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劇場の天使 蕎麦を33年ぶりに手打ちする [エッセイ]2009-12-16 [エッセイ アーカイブス]

 歌舞伎座の正面玄関の左側、昭和通りの方向に「歌舞伎座そば」がある。その存在は、もちろん知っていたのだが、歌舞伎座には、いつも二人で行っていたので、入る機会がなかったのである。それがパートナーを失い、独りで歌舞伎座に出かけるのが習慣になったある日、同年代の女性がチケットを券売機で買っているのを見て、なんとなく天使も続けてチケットを買ってしまって、女性の後に続いた。こうした蕎麦屋に独りで入るのは、なかなか勇気がいる。

 何を食べればいいのか判らないので、値段だけで当てずっぽうでボタンを押した。出てきたのは「大盛りかき揚げ」だった。「大盛」の文字にしまったと思ったが、買ってしまったのは仕方がない。とにかく中に入ると、けっこう混んでいて、逆Lの字型のカウンターはお客でいっぱい。席が空くのを壁側の椅子に座って待つのがルールのようだった。

 空いた席に、待っているお客が次々に座っていくシステムである。天使の順番が来て、椅子に腰掛けチケットを渡す。カウンターの中には、サービス担当中年女性と蕎麦の調理担当の男性がいる。時間帯によって増減があるようだが、あまり通いつめているのではない天使は、よく知らない。

 立ち食い蕎麦なんかとは違って、ぐらぐらと煮立った釜の中に生蕎麦を入れ、煮立たせる。2分ほど茹でて、水で洗い?冷水?で締めるという本格的な工程だった。大きな丸いざるに盛られた蕎麦は、注文のたびに小さなざるに盛られたり、かけ蕎麦になっていく。丸い自家製の揚げたて?のかき揚げは、ちぎられて蕎麦の上に乗せられて供される。

 サービスを担当する女性は、注文が入るとサッとそばつゆやネギをだし、食べ終わる頃には蕎麦湯をさりげなく用意してくれる。お手ごろ価格なのに美味しい。何しろ小さな店なので、じっくりゆっくり食べられないのが難点といえば難点なのと、基本的に土・日にしか歌舞伎座にでかけないので、なかなか食べる機会がないのが残念である。
 
 さて天使の生まれた富士山麓の村では、慶弔を問わずに蕎麦を食べる習慣がある。天使は子供の頃から手打ち蕎麦を作っていた。18歳で進学のために上京してからは、打つ機会がなくなってしまったが、今日は33年ぶりに蕎麦を手打ちしてみた。案外作り方を忘れていないし、ちょっと固めだったし、なかなか細くきれなかったが、試食してみるとなかなかいけるではないか。今年の大晦日は、再び手打ちで年越し蕎麦をつくるかもしれない。

2009-12-16 23:52
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