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リゴレット 東京二期会オペラ劇場 東京文化会館 2015年2月21日 [オペラ]





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平成26年度文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)、2015都民芸術フェスティバル 参加公演、さらに《パルマ王立歌劇場との提携公演》という角書つきの公演。ロビーには二期会のオペラの観客をターゲットにした協賛企業のブースがずらり。海外からのオペラ公演ならいざしらず、二期会の観客が富裕層とは思えないのだが…。ちょっとマーケティング戦略を間違っているような気もした。

ポスターやチラシの半分は指揮者であるアンドレア・バッティストーニのアップ画像。新進気鋭の才能豊な指揮者ということで『ナブッコ』についで再登場。若さ溢れる溌剌とした熱い指揮が評価されてのことだろうが、残念ながら天使の好きなタイプの指揮者では今回もなかった。お隣の紳士は盛んにブラボーを連発していたので、好みにあった観客は大勢いたようではある。確かに疾走する音楽は新鮮で魅力的に感じることもできるだろうが、歌手に全く寄り添わない部分もあり、明らかにまったく投げてしまったのか集中力を欠いたような部分もあり、浮沈みの激しい音楽で最後まで聴き通すのが辛かった。致命的なのは、彼が伝えたいと欲するような音楽が全く伝わってこなかったことで、周囲が持ち上げ過ぎなのではないかと思った。

歌手陣は、たぶん数多の二期会会員の中からオーディションで選ばれた実力派なのだろうけれど、舞台経験の有無が大きく明暗を分けたようで、リゴレットの上江隼人とジルダの佐藤優子はなんとか及第点だが、マントヴァ公爵の古橋郷平は全く期待外れ。登場の時から発声に難があり、最後まで歌いきれるか、最高音にを出すことができるか大いに心配になった。歌手の方も自信がなさげで、それがそのまま観客に伝わってくるので、聴いているのが辛かった。

予感は的中して、第2幕では声がひっくり返ったような酷い発声になり、声量も大幅にダウン。第3幕のアリアもオリジナルに高音の指定はないにしても、観客はHI-Cを期待している訳で回避してしまったのは残念だった。第3幕の重唱も大いに足を引っ張っていたように思う。総じて歌手の声がオーケストラピットを超えて客席に届いていなかったのは、歌手の実力不足も原因だが、指揮者がオーケストラを鳴らし過ぎだったのかもしれない。

演出はパルマ王立歌劇場からレンタルされた衣裳と舞台装置らしいが、20世紀の古臭い演出そのままで古色蒼然としたものだった。第1幕の前半は書割の前に置かれた長いテーブルに狂乱の世界が繰り広げられる?というイメージなのだろうが、あまり官能的なものは感じられなかった。不道徳な面はばっさり斬られていたのかもしれない。

第1幕は工夫の為所で、リゴレットの家と街路に転換しなければならないのだが、リゴレットの家だけを暗闇の中に浮かびあがらせる手法を使い家が移動すると後方に壁とジルダのいる部屋が壁越しに見えるという舞台装置が現れる仕掛け。そのつなぎの部分では、紗幕越しの何もない空間にリゴレットが出てきて歌うなど、急に抽象的になるなど様式が一定ではなかった。

第2幕は階段状の舞台装置が組まれていて、そこに時代物のきらびやかな衣裳をまとった合唱団員が並ぶので美しい場面となった。せっかくの舞台もマントヴァ公爵が急ブレーキになってしまって残念だった。それまで書割が中心だった舞台装置が、何故か第3幕になると急に写実的で立体的なものに変わってしまって、様式が統一されていないチグハグなものになっていた。下手にスパラフチーレの酒場が入っている石造りの建物があり、それを巡るように傾斜した通路が上手から下手へ延びているという立体的で高低差のある舞台装置になっていた。

どして、ここだけ大掛りなのか理解に苦しんだが、その部分の芝居も停滞ぎみで、一向に盛り上がらないし、悲劇性も浮かび上がってこないので、淡々とした舞台をただただ眺めるほかはなかった。きっと日本で一から新演出の舞台を作り上げるよりも、輸送代を支払ってもレンタルした美術の方が安上がりだったのかもしれない。ご丁寧に演出家までイタリアから呼んだようだが、そこまでの効果があったようには思えないのである。例によって二期会名物?のブラボーの嵐だったけれど、そこまで熱狂させてくれるような舞台ではなかったと思う。


スタッフ
指揮: アンドレア・バッティストーニ
演出: ピエール・ルイジ・サマリターニ/エリザベッタ・ブルーサ

美術: ピエール・ルイジ・サマリターニ
照明: アンドレア・ボレッリ

合唱指揮: 佐藤 宏
演出助手: 菊池裕美子

舞台監督: 佐藤公紀
公演監督: 直野 資

キャスト

配役
マントヴァ公爵 古橋郷平
リゴレット 上江隼人
ジルダ   佐藤優子
スパラフチーレ  ジョン ハオ
マッダレーナ 谷口睦美
ジョヴァンナ 与田朝子
チェプラーノ伯爵 原田勇雅
チェプラーノ伯爵夫人 杣友惠子
モンテローネ伯爵 長谷川 寛
マルッロ  加藤史幸
マッテオ・ボルサ 今尾 滋
マントヴァ公爵夫人の小姓 小倉牧子

合唱: 二期会合唱団
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団

開演14:00
第1幕約60分
休憩25分
第2幕約30分
休憩20分
第3幕約35分
終演予定16:50
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