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ラ・トラヴィアータ(椿姫)  東京二期会オペラ劇場 [オペラ]2009-02-14 [オペラ アーカイブス]

オペラ全3幕 字幕付原語(イタリア語)上演
台本:フランチェスコ・マリーア・ピアーヴェ
作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ

会場: 東京文化会館大ホール
公演日: 2009年2月14日(土)14:00

指揮: アントネッロ・アッレマンディ
演出: 宮本亜門

装置: 松井るみ
衣裳: 朝月真次郎
照明: 沢田祐二
振付: 上島雪夫
演出助手: 澤田康子、眞鍋卓嗣

舞台監督: 大仁田雅彦
公演監督: 近藤政伸

ヴィオレッタ・ヴァレリー 澤畑恵美
アルフレード 樋口達哉
ジェルモン 小森輝彦
フローラ 小林由佳
ガストン子爵 小原啓楼
ドゥフォール男爵 鹿又 透
ドビニー侯爵 村林徹也
医師グランヴィル 鹿野由之
アンニーナ 与田朝子
ジュゼッペ 飯田康弘
仲介人 金  努

合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団


今回の演出を担当した宮本亜門は、天使の一つ違いの兄にソックリというか瓜二つ。だから天使も亜門に似ているところがあるかもしれない。ということで、親近感を抱いている演出家ではある。ついでに父は、NBSの佐々木忠次氏に似ている。

 それでは、今回あえて「椿姫」ではなく、「ラ・トラヴィアータ」と題されたオペラが面白かったかというと話は別である。わざわざ「椿姫」という絶妙な日本語訳の題名があるのに、最近のアメリカ映画のように原題を用いるというのは何故なのだろうか?成功ならともかくも、これだけ手痛い失敗作ともなると、その真意が計りがたい。今どき大時代がかった演出もどうかと思うが、見た目は新しくても、なんとも薄手な中身のない芝居をみせられるは辛かった。

 それでも歌手が良ければ救いはあるが、舞台の傾斜に気をとられて気が緩んだか、なんとも情けない歌唱を披露する歌手ばかりで残念だった。ヴィオレッタの澤畑恵美は、さすがに年季の入った存在感のある歌唱と演技ではあったが、途中から妙な響きの声を出すようになってしまって好調とは言い難かった。対するアルフレードの 樋口達哉も高音が苦しげで十全ではない歌唱でがっかりさせられた。いやしくもオペラの定番中の定番「椿姫」である。二期会の看板歌手がこの程度とは情けない。アントネッロ・アッレマンディ の指揮する東フィルも、時々信じられないようなバランスで音を発して驚かされた。演出ともども、何とも雑な印象しか残らなかったのは残念である。

 最悪だったの宮本亜門の演出である。黒白の市松格子のような歪んだ壁に囲まれた傾斜した舞台。舞台面から嵩上げして、下手から上手へ登っていく感じである。観る者を不安にさせ、ヴィオレッタの置かれている世界の状況を表現したい意図は判らないでもないが、別に平面だったとしても影響はなかったかも。それでなくても暗くて美しくない舞台で気が滅入る上に合唱団は何故か黒塗り。日本ならともかく、黒人が普通にいる国では差別的に受け取られかねない危うさで不愉快。没個性な集団として描きたかったのだろうが、そんな小細工をしなくても観客にその意図を伝えるのが演出家の腕なのだと思うのだが・・・。

 さらに意味不明なのは、第2幕に登場した刺青を身体に入れた東洋系?の怪しいダンサー達?四半世紀近く前、劇団四季の「ウエストサイド物語」に出演していた上島雪夫の振付だが、傾斜舞台の狭いスペースで珍妙な格好で踊らされるダンサー達が可哀想だった。装置は簡素な上に、小道具はテーブル兼ベッドの他には椅子というような感じなのだが、その椅子ときたら、東京文化会館の備品?なのか、オーケストラピットの楽員が座っているのと同じ椅子という手抜きぶり。

 衣裳や宝飾品なども、まともかと思ったら、第2幕でヴィオレッタの衣裳のスカートが外れ、足が露わになるなど、神田うのか、香里奈あたりのタレントがデザインした婚礼用のドレスみたいで安っぽく、無国籍な上に、時代考証がゼロに等しい品物。男性の衣裳も、革風の上着に、花模様?のプリントされたベストを着ているといった塩梅で、演出とは統一感があるようなないような微妙なテイストだった。

 登場人物の描き方にも大いに問題ありだったと思う。強烈なマザコンのアルフレードで、ジェルモンには殴られ、ヴィオレッタには未練タップリに縋り付くような弱々しい役作り。どうしてヴィオレッタが彼に対して「愛している」などという言葉を発せられるのかと思うほど情けない奴に描かれていた。こんな男に惚れてしまうヴィオレッタが馬鹿にみえてきた。さらにジェルモンは、何事も金で解決しようというような嫌らしい人間に描かれていて、ヴオレッタが、こんな馬鹿な親子のために身を引く意味が理解できなかった。

 演出も音楽も完成度は著しく低いのに、二期会のぬるま湯体質なのか、ブラヴォーが盛んに飛び交っていたのには呆れた。演出で感心したのは、第2幕を続けて演奏したことで、一瞬に場面転換をしたこと。ただし、「椿姫」を熟知している観客向けともいるもので、第3幕は第2幕の幕切れと同じポーズで並んでいる人々の真ん中にヴィオレッタが倒れている設定で効果的ともえいるが、単なる思いつきの域を脱していないようにも思えた。このオペラを何度も観ているような観客でないと何がなんだか判らないかもしれない。そうした玄人好みの演出をするのは10年早いかもしれない。

2009-02-14 23:52
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