SSブログ

大江戸りびんぐでっど  ネタバレ大会!其の弐 [歌舞伎]2009-12-20 [歌舞伎アーカイブス]

 たぶん、この場面に作者は一番力を入れて演出したのではないかと思う。近頃、怪談を上演すると必ず劇場内が爆笑に包まれるのだが、今回はゾンビの初登場場面で場内が悲鳴というか驚きの声が上がった。ここは成功だったし効果的。ここだけは誉めてあげたい。それだけというのが辛いが…。

 問題なのはそれ以降である。歌舞伎の語法といえば、どんなに陰惨な殺人場面でも洗練があることである。生理的に生々しい場面は御法度である。それは男女の性愛についても同様。そのものズバリの表現は絶対になしである。そして今回のゾンビ達の造型は、いくらなんでも凝りすぎである。役者魂が高じて勘太郎のように、ゾンビになってから、金色?のコンタクトレンズを入れてゾンビになりきるくらいならいいのだけれど…。

 映画のゾンビものなら観ないという選択肢もあるが、舞台は観るまでは何がでてくるか判らないのである。ゾンビファン?である亀蔵の与兵衛の頭部は脳みそが露出。ある者は目玉が時計の振り子のようにブランブラン。アゴが溶けていたり…。ゾンビと「マイケル・ジャクソンのスリラー」は違うというかもしれないが、映画「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」に登場したモンスター達には自己規制があって、洗練があった。だからダンスも美しい。それを完全にパクッた今回の「大江戸りびんぐでっど音頭」やら「はけん節」はゲテ物以外の何ものでもない。

 ある場面では、ゾンビの額を金槌で打ち、血がドクドク。もう生理的に血が嫌いな天使には受け入れがたい。別の場面では赤い布を使っていたりするのに、何故ここだけ?後の場面では内臓もでてくるし…。生理用品やトイレ洗剤のテレビCMでは、当たり前のようにそのものズバリをださずに、食事時でも視聴可能なように洗練があり、配慮がある。今回のゾンビの造型は生理用品やトイレ洗剤以下だった。

 さらにゾンビ達の演技も問題である。あまりに身体障害者や精神薄弱者への配慮を欠いていて不愉快な思いを何度もさせられた。これが普通にスルー出来る人の精神構造って、どこかのブログ市長と変わらない。

一場 品川の遊郭「相模屋」

主な配役

剣客四十郎…三津五郎
女郎 お染…扇雀
大工の辰…勘太郎
与兵衛…亀蔵
佐平次…井之上隆志
遣手 お菊…萬次郎
女郎 喜瀬川…福助

 二入がくさや汁をもって花道へいく前場から続いて舞台転換。基本的には花道で演技している間に場面が変わっていくという形式が続く。品川の遊郭「相模屋」の賑やかな場面の描写があって、勘太郎の扮する大工の辰のいる部屋に変わる。4年に一度の廓遊びということで張り切っているらしく、左手だけの腕立て伏せ状態で、自分の尻を打っているという、好感度?がどんどん下がっていく珍妙な演技。

 そこへ元カクスコの井之上隆志が演じる佐平次が登場。次々に相方を変える辰との会話。
「どうも決め手にかけるんだよね」
「チェンジ。チェンジで丑みつどき」

「お染(扇雀)はおふくろと同い年」 ←野崎村を上演しているときに何故お染?

佐平次「めんどくせいな、あんた」
辰 こけしを手にして「うぃ~ん」
佐平次「好感度さがったし」

 早くしないとらくだ衆がでてくりぞと辰を脅す?佐平次。らくだ衆の説明で辰の恐怖を盛り上げる。背後の障子にシルエット。歌舞伎ではお馴染み?の場面で、お染がネコをくわえてでてくる。お染は屈伸運動?

お染「チェンジですね」

 辰はらくだ衆の恐怖でお染で妥協するが、もちろん、これはお染と佐平次との計略であることが判明。
ここからはお染と辰の濡れ場?なのだが、あまりにナマナマしい騎乗位の体位を披露。扇雀の女形生命が危ぶまれるほど下品すぎ…。夜の部の「引窓」では女房お早を演じているのだが、前身が遊女だったという設定なので、どうしても、この痴態が浮かんでしまって困ったくらい。

「あっは~ん」
「熱いわ」
「年増をなめんなよ。年増の性欲なめんなよ」などと絶叫。

 そこへうめき声。背後の障子にゾンビ達の手が一斉に出て場内に悲鳴が…。ソンビ登場し、逃げまどう辰とお染、舞台が回って「相模屋」の玄関へ。そこで踊られる「大江戸りびんぐでっど音頭」なる総踊り。スピーカーよりショボイ音で流れ、振付も盆踊り並みのゆるさで脱力。

 そこへ福助の喜瀬川が登場。お染がらくだ衆=ゾンビに捕まり噛みつかれ、お染自身もらくだ衆になってしまう。らくだ衆は生きた人間を食らい、喰われた人間はらくだ衆になるというのが説明される。御札がらくだ衆の額に張られるが、らくだ衆はそれを食べてしまう。そこへ橘太郎が扮する陰陽師が登場。祈祷めいたことをするが、全く効かずにらくだ衆の一人に指を舐められて、あっという間にらくだ衆に。さらに何故か歌舞伎の押し戻しの扮装をした歌舞伎役者が青竹を持って花道から登場。これもアッという間にらくだ衆に捕まって、こちらは手足がバラバラにされてしまう。

 「先生」と呼ばれて三津五郎扮する剣客四十郎が登場。
「とぅーす!」(原典はオードリーの春日?)

ここで喜瀬川を意識して都々逸「三千世界の鴉を殺し 主と添寝がしてみたい」を披露。
四十郎は首をずっと傾げているが、この角度が一番いいとかなんとか。

らくだ衆を全員あっという間に切り捨てるが再び起きあがるらくだ衆たち。
そのくり返し。
「先生、今日はちょっと疲れているから」と弱気な発言。
起き始めたらくだ衆がふり返るとガバッと死んだふりをする。出来の悪いコントみたい。
結局、四十郎もゾンビに仲間入りで片腕をもがれる。
「丹下左膳みたい。腕が違うけどね」といったような台詞があり。

生きる屍は、金槌で眉間を打つしばらくは大人しくなるのが判明して、次の南町奉行所の場面へ。
(つづく) 

2009-12-20 09:33

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。