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「熱狂の日」音楽祭2008 126/2008年5月2日(金)22:00~23:40 ホールBショーバー [演奏会]2008-05-04 [演奏会 アーカイブス]

マーラー/シェーンベルク/リーン:大地の歌(室内オーケストラ版)ウィーン世紀末に活躍したマーラーの巨大な声楽作品を、フランスの気鋭オケが編曲版で

イザベル・ドリュエ(メゾ・ソプラノ)
パスカル・ブルジョワ(テノール)
レ・シエルク
フワンソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)

 同僚との最後の別れは、ホロホロと名無駄を流し続けた。残された妻子、年老いた母親、突然の死を受け入れねばならなかった彼の無念さを思えば、語るべき言葉がない。

 行きつけのバーへ寄ってからコンサートへ出かける。こんな日こそ、22時30分から始まる演奏会がありがたい。それが「大地の歌」ならば、なおさらである。夜遅く大編成のオーケストラでこの曲を聴くのは辛い。シェーンベルク編曲の室内オークストラ版という珍しいもの。その珍しさゆえに、狙いを定めチケットを買い求め足を運んだのだが、最終曲「告別」をどのような想いで聴くことになるのか、楽しみでもあり、怖くもあった。

 「ショーバー」と名づけられた会場となったホールB7へは、エスカレーターを乗り継いでたどり着く。黒一色の会場で、装飾を削ぎ落としたホテルの大宴会場といった感じ。普段は会議等の催事に使われているらしい。そこに会場全体が音響反射板となるように白い板囲いを張り巡らしていた。舞台上部には上手から下手へ向かって三枚の長方形のパネルが吊り下げられている。左右の白い壁には、毎度お馴染みのラ・フォル・ジュルネのロゴなどが投影されていて、まずまずの雰囲気・

 板囲いの向こうでは、オーケストラが盛んに音を出していた。ステージの間口は広いが、室内楽やピアノ向けの残響が短めの空間のようである。

 楽員が登場。室内オーケストラ版とは聞いていたが、予想外に少ない楽員で驚く。この編成で、どうやってマーラーの「大地の歌」を演奏するのだろうか。

ヴァイオリン×2、ビオラ×1、チェロ×1、コントラバス×1、ホルン×1、ファゴット×1、クラリネット&バセットホルン、オーボエ×2、フルート&ピッコロ×1、アコーディオン×1、ピアノ×1,パーカッション&チェレスタ×2という正に室内楽の最小限の編成で、しかもピアノとアコーディオンとは?オリジナルにはハルモニウムも加わっているらしいが、現行版は1983年にライナー・リーンが補筆完成させたものだという。

 メゾ・ソプラノが上手、テノールが下手にそれぞれ譜面台を前に立って歌う。いずれも有名な歌手ではないが、楽員も含めてなかなかの名手揃いで、音の厚みはないものの確かにマーラーの音楽が流れた。それも音楽の装飾をとことん削ぎ落とし、その骨格を露わにするような演奏で、奏者にも聴衆にも極度の緊張感を強いるような場面に何度も遭遇し、とってもスリリングな演奏で面白すぎる。

 特に最終曲の「告別」は、今まで聴いたどの「大地の歌」よりも本質に迫り、身近に感じられて圧倒的な名演奏であった。何か大きなもの、高貴なものに近づこうとするかのようで、演奏者の情熱が、聴衆をその高みに連れて行ったように思えた。演奏が終わってからの長い静寂は、誠に清らかな瞬間であったと思う。指揮者がスピーチして室内楽版の「冬の旅」の宣伝?をしてお開き。1時間以上の演奏だったにもかかわらず、アッという間に時が流れていったようだった。亡き友を送りし夜に…。

Du,mein Freund, Mir war auf dieser Walt das Gluck nicht hold!

友よ、
現世は我に幸を恵まざりき!

2008-05-04 08:13
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