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日本の歌100年の旅 あのうたこのうた その2 藤沢市民会館 [演奏会]2007-04-29 [演奏会 アーカイブス]


 今日も藤沢市民会館へ電車を乗り継ぎ2時間半かけて出かけた。その甲斐あってとっても充実した時間が過ごせた。終演後は畑中先生のサイン会があって、今まで持っていなかった先生が指揮しにウィーンまで録音にでかけたブラームスのCDを買い求めてサインしていただく。「名前を書きますか?」とおっしゃたが、名前を知らせるのも恥ずかしくて「先生のお名前だけで結構です」と言ってしまって、ちょっと後悔。先週「ブル先生のおもしろ音楽塾」に参加していたせいか「毎回、毎回ありがとうございます」と丁寧に挨拶されて恐縮してしまった。

 プログラムは、北原白秋・詩/平井康三郎・曲の「日本の笛」より(合唱と独唱)からスタート。先生をはじめソリスト、合唱団、ピアニストまでハッピ姿。タルを叩く若者は完全なお祭り装束。お鈴を鳴らす僧侶も登場するなど毎度のことながら工夫された演出。配られたプログラムにはスペースがなかったのか単なる編集ミスか作詞者と作曲者が明記されていたのはこの曲だけという不親切さ。せっかく馴染みのない日本歌曲の傑作を聴く機会なのに画竜点睛を欠くといった感じ。それを補うように畑中先生の解説が面白かっただけに、よけいに残念だった。

 曲や歌手によって完成度に差があったが印象に残ったものをいくつか。まず青山恵子が無伴奏で歌った佐藤春夫 詩/早坂文雄作曲「うぐいす」は、その日本的な歌唱技術をふまえた声の多彩な表現に感嘆。

 清水脩の「お道化うた」中原中也の詩で、ベートヴェンのピアノ・ソナタ「月光」をパロディにした感じの洒落た趣向の歌曲。ピアノの塚田佳男とバリトンの竹澤嘉明の名唱、名演技で堪能。そして男声合唱の名曲「秋のピエロ」学生が歌うのと違って、技術的に問題もなくはないが、年配者の多い合唱団員の歌うのは味があって素晴らしいかった。

 そして畑中先生の「花林(まるめろ)」を竹澤嘉明が同じく塚田佳男の伴奏で素晴らしい完成度で歌い上げた。美しい冒頭のピアノ部分が本当に美しくて今回も聴き惚れた。

 中田喜直の作品は童謡がやはり楽しい。おじさん二人の可愛い「めだかの学校」美女三人の「かわいいかくれんぼ」田中誠の鬼の子の演技が秀逸だった「鬼の子守歌」

 團伊玖磨ではドラマチック・コロラトゥーラ・ソプラノの関定子とスーパーバスの堀野浩史の「ぞうさん」の超高音と超低音の「ぞうさん」合戦が傑作。そして最高の歌唱だと思ったのは田中誠が歌った野上彰作詞/小林秀雄 作曲の「落葉松」だった。これは絶品。猪本隆作曲の「オオカミのおおしくじり」も竹澤嘉明が大活躍。

 そしてアンコールとして石桁真礼生民話による四重唱曲「河童譚」が舞台上演形式で上演された。畑中先生が洋服の上から藍の団七格子の浴衣のようなツンツルテンの着物を着て登場され指揮を担当。河童役の竹澤嘉明が緑のタイツ姿以外は全員が着物。河童のかつらと緑のてぶくろをつけた合唱団が脇花道から踊りながら登場。無理矢理な16歳の娘役・関定子が貫禄十分で傑作。みんなが楽しそうに歌い演じているのが何よりだった。特に合唱団のテノールの老紳士がノリノリだったのが可愛くてとってもキュート。面白くなさそうに生真面目に演じ歌う合唱団員が多い中にあって貴重な存在かも。最後は「ふるさと」を観客もふくめ全員で歌ってお開きだった。楽しかった。

 客席にはご年配の方が多く、若者はおろか子供はほとんどいなかった。これでいいのだろうか?歌の世界でなければ、北原白秋や中原中也の詩なんてふれる機会がないと思うのだが…。残念なことである。本当に多彩な日本歌曲の世界を娯楽の要素を盛り込んで面白くみせたスタッフの意気込みはよい。ほとんどの伴奏を担当した塚田佳男の伴奏も素晴らしかった。連休の初日のせいか客の入りが薄かったのが残念だった。

 帰りの藤沢駅から夕陽を逆光にシルエットを浮かび上がらせた富士山がとっても美しくて感動。それと同じくらい心洗われた一日となって余韻をかみしめながらの家路となった。

2007年4月28日 14時開演 藤沢市民会館

一・民謡芸術が生まれた!
  「日本の笛」より(合唱と独唱) 北原白秋・詩 平井康三郎・曲
  親船子舟        田中誠
  あの子この子     堀野浩史
  びいでびいで     山口道子
  山は雪かよ      混声合唱
  野焼の頃       出演者全員

二・近代抒情名歌アルバム
  初恋             小栗純一
  もうじき春になるだろう  山本香代
  野の羊            田中 誠
  汚れちまった悲しみに  三林輝夫
  悲歌(亡き子に)      関 定子
  海の若者          堀野浩史
  うぐいす           青山恵子

三・清水脩の残したもの
  春の寺            山口道子
  お道化うた         竹澤嘉明
  秋のピエロ         男声合唱

四・戦中派の歩んだ道
  きつね            小栗純一
  さくら横ちょう        山口道子
  爽やかな五月に      瀬戸理恵子
  花林             竹澤嘉明

  休憩15分

五・中田喜直が拓いた世界
  青空の小径        女声合唱
  たあんきぽーんき    堀野浩史
  風の子供         三林輝夫
  おやすみ         瀬戸理恵子
  さくら横ちょう       山本香代
  鳩笛の唄         関 定子
  めだかの学校      三林輝夫・小栗純一
  かわいいかくれんぼ  瀬戸理恵子・山口道子・山本香代
  もんく            関 定子・堀野浩史
  鬼の子守歌        青山恵子・田中誠・竹澤嘉明

六・続く團伊玖磨歌曲展望
  舟歌             青山恵子
  ひぐらし           三林輝夫
  花の街           山口道子・青山恵子・田中誠・小栗純一
  ぞうさん           関定子・堀野浩史

七・現代名歌アルバム
  しぐれに寄する抒情    小栗純一
  落葉松            田中 誠
  オオカミの大しくじり    竹澤嘉明
  杓子売唄           ソリスト全員

八・民話による《河童譚》
     関定子・青山恵子・田中誠・竹澤嘉明
     混声四部合唱

アンコール曲「ふるさと」
       1番・2番3番はハミング  全員

01:28
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