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歌舞伎座のCSとCD [エッセイ]2009-12-17 [エッセイ アーカイブス]

 今時の企業で、CS(顧客満足)を推進していないところを探すのは難しい。企業が全社的にカスタマーサービスに力を入れるのは、もはや当たり前である。最近はCS(顧客満足)よりもCD(顧客感動:Customer Delight)だと言う人もいる。その企業活動を通して、顧客に喜びや感動を得られたとしたら、素晴らしいことである。

 企業経営だけではなく、舞台芸術にもCD(顧客感動:Customer Delight)が最も大切なのではないかと思えるようになってきた。舞台を通じて観客に生きる喜びや感動を届けられないとしたら、その劇団なり、劇場は存在価値を失うのではないか。

 歌舞伎に新作が必要というのは当然のことである。しかしながら、松竹は歌舞伎が書ける作者の育成をしてこなかった。とても手間がかかるからである。「書く場がない=生活できない」としたら、優秀な才能は歌舞伎には集らない。そこで手っ取り早く、現代演劇の旗手と呼ばれる人気作家へ気軽に歌舞伎の新作を委嘱する。劇作や演出の才能はあっても、歌舞伎の劇作法を知らない素人同然のニワカ歌舞伎作家に歌舞伎の観客を満足させ、さらに喜びや感動を与えられる作品が簡単に生み出せるはずがない。かくして汚物のような未熟な舞台が量産されることとなった。その多くが勘三郎がらみというのも興味深いことではある。芸能界のお友達?に歌舞伎座へ登場の機会を与えて、恩を売っている?あるいは、いい気持ちになっているだけなのかもしれない。

 やはり自分の土俵ではなく、歌舞伎の世界の決まりごとにのとって、それでもなお、長年の歌舞伎の観客を唸らせるような作品が書かれることが一番望ましい。劇作家の人気で集る一過性の客で興行的に成功であっても、彼らは歌舞伎の観客として定着は絶対にしてくれない。どちらを大切にするべきか、答えはもう出ているはずである。

 宮藤官九郎の小部屋の中の引き出しの三段目の日記帖

2009-12-17 22:14
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