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はだかの王様 劇団四季自由劇場 [ミュージカル]

 初演は演出:浅利慶太、作曲:いずみたく、装置:金森馨、照明:吉井澄雄、台本:寺山修司で日生劇場で上演された。生の舞台やフィルムになったもので全国の多くの子供達が観ている。その第一世代の孫の世代が劇場に来ているに違いない。それも自由劇場という緊密な劇空間で芝居を楽しむことのできる子供達は幸福である。

 さすがに時代とともに音楽はアップテンポのものに変化し、1983年の寺山修司の没後は大幅に台本に手が入れられたもようで、上演時間も短くなったと思われる。そう感じたのは、アンデルセンの原作を寺山流に料理したハズなのに、全く毒気がぬかれ中途半端な人物造型が目立ったからである。営業的に15分の休憩を入れて2時間15分で収めなければならないのは理解できるが、例をあげるならば王女サテンと恋人デニムの身分違いの恋が全然描けていないことである。どうして出会ったのか全く説明もなく不自然に結ばれるのは解せない。

 菅本烈子が三役で演じる眼鏡屋ピンタックの登場も唐突である上に物語の中では完全に浮いている存在である。舞台転換のための時間つなぎとはいえ、不自然さは否めない。外務大臣モモヒキや内務大臣ステテコが見えない衣裳を見えるという精神的な葛藤が少ないのも問題である。

 さらに舞台の進行役で、いささか世間を斜めに見ているようなアップリケとホックの存在ももっとふくらますことができたのではないだろうか。時間の拘束があっても、そこを埋めていくのが演出家の腕なのだろうと思うが徹底していないようである。観客と一緒に歌って幕を上げ、幕を下げる演出も相変わらずで、クライマックスで王様一派が客席に降りてきて観客が歌を歌って王様を糾弾?するのもお馴染みである。どちらも楽しいもので、童心に帰って歌を歌ってしまう。実はこれが一番したかったことである。

 子供のためのミュージカルということで2軍とまでは言わないが、劇団の看板役者の登場はない。それでも何とか楽しめたのは、やはり作品の良さということになるのだろうか。やはり問題なのは出演者で、地味な顔ぶれが揃ってしまい満足できない。

 まずお針子に扮した女性ダンサー達である。バレエ風の振付があり、ポワントではなくバレエシューズで踊るのだが、技術水準、スタイルともに同じ日に観た東京バレエ団のダンサーよりも数段劣る。しかもこの振付によって何かを伝えようという意思が感じられないのである。教えられた振付通りに間違わずに踊るというレベルに止まっているのである。しかも、正確に踊っているならまだしも、センターのダンサーはともかく、経験の少ない?サイドで踊るダンサーには著しく技術が劣っているのが素人目にも判るのである。

 そうした中で魅力的だったのは、岡本隆生の王様で為政者としては問題行動が多いが、実は心の優しい人物として描かれていて(実務的には無能に等しいということだが)赤い六尺姿と綺麗でないお尻とちょっとだけ出たお腹が痛々しい以外は観客の小さな人気を集めていたようである。ただ「王様が何にも着ていない」のを告発するためとはいえ、王様を指さすというアクションを観客に求めるというのはいかがなものだろうか。他人様を指さすなんて悪いことと教えられてきた古い世代の人間には絶えられない行為であった。

『はだかの王様』 (自由劇場)

スタッフ
構成・演出:浅利慶太
台本:寺山修司.
作曲:三木たかし
    いずみたく
    宮川彬良
振付:謝 珠栄
   篠井世津子
照明:紫藤正樹
装置:デザイン高橋知子
衣裳:デザイン劇団四季美術部
音楽進行:鎮守めぐみ

キャスト
アップリケ : 江上健二
ホック : 白澤友理
王様 : 岡本隆生
王妃パジャママ/デザイナーフリルフリル/
眼鏡屋ピンタック : 菅本烈子
王女サテン : 小川美緒
王女の恋人デニム : 玉城 任
外務大臣モモヒキ : 神保幸由
内務大臣ステテコ : 深見正博
運動大臣アロハ : 丹下博喜
ペテン師スリップ : 服部ゆう
ペテン師スリッパ : 味方隆司
衣装大臣チェック : 倉斗絢子


【男性アンサンブル】
福島武臣
坂本 剛
嶋野達也
片山怜也
前田員範
石毛翔弥
本間裕司

【女性アンサンブル】
大槻純子
小林由希子
藤岡あや
高橋えみ
松尾美惠子
林 初実
荒木 舞
高橋佳織
脇野綾弓
森田真代
タグ:劇団四季
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