SSブログ

歌舞伎座の小型字幕ガイド機はどうなった? [歌舞伎]

国立劇場の歌舞伎鑑賞教室では実現しているが、歌舞伎の字幕表示が小型字幕ガイド機を導入することで新しい歌舞伎座でも行われるらしい。国立劇場は、文楽公演と同様に舞台の上手と下手に字幕を出す形式である。最近は、オペラでも舞台の両脇に字幕装置を立てるということが普通になっていて、見たくない観客は見なければいいし、必要な観客もちょっと視線を左右に動かせばいいだけなので楽である。

オペラ公演では、最初は舞台上部に映画同様に横書きで字幕が出たので舞台と字幕を同時に観ることが困難だったけれど、舞台横に出ることで不自由はなくなった。そのおかげで原語上演が当たり前になってしまって、日本語の訳詞上演が激減してしまったのは、日本語によるオペラ歌唱法が進歩しなくなってしまったので日本のオペラ界にとってよかったのか悪かったのか。

ニューヨークのメトロポリタン歌劇場には小型の電光掲示板方式の字幕表示装置が席の背もたれの部分についているらしい。暗い場面でも邪魔にならないよう、角度や照度が工夫されているようで好評のようだ。

112-5.jpg

国内では国立能楽堂にも同じような字幕表示装置が設けられている。残念なことに、このところ国立能楽堂に出かけていないので、どのようなものなのか確かめていない。主催公演のチケットは入手困難ということなので、新しい観客の開拓に役立ったいるのかもしれない。

H0000120808.jpg

歌舞伎座の小型字幕ガイド機は、タブレット端末を使用するようだが、開場まで2週間ほどだというのに報道が少なくて、その全貌が明らかにされていないのはどうしたことか?タブレット端末を使用して、義太夫狂言の詞を表示するらしく、前の席に引っ掛けて使用するらしい。

迫本社長は日経のインタビューに答えて次のように語っている。

「歌舞伎座で12ヶ月の公演を続けるようになったのは1990年から。それ以来のファンの数を維持しなければなりません。いかにお客さんが楽しみやすい環境を整えるか。きめ細かいサービスが必要で、イヤホンガイドなどはそうしたサービスの一つでしょう」

「また、ポータブル型のガイド機で字幕を表示するサービスを始めます。謡いの中身を理解できれば、どんなお客さまでも感情移入しやすいですからね」


「謡い?の中身を理解できれば、どんなお客さまでも感情移入しやすいですからね」という考え方はどうかと思う。目で字面を追ったからといって、簡単に意味が理解できることなど歌舞伎に限ってはないのである。まさか脚注を字幕に表示するわけにもいかないので、イヤホンガイドを併用ということになるのだろうか。何とも珍妙な姿である。機械の手を借りなければ理解できない演劇など存在価値があるだろうか。長い時間をかけて知る楽しみが歌舞伎にはある。

猿之助のスーパー歌舞伎や勘三郎のコクーン歌舞伎の評価できる点は、イヤホンガイドを導入しなかったことである、逆に野田秀樹や宮藤官九郎の芝居にどのような解説をつけたか興味はある。

義太夫狂言は、ほとんど明るい中で上演されるとはいえ、タブレット端末の放つ光が邪魔にならないかというのが心配である。発表が遅れているのも、そうした技術的な部分が解決されていないことと、作品ごとに字幕をつくる作業が遅れているか、コスト面で折り合いがつかないのではないかと想像する。

特に光り漏れの影響は深刻で、クラシックのコンサートでも、データ化した楽譜をタブレットで見ながら音楽を聴くという観客も登場してきているようだから余計に心配である。実際に音楽に集中できないで困るらしい。

さて日経なのでビジネスマンにも社長から一言。

「人気演目だから取れないと思われがちですが週末でも取れます。4~6月は3部制にして、平日仕事が終わった後、短時間で鑑賞できる演目もそろえます。3部制の興行は3階席A席6000円、3階席B席は4000円です。まず安い席で鑑賞して興味を持ち、いずれ2等席や1等席を利用していただければと思います」

まあ、まともなビジネスマンが平日の18時10分から歌舞伎座で芝居が観れるはずなどないのだが、最後の「勧進帳」くらいは幕見席で楽しむことはできるかもしれない。料金に関しては、あたかも値下げしたかのような書き方だが、豪華メンバーの杮落とし興行とはいえ、演目がすくないので実質的な値上げのようなものである。4月興行は1部と2部は全席売り切れで3部を売りたい気持ちは理解できるが、本気で新規客を開拓しようと思っているようには感じられない。

救いは以下の言葉で、収益だけを考えれば幕見席など廃止なのだろうが、広げたという英断は評価したい。ただし、休場中の代替劇場になった新橋演舞場に幕見のシステムを設けなかったのは、3年間で生まれるはずの新しい観客を育てなかったことで、あとからホディブローのように効いてくるかもしれない。

「本当にいいものを見たいというシニアの方々の需要は増えています。そういったお客さんのために1等席をふやしました。一方で若い方など、歌舞伎をちょっと見てみたいというニーズに応じて、幕見の席のスペースを広げました」

高い席と安い席を増やしたことは、中間の料金帯が減ったということで、3階席の減り幅が大きかったように思うがどうだろうか。オフィスビルの収益にも言及していて、ちょっと楽観ししすぎでは?と心配になる。さすがに松竹というべきかもしれないが…。

「工事を始めた時期は資材価格が安くて幸運でした、テナントも7割の入居が決まり、今後収益の支えになるでしょう」

松竹の13年2月期の連結決算は売上高が前の期比9.8%増の830億5000万円、最終損益は1億4000万円の黒字(前の期は34億3700万円の赤字)
襲名披露興行が相次いだ歌舞伎が好調なうえ、東日本大震災の影響を受けた松竹運営のシネコンも客足が戻りつつあるという。

14年2月期は新しい歌舞伎座の稼動により動員数の伸びや不動産事業の収益拡大が期待できるため、業績はさらに上向きという予想がある一方、ヒットに恵まれない映像関連事業には課題が大きく、効率の高い収支体質づくりが不可欠だという。頼みの綱の作品が『ひまわりと子犬の7日間』というのもなんだかなあ。予告編はよさそうだけれど…。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。