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こうもり  新国立劇場 [オペラ]

当初予定されていたキャストのうち、ロザリンデ役だったイルディコ・ライモンディに代わってアンナ・ガブラーに変更。さらに直前になって夫婦であるオルロフスキー公爵役のアグネス・バルツァ、フランク役のギュンター・ミュンセントハルトが揃って来日しなくなった。特に二人は「ジ・アトレ」で来日の意向を語っていただけに残念である。もうアグネス・バルツァも自身のキャリアの最後であるだけに、今後日本で聴くこともないだろう。迂闊なことに、劇場に着くまで彼女の来日中止を知らなかったのでショックは大きかった。

パンフレットを開くと表紙裏の広告は、スポンサーのTBSのもので「42年間ありがとうございました  水戸黄門最終回スペシャル」の全面広告で赤地に金の葵の紋入り。12月19日よる7時からの放送らしい。平日の夜公演の初日。高齢者の姿が目立ち「水戸黄門」の視聴者層と重なるということならば、視聴率のアップに幾ばくかの貢献するのかもしれない。約1800席と東京でオペラを上演する劇場としては最も小さな劇場のはずなのに、S席とA席には少なからず空席があったようである。建設時には、やれ1600席だ2500席だと大騒ぎだったのだが、今となっては安い席がもう少しあったほうがオペラの普及に役立ったのかもしれない。

さてダン・エッティンガーの指揮だが、初日は並々ならぬ意欲を感じる序曲で、疾走間感があり、なかなか良いのではないか?と感じたのだが、段々に失速ぎみになり、さらに第一幕は混乱の極みに。揃わない、バランスが悪くて妙なところで金管が強調されて歌手の声が聴こえなかったり、歌詞が落ちそうになってしまったり。なんとか最後まで辿り着いたという感じ。

続けて上演される第ニ幕と第三幕だが、肝心の変装したロザリンデの登場のあたりから音楽が弾まなくなって極めて退屈な音楽になってしまった。このオペレッタの登場人物の頭の中にはSEXしかないようなものだが、それを甘さで包んで下品にならないように上演しなければならないが、艶やかさが音楽に全く感じられなくて楽しめなかった。毎回感動させられる第二幕の幕切れの合唱も盛り上がりに欠けていて期待外れだった。

ハインツ・ツェドニックの演出は、ウィーンの世紀末を意識した美術と衣裳を意識したもので、クリムトやシーレ風なのが面白いのだが、少々奇天烈なものもあって苦笑。外国人からすれば、日本人の燕尾服やイブニングドレス姿の方が奇妙なのだろうから、彼らにとっては自然なのかもしれない。思い切って女性は全員着物、芸者も登場させるなどというのも案外良かったような気がする。

日本趣味があったからなのか第一幕では、重箱に日本酒?の食事が出てきたりして小技が効いていた。もっとも第一幕の設定は、リゾート地の屋外で、照明は夏を感じさせるのだが、第三幕こそ「大晦日」のギャグは省略されてはいたものの、ストーブのギャグはあってので少々混乱。舞台の奥行いっぱいにオルロフスキー公爵の舞踏会が繰り広げられて、第三幕では刑務所が紗幕になっていて消えてしまうというのも、絵面としては面白いのだが、アイゼンシュタインがどこへ行くのか判らなくなってしまって判断に迷った。

適度な日本語の台詞が登場する。アデーレとイーダの台詞が突如として日本語になったり、日本人以外のキャストが日本語を交えたりと悪くはないが、肝心の歌唱でほとんど満足させてくれる歌手がいなかったので素直に喜べなかった。天使にとってアイゼンシュタインのイメージとしては、恰幅のよいハンサムで恋の手練手管にたけた中年紳士というもので、かつてのフォルクスオーパーのペーター・ミニッヒとか、ウィーン国立劇場の来日公演で演じたヘルマン・プライなのだが、アドリアン・エレートは存在感が希薄でがっかり。第三幕で変装したブリントが一番似合っていたかも。

このオペレッタの影の主役とも言うべき存在はアデーレなのだと思うが、橋本明希は一生懸命なのはわかるが、これまた歌による存在感が希薄なので楽しめなかった。急な代役で気の毒なのだが、オルロフスキー公爵のエドナ・ブロホニックは、ちょっと太めのマイケル・ジャクソンのような妖しい雰囲気があって悪くないが、肝心の歌に妖しさが皆無でむしろ不安定。満足させてくれたのは、フランクのルッペルト・ベルクマンやフロッシュのフランツ・スラーダのベテラン勢で、やはりこうした世代が活躍してくれると舞台が弾むようである。



指揮   ダン・エッティンガー
演出   ハインツ・ツェドニック
美術・衣裳  オラフ・ツォンベック
振付   マリア・ルイーズ・ヤスカ
照明   立田雄士

アイゼンシュタイン   アドリアン・エレート
ロザリンデ   アンナ・ガブラー
フランク   ルッペルト・ベルクマン
オルロフスキー公爵   エドナ・ブロホニック
アルフレード   大槻孝志   
ファルケ博士   ペーター・エーデルマン
アデーレ   橋本明希
ブリント博士   大久保光哉
フロッシュ   フランツ・スラーダ
イーダ   平井香織

合唱  新国立劇場
バレエ  東京シティ・バレエ団
管弦楽  東京フィルハーモニー交響楽団
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