォル・ジュルネやってくれた!東京国際フォーラムAホールは期間中だけドストエフスキーと名を変えてクラシックの演奏会場に早替わり。終演予定時間が23時15分ということもあり、さすがに四連休前日とはいえ、集客は苦しかったようで、今年の目玉公演で毎日演奏されるフォーレの「レクイエム」だが、この公演だけ売り切れていなかった。実際に1階席は6割の入りという感じ、2階席の空席は限りなく。

 「レクイエム」に過剰な反応をする天使だが、フォーレは特に大好き。しかもコルボの指揮とあっては聞き逃すわけにはいかない。そこで東京に宿泊することにして日本橋のホテルを予約。電車を乗り継いでなんとか時間までに席に無事に着くことができた。

 楽員と合唱団員の登場に会場から拍手。バリトンの独唱者は下手のバイオリンの横に、ソプラノ独唱者は下手の山台の一番左側に座る。コルボは曲が始まると白い指揮棒を天に向けて差し上げた。「天へ」そういう声が聞こえたような気がした。そう演奏はまさしく聴衆を「天へ」導くよう。天使の大好きな有名な「Sanctus」のヴァイオリンソロは、それこそ天界へ誘うようだったし、合唱団の歌声は夢のように美しかった。

 天使がさらに好きなのは「Pie Jesu」のソプラノの歌声。大好きなメロディは、ゆっくり天へ導くようで時々チェロで弾いたりする。歌手の歌唱は少々問題もあったように思うが、すっかりフォーレの世界に浸ってしまって涙ぐんでしまった。次の「Agnus Dei」でさらにとどめを刺された感じで終曲まで完全にコルボの虜。終曲の「In Paradisum」では、限りなく登りつめた平安の想いが聴衆の上に慈雨となって降り注いだ感じ。演奏会であんなに幸福な想いに包まれたのは久しぶりだった。

 楽員が退場しても熱心な観客の拍手は鳴りやまず指揮者のミシェル・コルボを呼び出す。それがとっても自然に起こったのは、演奏の充実した内容からすれば当然のことだと思った。こんなに素晴らしい演奏なのに満員にならないなんてもったいなさ過ぎる!有楽町のガード下で飲んでる場合じゃないでしょう!と酔っぱらいの親父たちに声をかけたくてたまらなくなった夜だった。ちなみに他日の同公演は、当然のことながら早々と完売だそうです。

2007年5月2日 22:30開演 23:15終演予定
ホールA ドストエフスキー

アナ・キンタンシュ(ソプラノ)
ピーター・ハーヴイー(バリトン)
ローザンヌ声楽アンサンブル
シンフォニア・ヴァルソヴィア
ミシェル・コルボ指揮

フォーレ:レクイエム作品48


2007-05-04 01:17
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日本の歌100年の旅 あのうたこのうた その2 藤沢市民会館 [演奏会]2007-04-29 [演奏会 アーカイブス]


 今日も藤沢市民会館へ電車を乗り継ぎ2時間半かけて出かけた。その甲斐あってとっても充実した時間が過ごせた。終演後は畑中先生のサイン会があって、今まで持っていなかった先生が指揮しにウィーンまで録音にでかけたブラームスのCDを買い求めてサインしていただく。「名前を書きますか?」とおっしゃたが、名前を知らせるのも恥ずかしくて「先生のお名前だけで結構です」と言ってしまって、ちょっと後悔。先週「ブル先生のおもしろ音楽塾」に参加していたせいか「毎回、毎回ありがとうございます」と丁寧に挨拶されて恐縮してしまった。

 プログラムは、北原白秋・詩/平井康三郎・曲の「日本の笛」より(合唱と独唱)からスタート。先生をはじめソリスト、合唱団、ピアニストまでハッピ姿。タルを叩く若者は完全なお祭り装束。お鈴を鳴らす僧侶も登場するなど毎度のことながら工夫された演出。配られたプログラムにはスペースがなかったのか単なる編集ミスか作詞者と作曲者が明記されていたのはこの曲だけという不親切さ。せっかく馴染みのない日本歌曲の傑作を聴く機会なのに画竜点睛を欠くといった感じ。それを補うように畑中先生の解説が面白かっただけに、よけいに残念だった。

 曲や歌手によって完成度に差があったが印象に残ったものをいくつか。まず青山恵子が無伴奏で歌った佐藤春夫 詩/早坂文雄作曲「うぐいす」は、その日本的な歌唱技術をふまえた声の多彩な表現に感嘆。

 清水脩の「お道化うた」中原中也の詩で、ベートヴェンのピアノ・ソナタ「月光」をパロディにした感じの洒落た趣向の歌曲。ピアノの塚田佳男とバリトンの竹澤嘉明の名唱、名演技で堪能。そして男声合唱の名曲「秋のピエロ」学生が歌うのと違って、技術的に問題もなくはないが、年配者の多い合唱団員の歌うのは味があって素晴らしいかった。

 そして畑中先生の「花林(まるめろ)」を竹澤嘉明が同じく塚田佳男の伴奏で素晴らしい完成度で歌い上げた。美しい冒頭のピアノ部分が本当に美しくて今回も聴き惚れた。

 中田喜直の作品は童謡がやはり楽しい。おじさん二人の可愛い「めだかの学校」美女三人の「かわいいかくれんぼ」田中誠の鬼の子の演技が秀逸だった「鬼の子守歌」

 團伊玖磨ではドラマチック・コロラトゥーラ・ソプラノの関定子とスーパーバスの堀野浩史の「ぞうさん」の超高音と超低音の「ぞうさん」合戦が傑作。そして最高の歌唱だと思ったのは田中誠が歌った野上彰作詞/小林秀雄 作曲の「落葉松」だった。これは絶品。猪本隆作曲の「オオカミのおおしくじり」も竹澤嘉明が大活躍。

 そしてアンコールとして石桁真礼生民話による四重唱曲「河童譚」が舞台上演形式で上演された。畑中先生が洋服の上から藍の団七格子の浴衣のようなツンツルテンの着物を着て登場され指揮を担当。河童役の竹澤嘉明が緑のタイツ姿以外は全員が着物。河童のかつらと緑のてぶくろをつけた合唱団が脇花道から踊りながら登場。無理矢理な16歳の娘役・関定子が貫禄十分で傑作。みんなが楽しそうに歌い演じているのが何よりだった。特に合唱団のテノールの老紳士がノリノリだったのが可愛くてとってもキュート。面白くなさそうに生真面目に演じ歌う合唱団員が多い中にあって貴重な存在かも。最後は「ふるさと」を観客もふくめ全員で歌ってお開きだった。楽しかった。

 客席にはご年配の方が多く、若者はおろか子供はほとんどいなかった。これでいいのだろうか?歌の世界でなければ、北原白秋や中原中也の詩なんてふれる機会がないと思うのだが…。残念なことである。本当に多彩な日本歌曲の世界を娯楽の要素を盛り込んで面白くみせたスタッフの意気込みはよい。ほとんどの伴奏を担当した塚田佳男の伴奏も素晴らしかった。連休の初日のせいか客の入りが薄かったのが残念だった。

 帰りの藤沢駅から夕陽を逆光にシルエットを浮かび上がらせた富士山がとっても美しくて感動。それと同じくらい心洗われた一日となって余韻をかみしめながらの家路となった。

2007年4月28日 14時開演 藤沢市民会館

一・民謡芸術が生まれた!
  「日本の笛」より(合唱と独唱) 北原白秋・詩 平井康三郎・曲
  親船子舟        田中誠
  あの子この子     堀野浩史
  びいでびいで     山口道子
  山は雪かよ      混声合唱
  野焼の頃       出演者全員

二・近代抒情名歌アルバム
  初恋             小栗純一
  もうじき春になるだろう  山本香代
  野の羊            田中 誠
  汚れちまった悲しみに  三林輝夫
  悲歌(亡き子に)      関 定子
  海の若者          堀野浩史
  うぐいす           青山恵子

三・清水脩の残したもの
  春の寺            山口道子
  お道化うた         竹澤嘉明
  秋のピエロ         男声合唱

四・戦中派の歩んだ道
  きつね            小栗純一
  さくら横ちょう        山口道子
  爽やかな五月に      瀬戸理恵子
  花林             竹澤嘉明

  休憩15分

五・中田喜直が拓いた世界
  青空の小径        女声合唱
  たあんきぽーんき    堀野浩史
  風の子供         三林輝夫
  おやすみ         瀬戸理恵子
  さくら横ちょう       山本香代
  鳩笛の唄         関 定子
  めだかの学校      三林輝夫・小栗純一
  かわいいかくれんぼ  瀬戸理恵子・山口道子・山本香代
  もんく            関 定子・堀野浩史
  鬼の子守歌        青山恵子・田中誠・竹澤嘉明

六・続く團伊玖磨歌曲展望
  舟歌             青山恵子
  ひぐらし           三林輝夫
  花の街           山口道子・青山恵子・田中誠・小栗純一
  ぞうさん           関定子・堀野浩史

七・現代名歌アルバム
  しぐれに寄する抒情    小栗純一
  落葉松            田中 誠
  オオカミの大しくじり    竹澤嘉明
  杓子売唄           ソリスト全員

八・民話による《河童譚》
     関定子・青山恵子・田中誠・竹澤嘉明
     混声四部合唱

アンコール曲「ふるさと」
       1番・2番3番はハミング  全員

01:28
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畑中良輔85歳メモリアルコンサート 青の会 第84回公演 [演奏会]2007-02-23 [演奏会 アーカイブス]

 今日は全席自由席だからだろうが、開演一時間前に会場へ到着すると、すでに行列ができていた。年配のお客様が多いようだ。ホールな中通路から後ろの中央ブロックと2階席中央は招待席のようである。100名を越す合唱団の関係者が混じっていたとしても紀尾井ホールが満席の人気である。ロビーには贈られた花のスタンドが多数並んでいた。一番大きいのは水戸芸術館の吉田秀和館長からのものだろうか。中村吉右衛門丈からの白い胡蝶蘭と坂東玉三郎丈の紫の胡蝶蘭も目をひいた。終演後、花スタンドの花が抜かれ、小分けにされて新聞紙に包まれた花束を聴衆に渡していた。確かにあれだけの花があっても始末に困るだろう。日本経済新聞も意外なところで役に立つ。天使も深紅の薔薇の花を頂いた。帰りの電車では、ずっと良い香りに包まれ、部屋の花瓶に活けられて今も先生の演奏会の余韻とともに、目を楽しませていてくれる。粋なはからいである。

 プログラムは高田三郎の名曲「水のいのち」から。指揮は、もちろん畑中先生である。合唱団は慶應ワグネル男声合唱団OB有志と藤沢男声合唱団。そして演奏の前に、伊藤京子女史による「水のいのち」の朗読があった。白い清楚な服で登場し、小さな紙を見ながら、時に激しく、時に感情豊かに、美しい日本語を響かせた。さすがに往年の名オペラ歌手である。歌は歌わずとも、その心に酔いしれた。何時の間にか、周囲の人々は消え、伊藤女史と天使だけが存在するような不思議な感覚に陥った。これは、杉村春子の「ふるあめりかに袖はぬらさじ」のお園を観て以来のような気がする。名優の演技に匹敵する、名歌手の名演技。当然のことであったかもしれない。ちなみに1922年の2月12日が畑中先生のお誕生日で、今日2月22日は伊藤京子さんのお誕生日だという。

 感動のうちに朗読が終わると、すぐにピアノが静かに続いて「水のいのち」が演奏された。若い学生の合唱団なら、ドンドン飛ばして、熱くなりすぎるきらいのある曲だが、さすがに平均年齢が高いだけあって、大人の声であり、大人の歌であった。先生の指揮も心のこもった音楽を紡ぎ出そうとしていたし、新しい試み?もあった。最初の曲「雨」に戻って終わったのだ。そこにこそ先生の深い想いがこめられていたのだろう。願わくば、合唱団員の方々は先生の指揮を、もっと良く見るべきだ。100人の男声合唱団で歌うのは、さぞ気持ちがいいと思うのだが、合唱団の一員であることを忘れてはならないと思う。先生の音楽についていけてない、あるいはついていかない方も見受けられたのが残念だった。音楽に対して、歌に対して「感動」がなければ何も伝わらないと心得るべきだと思う。

 次は先生が15歳の時に書かれた詩の朗読で「油絵とデッサン」長野羊奈子さんが出演予定だったのに、足の具合が悪いとかで、なんと奥様の畑中更予さんが登場。先生より2歳上の姉さん女房だというが、まったくお年を感じさせない、天真爛漫な少女のような方だった。あまりに早熟な天才的な詩を、恥ずかしそうに嬉しそうに朗読。最後はウイットに富んだご挨拶をされて、天使は思わず涙ぐんでしまった。奥様は、なんと畑中先生のことを深く愛していることだろう。その愛の深さに心打たれた。純粋な、本当に純粋な愛の姿がそこにあった。その固い絆は、ちょっと凡人には理解できない領域なのかもしれない。

 つづいて10代で作曲された中河輿一の「天の夕顔」による四つの歌とその妻中河幹子による「四つの歌」をバリトンの網川立彦さんが歌った。後者は最近の作品。その間に60年近いの歳月が流れていることに感動をまず覚えた。そして前者の失われた楽曲が中河さんのお嬢さんの元にあったのが発見されて、今回の演奏に繋がったらしい。

 つづいて八木重吉による五つの歌。これも先生の作曲。大島洋子さんが見事に、その詩の世界と先生の音楽とを表現。それにしても先生は、なんとロマンチシズムにあふれた作曲をなさっていることだろうか。しかも本当に若い時代に…。

 そして畑中先生自身が自作を歌う。 低音のための「三つの抒情歌」より「採花」「海浜独唱」そして天使の大好きな「花林」(まるめろ)指揮に、曲目解説に大忙しだったのと、花粉症で、最初に少し声がひっかかってしまったが、85歳にしてこの歌唱は驚嘆するしかない。深く感動した。

 そして休憩。ロビーで今日発売になった花岡千春さんのCDと前から欲しかった先生の詩集「超える影に」を買い求める。

  休憩後は、先生の愛するロベルト・シューマンの歌曲より3曲。「きみに捧ぐ」「胡桃の樹」「てんとう虫」プログラムには先生の訳詞が掲載されていたが歌唱はもちろん原語。さすがにドイツ歌曲から声楽の勉強をスタートされただけあって、自作を歌われたときは打って変わって、心から歌う喜びが溢れてくるような歌唱。少年の日の情熱の炎が燃えさかっているように思えた。歌は年齢ではなく、心の年齢が肝心なのかもしれない。天使には、音楽への情熱に燃える少年が歌っているように思えたからだ。

 次は花岡千春氏のピアノ曲。作曲はもちろん畑中先生で「ピアノのための九つの前奏曲」よりの一曲と、「花林」をピアノ版に編曲したもので、新しいCDに収録されている曲である。歌曲ばかりでなくピアノ曲も作曲されていたとは意外だったが、繊細さと先生の優しさを見事に表現した花岡氏のピアノに心洗われる思いだった。

 さすがに盛りだくさんの内容で時間が押してしまったのか、解説は最後の三曲をまとめてされた。
まず情熱的な歌人・和泉式部の歌に曲をつけた歌曲連集「和泉式部抄」を酒井美津子さんが、畑中先生の詩集「超える影に」に三善晃さんが曲をつけたものを、朗読をまじえ瀬山詠子さんが、最後に先生の詩「四季の歌」に中田喜直さんの作曲で片岡啓子さんが歌った。さすがに現役のオペラ歌手であって、その劇的な表現力、深みのある声に圧倒され、素晴らしい歌声で記念の演奏家を締めくくった。

 詩に作曲に評論に、現役歌手、そして類い希な文筆家として、忙しい毎日を送られているようである。最後にプログラムに載った先生の言葉を採録させていただきます。

 ごあいさつ
                 畑中良輔

 本夕は。まだなお寒いところを御運び下さいましてありがとうございます。八十歳記念のコンサートをいたしましたのが、つい先日のことのように思われますのに、もうあれから五年も経ってしまいました。

 歌ったり、棒を振りをしたり、書きものを抱えこんだり、企画やコンクールの仕事もしたり、いろいろな役職をいただいて、毎日あちらこちら飛び廻っておりますが、「お前はまだ働ける!」という声がいつも私の耳にひびいて来るのです。

 まだ何とか働けるような気もいたしますが、老いてなお、この世のお役に立てるようでしたら、今後も力を盡して未知なるものへの挑戦を続けたいものと思っております。

 どうかこれからも何かと、「叱咤激励」よろしく御願いいたします。
 
 85歳の先生を「叱咤激励」する人がいるとは思えない。「叱咤激励」されるのは、こちらの観客席に座っている方だろう。「力を盡して未知なるものへの挑戦を続けたい」と宣言されてしまったら、こちらは、どうすればいいのだろうと途方に暮れる。これこそ、観客に向けられた「叱咤激励」に違いない。天使が85歳まで生きられるかどうかは判らぬが、悔いのない一日一日を生きねばならないと思う。


2007-02-23 00:24
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日本の歌100年の旅 あのうたこのうた その1 藤沢市民会館 [演奏会]2007-01-28 [演奏会 アーカイブス]

 往復六時間かけて藤沢から戻ったら、田舎の母から電話があって、祖母が入院して危篤だという。明治40年生まれだから今年で100歳。なるほど滝廉太郎が「花」や「荒城の月」を作曲してから100年ということなので、祖母の生きてきた時代こそが日本歌曲の歩んできた歳月だったのかと妙に感心した。まあ大した病気もせずに100歳まで元気で生きてきて、老衰ということなので、まずは天寿をまっとうしたということで「おめでたい」というべきだろう。地主の長女として生まれ、小作農の次男坊だった祖父と樺太まで駆け落ちするような熱烈な恋愛をして、しかも「できちゃった結婚」という当時としては珍しい結婚だったらしい。祖父が亡くなるまで本当にラブラブな二人だった。しかも祖父が亡くなってから、ゲートボール場で知り合った年下の彼とタバコ屋の2階でデートしてたっていうし、恋多き女だったというべきだろうか。う~ん素敵な人生だったなあと羨ましく思う。

 さて天使が定期購読している雑誌のひとつに「音楽の友」がある。一番の楽しみは畑中良輔氏の「繰り返せない旅だから」を読むこと。その先生が力を入れているのが「日本の歌」への取り組み。100年の日本歌曲の歴史をふりかえるという演奏会に出かけた。てっきり14時の開演だとばかり思っていたら、15時の開演だったので途中の大船から鎌倉にまわり、江ノ電で藤沢入りというコースに変更。サーファーやヨットが浮かぶ湘南らしい海の景色を満喫。江ノ島の姿も確認できてただ通過するだけだったのに楽しかった。ホール内に入ってみると江ノ島の浮世絵が描かれた緞帳が下がっていてビックリ。なんだか得した気分。

 ソプラノが三人。メゾ・ソプラノが二人。テノールが一人。バリトンが二人。バスが一名の歌手に藤沢男声合唱団と湘南コール・グリューンと紀声会というコーラスがあわせて70名という布陣。入れ替わり立ち替わりで15分の休憩をはさんで三時間の長丁場の演奏家となった。伴奏は、日本歌曲の伴奏者として第一人者の塚田佳男氏。ほぼ全曲を弾き通して敢闘賞ものだった。

 日本歌曲という一般には馴染みのない芸術歌曲を織り込みながらのプログラムは工夫が凝らされていて、お堅いイメージのある日本歌曲の演奏会でもなく、単なる愛唱歌集の演奏会にも陥らず大変バランスのとれたプログラムとなった。まず滝廉太郎の名曲から始まる。合唱団と歌手が勢揃いして歌い、指揮者は畑中良輔氏。ピカピカ光るストライプの入ったダークスーツにオレンジ色のネクタイというステージを意識した衣裳。初めて気がついたが先生は外国人並みに手足が長い。そこから繰り出される指揮のオーラの凄さ。前日に体調を崩されたような噂も聞いたが元気いっぱいでひと安心。

 先生の解説入りで歌曲が紹介されていく。普通の歌曲の演奏会のように、曲と曲の間に変な時間をおくことなしに、切れ目なく曲が続いていく。一人の歌手が歌い終わって、拍手が終わるか終わらないうちに次の歌手が反対方向から出てきて…、ということが繰り返されて進行していった。ステージは合唱団用の山台が組まれているだけで、後方の音響反射板はなくホリゾント幕。そこに照明が当てられて雰囲気を変えていく演出。舞台の左右と中空に生花のオブジェが置かれていたり吊されていて、予算の少ない中で精一杯頑張った感じ。

 少し堅めの歌曲が続くと「あわて床屋」で歌手が、ちょっとした演技をして最後はピアノの下にもぐってしまったり、合唱団が「あかがり」で両方の脇花道と舞台の上手と下手から数珠つなぎになって踊りながら登場したりと変化に富んで楽しませてくれた。前半で最高のサプライズは信時潔の「沙羅」から「鴉」が歌われたとき。普通は男性歌手が歌うので女性歌手はどう歌うのかと興味津々だった。能風に歌うことと解説していたからか女性歌手が仕舞の構えをしていた。そしたら下手から畑中先生が登場してご本人が歌った!!!!!もうビックリ!!!!今年85歳とは思えない堂々たる歌唱ぶりで二度ビックリ!!!!!!しかも歌い終わると両手をひらひら鳥のように動かして退場するサービスぶりで、もう嬉しくて嬉しくて。

 さらに狸の体に火が点いて死んだと歌う短い歌「野火」では、一旦引っ込もうとした歌手を呼び戻して客席に向かって歌唱指導。さらに振付までして楽しませてくれた。その後に、皆が知っている歌が次々に歌われ大いに盛り上がりをみせた。そして休憩。先生のアイディアによる「おしるこ?」もアッという間に売り切れたらしい。

 橋本國彦と平井康三郎の有名曲が続いて、最後が唱歌を集めた心のふるさと「メドレーするさとの四季」合唱団とソリストが次々に歌い継いでいくが、懐かしい歌ばかりで途中から涙が止まらなくなってしまい、最後の「故郷」では号泣状態。こうした歌を聴く機会も歌う機会も皆無なので、よけいに心にしみたように思う。最後は客席も一緒になって「故郷」を歌った。演奏会の途中で、体を動かしたり、一緒に歌っている人がいっぱいいたけれど、出演者も観客もひとつの歌で結ばれるというのも悪くない。4月28日に「その2」があるが、是非こうした歌う機会を設けて欲しいものだと思った。

 さて出演者では、関定子や宮本哲朗の芸達者なところが目立っていたが、天使のお気に入りは合唱団。特に藤沢男声合唱団である。失礼ながら高齢な方が目立つ合唱団である。若い人が全然いない。働き盛りの世代は、よほどのことがない限り合唱団の練習に参加するのが難しいのは天使も痛感している。だから老紳士の集団になってしまったのだろうが、たとえば力強さや迫力だけなら学生の合唱団に軍配が上がるだろうが、この合唱団には年輪を重ねた歌声の深みが確かにあった。個性的なのである。もう観ているだけで退屈しない。この人はどんな人生を送ってきたのだろうと想像するだけで楽しい。

 たとえば何回も登場する振付。女性陣は思い切りがいいのか練習熱心なのか、なかなか揃っていて見事。かたや男性陣は、リズム感が悪いのか、あまり振付が好きではないのか、ノリノリな人もいる反面。つまらなそうにしている人。プライドを捨てきれないのか振りが小さい人と千差万別。一人一人の人生が透けて見えてきて面白くて仕方なかった。この揃わなさが最高だった。特に最前列で歌っていた紳士達。歌が好きで好きで仕方がないこと、お互いに支え合っていることが客席にも伝わってきて本当に感動しました!

 こんなに素晴らしい演奏会だったのに残念だったのは、子供の姿を全然見かけなかったこと。50年前や60年前のお坊ちゃんやお嬢ちゃんが大集合という感じ。NHKのラジオ深夜便の聴視率調査をしたら100%かも。十代から三十代も全然いなかったように思う。世代を越えて楽しめる内容だっただけに次回は是非幅広い観客に聞いて貰いたいものである。日本歌曲の演奏会がエンターテイメントとしても立派に通用することを証明した演奏会だった。多くの人におすすめしたい。

 次回は4月28日(土)1時30分開演。発売は2月24日の午前9時から。
 S=5,000 A=4,000 B=3、000 C=2,000

今回の曲目は以下の通り

第一部
一、日本歌曲前史《滝廉太郎》
  組曲「四季」より 花    出演者全員
  荒城の月          出演者全員

二、偉大な後継者《山田耕筰》の出現!
  歌曲集「風に寄せて歌える春の歌」より
  たたえよ しらべよ うたひつれよ  岩崎 由紀子
  歌曲集「AIYANの歌」より
  曼珠沙華
  歌曲集「雨情民謡集」より
  捨てた葱/二十三夜         関 定子
  歌曲集「ロシアの人形の歌」より
  カロウヴァ(牛)/ニャーニュシカ(お乳母ちゃん)
                        堀野 浩史
  赤とんぼ/からたちの花       大島 洋子
  かやの木山/木の洞         松井 康司
  六騎/あわて床屋/鳥の番雀の番 宮本哲朗

三、日本歌曲の中のアカデミズム《信時 潔》
  あかがり/痩人を嗤ふ歌二首    混声合唱
  歌曲集「沙羅」より
  北秋の/占なふと/鴉        青山 恵子
  「小曲集」より
  ばらの木/わすれなぐさ/幻滅/野火
                        天田 美佐子

四.大正・昭和のロマン・アルバム
  出船/苗や苗              小宮 一浩
  浜千鳥/浜辺の歌/城ヶ島の雨   宇佐美 瑠璃
  昼の夢(fl)                岩崎 由紀子
  鉾をおさめて/出船の港        堀野 浩史
  カチューシャの歌/ゴンドラの歌    混声合唱

  休憩

第二部
五.新しき世界へ!《橋本國彦》
  小鳥の歌                 女声合唱
  ビール樽                 男声合唱
  お菓子と娘/斑猫           大島 洋子
  黴                     天田 美佐子
  富士山みたら(fl)            宮本 哲朗
  城ヶ島の雨(fl)             青山 恵子
  牡丹                    松井 康司
  お六娘                   関 定子

六、究極の旋律美を求めて《平井康三郎》
  平城山                   堀野 浩史
  九十九里浜                小宮 一浩
  時雨に寄する抒情            岩崎 由紀子
  秘唱                    宇佐美 瑠璃
  ゆりかご                  女声合唱

七.心のふるさと「メドレーふるさとの四季」(源田俊一郎)
   故郷・春の小川・朧月夜・鯉のぼり・茶摘・夏は来ぬ
   われは海の子・紅葉・冬景色・雪・故郷
                          出演者全員

アンコール「故郷」               全員合唱

追記
1月30日は亡くなった祖父の命日でした。祖母は絶対に同じ日に…。
と覚悟を決めていました。二人の愛はこれで成就するのだと勝手に
ドラマチックな展開を考えていたのですが、救急車で運ばれたはず
なのに、ケロッと回復してしまったらしく、まもなく退院だそうです。
手回し良く喪服まで用意し、仕事も数日休んでもいいように準備
したのですが、無駄に終わったみたいです。まずはひと安心です。

さてコメントでtsukune☆彡さんが教えてくださっているのですが、
畑中先生、橋本國彦、信時潔のピアノ曲のCDが発売だそうです!
http://www.hmv.co.j p/product/detail/251 3092

2007-01-28 22:27 nice!(0) コメント(2) トラックバック(0)
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青の会 第83回演奏会 [演奏会]2006-12-24 [演奏会 アーカイブス]

 畑中良輔先生が「音楽の友」に連載されている「繰り返せない旅だから」に「新声会」の記述があって、先生自身の若き日の歌曲が演奏されるというので喜び勇んで演奏会にでかけた。会場のロビーで畑中先生をおみかけする。こちらをちょっと見たような気がしてドキッとした。楽しみにしている連載を執筆しているご本人をみかけるのは不思議な気持ちである。来月は藤沢へ「日本の歌100年の旅」のコンサートへ、二月は先生の85歳のメモリアルコンサートへ出かけようと会場で売っていたチケットを買い求めた。なんだが先生の追っかけにでもなった気分である。東邦音楽大学の「ブル先生のおもしろ音楽塾」にも本気で参加しようかどうか迷っている。

 さて戦後の歌曲ルネサンスを興した「新声会」の特集。曲目は以下の通り

戦後いち早く起ち上がった新声会の歌曲

石桁眞礼生 曲/丸山 薫 詩
「四つの詩」
一、祈祷歌 二、離愁 三、挿話 四、哀傷
宇佐美桂一

繁田祐治(三木鶏郎) 曲
「始めの四つの歌」
岩ばしる     万葉集
初恋       島崎藤村 詩
うみべ      佐藤春夫 詩
淡月梨花の歌 佐藤春夫 詩
曽我淑人

戸田邦雄 曲
「万葉集による七つの歌」
一、冬ごもり    作者不詳
二、今更に     安部女郎 歌
三、恋ひ恋ひて  大伴坂上郎女 歌
四、相思はぬ   作者不詳
五、験なき     太宰師大伴郷 歌
六、雨隠り     大伴家持 歌
七、世の中は    太宰師大伴郷 歌
吉武由子

畑中良輔 曲
「低声のための三つの抒情歌」
採 花        松田祐宏 詩
海浜独唱      室生犀星 詩
花林         杉浦伊作 詩
築地利三郎

小倉 朗 曲
桐の花       三好達治 詩
犀 川       室生犀星 詩
馬車の中で    萩原朔太郎 詩
大島陽子

-休憩-

中田喜直 曲
「六つの子供の歌」
うばぐるま     西條八十 詩
鳥          小川未明 詩
風の子供      竹久夢二 詩
たあんき ぽーんき 山村暮鳥 詩
ねむの木       野口雨情 詩
あやすみ       三木露風 詩
細谷美内

團 伊玖磨 曲/北原白秋 詩
「六つの子供の歌」
いたち・へうたん・秋の野
さより・からりこ・雪女
中村 健

別宮貞雄 曲/加藤周一 詩
「二つのロンデル」
雨と風
さくら横ちょう
岩崎由紀子

別宮貞雄 曲/大木惇夫 詩
「淡彩抄」
泡・蛍・入墨子・涼雨・別後・燈
天の川・青蜜柑・鷺・春近き日に
大川隆子

柴田南雄 曲/草野心平 詩
富士龍    
平野忠彦

柴田南雄 曲/立原 道造 詩
「優しき歌」 
一、序の歌 二、爽やかな五月に
三、落葉林で 四、さびしき野辺
小泉 恵子

伴奏・塚田佳男 花岡千春
お話・畑中良輔

 若い時代の作曲だけあって、シュトラウス風や十二音技法を駆使したりと多彩な作品。万葉集から現代詩風なものまで、歌詞も幅広い。日本歌曲には、なんと豊かな世界が広がっているのかと再認識させられた。

 作品自体に魅力があっても、それを表現する歌手に力量がないと一向に心が動かされないのも事実。楽しみにしていた畑中先生の「低声のための三つの抒情歌」など先生のCDで聞きこんでいただけあって、築地利三郎氏の底の浅い表現力に大いに落胆させられた。

 やはり実力を持った歌手が揃った後半が楽しめた。子供の歌を歌うお爺さん歌手?中村健氏は、多少不安定な部分があっても表現力はずば抜けていたし、衰えを知らぬ美声をホール中に響かせた。

 会場にいらした作曲者である別宮貞雄先生をきっと満足させたに違いない大川隆子女史の歌唱は見事だったし、初演以来演奏の機会なかった「富士龍」を歌い上げた平野忠彦氏にも満足を感じた。そして最後に歌った小泉恵子の均整のとれた歌唱ぶりに感心した。

 そして何よりも会場の雰囲気をなごませたのは、畑中良輔先生の名解説である。なかなかユーモアに富んだお話で笑わせてくれるが、肝心の部分は外さないという絶妙の話術である。自分の曲を紹介して「良い曲ですよ」なんてふるものだから、天使は思わず拍手してしまったら、「まだ歌ってないのに拍手がきちゃいました」なんて切り返されて、嬉しいやら恥ずかしいやら・・・。

 次回の第84回の青の会は紀尾井ホールで2月22日に公演がある。とても楽しみである。先生がおすすめくだすった立原道造の新しい全集も買ってみようかと考えていたりする。


2006-12-24 23:36
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ビリー・ジョエル 東京ドーム [演奏会]2006-11-29 [演奏会 アーカイブス]

 大好きなビリー・ジョエルの来日公演の東京ドームの初日を観に行く。持ち物検査があるので入場に随分と時間がかかり、退場するにもブロック毎に規制があるし、外に出れば出たで大混雑なのはいつもの事である。1階スタンド席なので立ち上がらないで座って見られるので助かった。アリーナ席は延々と2時間も立ちっぱなしである。けっして若いとはいえない平均年齢の高い観客にとっては大変だったろうなあと同情した。

 もちろんビリー・ジョエルは、2時間休みなくピアノを弾き、歌い、マイクスタンドを担いでステージを行ったり来たり、ギターまで弾いて疲れを知らない。なんというパワフルなオジさんなんだろう!もうそれだけで感動してしまった。お尻や足でピアノを弾き、マイクスタンドを蹴り上げたりと若いロック歌手顔負けのパフォーマンスで観客を沸かせた。マイクをうまく蹴れなかったのはご愛敬だが…。

 途中で数えるのをやめてしまったが、たぶんアンコールを含めて二十数曲だったように思う。大ヒット曲はもちろん、アルバムには収録されているもののあまり馴染みのない曲まで多彩な楽曲を演奏した。ピアノのテクニックはもちろん、きれいに響く高音まで衰えを知らない歌声で観客を魅了。

 ステージの周囲は派手さはなく質実剛健というイメージ。ステージ衣装も黒のシャツにジャケットにジーンズと地味なのだが、ちょっと薄くなってしまったヘヤスタイルやヒゲなど、とってもお洒落なニューヨーカーという感じで、あんな風に年齢を重ねられたらと思った。

 最初はPAの音の方向が定まらず、音量も不足気味で不安定だったが、途中から音がドンドン大きくなって鼓膜が破れるのではないかと思うほどの大音響になってしまった。ピアノにボーカルだと、ちょっと聴いているのが辛い感じ。照明はドームの天井にライトを当てたりと工夫していたが音楽を邪魔しない心地よさがあった。コンサートとはいうものの、演奏中も移動する観客が大勢いるし、左右に置かれた巨大な画面で本人を確認するしかないという、まあお祭りみたいなノリのイベントでした。

 バンドは楽器の持ち替えをするので総勢で7名と、夏の「ムーヴィン・アウト」のミュージカルの編成とそう変わらない。ピアノを弾きながら歌うビリー・ジョエルを真ん中にして、ひたすら音楽の演奏に集中していた。ビリー・ジョエルとピアノをのせたステージが回転するという舞台装置で、なんの為なのかは良くわからないが、東京ではないが、このツアーではステージの後ろに観客席がある会場もあるようなので後方の観客向けだったのかもしれない。途中でピアノがかたづけられたりしたが、たぶん迫り使っているのだろうが何時移動したか気がつかなかった。

 手拍子したり、足を踏みならしたり、身体を揺すったり、立ち上がらないまでも彼の音楽を心ゆくまで楽しめた。アンコールは2曲。「イタリアン・レストランで」と「ピアノ・マン」。当然「ピアノ・マン」では観客に歌わせる演出だろうと、恥ずかしながらカラオケで猛特訓していった甲斐あって、ちゃんと歌えた。
Sing us a song,you're the piano man
Sing us a song tonight
Well we're all in the mood for a melody
And you've got us feeling alright … よかった、嬉しかった…。

終わって周囲を見渡せば、同年代と思われる観客がいっぱい。初期の曲は、もう三十年以上も前になるのだから本当は懐メロなんだろうけれど、楽曲は少しも古さを感じさせない魅力に溢れているのを再確認。さすがに二日連続のコンサートは無理らしく、オペラ並みに中一日置いて30日も公演がある。もう一度行くつもりでチケットを買っていたのだが仕事で行けなくなって残念。

本日の曲目は以下の通りだそうです。ノンストップとは凄すぎます。

11月28日(火)@東京ドーム

01.怒れる若者/Angry Young Man
 *album『ニューヨーク物語/Turnstiles』('76)
02.マイ・ライフ/My Life
 *album『ニューヨーク52番街/52nd Street』('78)
03.マイアミ2017/Miami 2017
 *album『ニューヨーク物語/Turnstiles』('76)
04.オネスティ/Honesty
 *album『ニューヨーク52番街/52nd Street』('78)
05.エンターテイナー/The Entertainer
 *album『ストリートライフ・セレナーデ/Streetlife Serenade』('74)
06.ザンジバル/Zanzibar
 *album『ニューヨーク52番街/52nd Street』('78)
07.ニューヨークの想い/New York State Of Mind
 *album『ニューヨーク物語/Turnstiles』('76)
08.アレンタウン/Allentown
 *album『ナイロン・カーテン/The Nylon Curtain』('82)
09.ドント・アスク・ミー・ホワイ/Don't Ask Me Why
 *album『グラス・ハウス/Glass Houses』('80)
10.ストレンジャー/The Stranger
 *album『ストレンジャー/The Stranger』('77)
11.素顔のままで/Just The Way You Are
 *album『ストレンジャー/The Stranger』('77)
12.ムーヴィン・アウト/Movin' Out
 *album『ストレンジャー/The Stranger』('77)
13.イノセント・マン/An Innocent Man
 *album『イノセント・マン/An Innocent Man』('83)
14.キーピン・ザ・フェイス/Keeping The Faith
 *album『イノセント・マン/An Innocent Man』('83)
15.シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン/She's Always A Woman
 *album『ストレンジャー/The Stranger』('77)
16.愛はイクストリーム/I Got To Extremes
 *album『ストーム・フロント/Storm Front』('89)
17.ザ・リヴァー・オブ・ドリームス/The River Of Dreams
 *album『リヴァー・オブ・ドリームス/River of Dreams』('93)
18.地獄のハイウェイ/Highway To Hell
 *album『地獄のハイウェイ/Highway To Hell』('79) AC/DC
19.ハートにファイア/We Didn't Start The Fire
 *album『ストーム・フロント/Storm Front』('89)
20.ビッグ・ショット/Big Shot
 *album『ニューヨーク52番街/52nd Street』('78)
21.ロックンロールが最高さ/It's Still Rock & Roll To Me
 *album『グラス・ハウス/Glass Houses』('80)
22.ガラスのニューヨーク/You May Be Right
 *album『グラス・ハウス/Glass Houses』('80)
- - - - - encore 1 - - - - -
23.イタリアン・レストランで/Scenes From An Italian Restaurant
 *album『ストレンジャー/The Stranger』('77)
- - - - - encore 2 - - - - -
24.ピアノ・マン/Piano Man
 *album『ピアノ・マン/Piano Man』('73)


2006-11-29 00:20
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藤沢市民オペラ・ガラコンサート [演奏会]2006-07-17 [演奏会 アーカイブス]

 はるばると2時間半かけて藤沢まで出かけました。もちろん米澤 傑先生が歌われるというので駆けつけたわけです。たぶん完璧主義者の米澤先生は、今日の出来に関して満足されていないと推察されますが、「花の歌」も「誰も寝てはならぬ」も十分に楽しませてくれました。やはり第一声から他を圧倒する美声で場内を満たしてくれました。確かに「アッ!」と感じさせた部分もありましたが、それを補ってあまりある歌心にしびれてしまいました。特に「誰も寝てはならぬ」は、再び声の威力にひれ伏す思いです。

 実は仕事柄、三連休中に休みをとるのは困難で、ある案件について会社と何度も何度も電話でやりとりを繰り返して、内心穏やかではなかったのですが、米澤先生の生の歌声を聴くことができて心が癒やされる想いでした。歌う暇もないくらいの激務を毎日こなして、鹿児島から駆けつけていらした先生も、実は頭の中は仕事のことでいっぱいだったのしょうか?高音に向けて、額に青筋を立て、緊張感を隠さない先生の姿は初めてだったように思います。会場で先行発売されたDVDも早速に視聴しておりますが、昨年の感動が蘇って嬉しくもあり懐かしくもあり、大切にしたいと思います。

 さて会場は音響反射板の後方部分を取り払い、ホリゾント幕に照明で彩りを添え、両脇には照明が仕組まれた布製の柱、後方にはドレープをあしらうなど、優雅な雰囲気を醸し出そうと一生懸命努力しているようでした。しかしながら藤沢市民会館は響きがデッドすぎるのが辛かったように思います。それにいくら昭和30年代がブームだといっても古すぎです。耐震構造は大丈夫なんでしょうか?そろそろ建て替え時期だと思います。藤沢市の市長さん、ご検討ください。たぶん楽屋も十分でなく、合唱団は廊下あたりで着替えるなんてことになっているのじゃないかと心配になりました。あれだけの出演者が楽屋に収まるわけないですね。

 指揮は現田茂夫、管弦楽は神奈川フィルハーモニー管弦楽団、合唱は藤沢市民オペラ合唱団。
企画・構成・司会の畑中良輔先生は、合唱団を主役にと考えたようで、開幕の「タンホイザー」歌の殿堂をたたえよう、後半の「ホフマン物語」美しい夜、「トゥーランドット」誰も寝てはならぬ、「アイーダ」凱旋行進曲、それにアンコールの「椿姫」から乾杯の歌と活躍の場が多かった。合唱団の入退場時に司会として「おしゃべり」をして、もっぱら歌の方へ観客の関心を向けようとしていたのは見事でした。しかもお書きになったものと同様にユーモアたっぷりのお話で、天使は一人受けまくって大笑いしていたのですが周囲から思いっきり浮いてしまったようで反省。

 藤沢に所縁の歌手と今回初登場の歌手がいたようですが、やはりプロとして数々の舞台を踏んでいる歌手の歌唱が安定していたように思います。牧野正人は藤原歌劇団で活躍する人で「道化師」のプロローグと「セビリアの理髪師」私は町の何でも屋を歌った。特に後者は脇舞台から登場したり、ハサミと櫛を持って演技して笑わせてくれたりの大活躍でなかなか芸達者なところをみせてくれて嬉しがらせる。プログラムの写真はおじさんぽいのだが、舞台に登場した姿は意外に若々しくイメージが一新した。これから注目していきたい歌手で。今度は是非ともオペラで藤沢に登場して欲しい。

 つづいて同じく藤原歌劇団所属の小濱妙美は、「ルサルカ」月に寄せる歌と「魔弾の射手」まどろみが近寄るようにを歌って、声、技巧ともに申し分のない出来をしめしたし、ベテランの片岡啓子は「運命の力」神よ、平和を与えたまえで貫禄をみせた。そのほか「リゴレット」慕わしき人の名を歌った針生 美智子、「ウエルテル」春風よ、なぜ私を目覚めさせるのかを歌った新人・倉石 真の懸命さが印象に残った。

 延々と休憩を挟んで2時間半も続いた演奏会だったが、曲目が変化に富んでいて飽きさせなかったし、オペラの醍醐味を伝えるに十分の内容だった。合唱団の男声は、よくぞこのレベルでこれだけの人数が集まったものと感心させた。もっとも高齢化の波は避けがたいものがあり、オペラ公演では気がつかなかったが、おじさん合唱団からおじいさん合唱団へ進行しつあるのが気になった。全国各地で同じ悩みを抱えているとは思うが、やはり若い人は合唱に集まらないのだろうか。天使も仕事が忙しすぎて地元の合唱団に参加できないまま8年が過ぎようとしている。その間に「マタイ受難曲」、「トゥーランドット」など大作に次々に挑んでいるのに歌えないのが悔しい。今年は憬れの「カルミナ・ブラーナ」だというのに…。そうそう藤沢市民オペラ合唱団も、せっかくこれだけの人数が揃っていることだし、あれだけ歌えるならオペラだけでなく、他の曲に挑戦しても面白いと思うのですがいかがでしょう?


2006-07-17 23:33

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