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ニューヨーク・シティ・バレエ2009 プログラムC オーチャードホール [バレエ]2009-10-13 [バレエ アーカイブス]

 Aプログラムがバランシンとロビンスの作品集。Bプロが日本初演2作品を含めたコンチェルト曲ばかりを使った4作品。Cプロがバランシンとロビンスに加え、現在の常任振付家ウィールドンの作品などNYCBの歴史を一気に辿ることができる内容ということなのでCプログラムを選択したのに、主役の怪我でウィールドンの「アフター・ザ・レイン(パ・ド・ドゥ)」はBプロでも上演されたバランシンの「タランテラ」に変更になってしまった。最もバランシン作品としては異色?の個人技重視の「タランテラ」が一番楽しめたので結果としては良かったのかも。

 20年以上前、パリ・オペラ座で初めてバレエを観た年にニューヨークにもでかけ、ニューヨーク州立劇場でニューヨーク・シティ・バレエ団の公演を観た。もちろんバランシンの作品集で「フォー・テンペラメント」を観た記憶がある。場内は超満員で、いまだにバランシン作品が多くのニューヨーカーに愛されているのを実感したのを思い出す。見事に客席は白人ばかりで、多の人種はまったくみかけなかった。後に同じ会場で、ハーレム・ダンス・シアターの「欲望という名の電車」を観たときは客席は黒人ばかりだったのと対象的だった。どちらも東洋人は天使だけだったような…。

 だからディアギレフの流れを組む20世紀を代表する振付家のバランシンの作品を正統的に上演する団体という認識。全幕物はクリスマスシーズンに上演する「くるみ割り人形」だけというイメージがあり、民間のパトロンに支えられているので、とっても保守的な演目を上演するような印象がある。良くも悪くも20世紀のテイストの漂うバレエ団だと思う。とにかくバレリーナの不揃いで美しくない体型と男性ダンサーの七三?に分けられたヘアスタイルが今どきコレか?ととっても珍しく思えた。

 たとえば同じ振付家の作品を主に上演する団体でも、ベジャールのバレエ団のダンサーにあるような妖しげね魅力は皆無。ニューヨーク本拠がありながら同性愛の雰囲気はなく、とっても健康的。ベジャールがストーリー重視で、バランシンやロビンスが音楽をダンスで表現しストーリーがないのと対象的である。ベジャールがニューヨークで受け入れられないのも理解できるような気がした。

 連休中とはいいながら日曜のソワレでCプロということもあり満員とはいかなかったようだ。キョードー東京と普段はブロードウエイ・ミュージカルを招聘している会社が仕切っているというのも象徴的で、ブロードウエイの延長線上にあり、ABTの本拠地であるMETのあるリンカーンセンターで上演しているというのも万人に受け、芸術的でなければならないという宿命を感じさせる。それだけにバランシンやロビンス以外の作品も観てみたかったのであるが、それが叶わなかったのは残念だった。

「ワルプリギスの夜」はグノーの「ファウスト」の音楽に振付られているのだが音楽とバレエは直接関係がなく、何もない簡素な舞台でプロポーションの悪いコールド・バレエに驚きながら観た。主役の女性ダンサーは転びそうになるし、あまり面白さは感じなかった。バランシンらしい作品ではあるけれど、どこかに美点や長所をみつけるまでには至らなかった。

 バランシンンには珍しく、超絶技巧を持ったダンサーが縦横無尽に踊りまくる「タランテラ」は大いに楽しめた。とにかく主役のダニエル・ウルブリフトの人間業とは思えない高速回転や跳躍の見事さは素晴らしかった。短いけれど印象深く楽しい作品。絶対踊るのが大変なハズなのに涼しい顔で踊るのも凄い。汗をかかないのも芸の内を実感。

 休憩後はロビンスの1時間の大作「ダンス・アット・ギャザリング」である。ショパンのピアノ曲18曲にあわせてペアで、ソロで次々にダンサーが入れ替わりながら踊り継いでいく作品。プリンシパル級のダンサーが総出演という感じなのだが、それぞれのダンサーの技巧と表現力に差があって、楽しめる部分と退屈する部分にくっきりと別れていた。どちらかといえば退屈する部分が多かったような気がする。物語はなく、ひたすら肉体をさらして踊り続けるだけに、ダンサー自身が何を表現したいのかを理解していないと、観客に何かを伝えるのは困難だと思った。

 長髪禁止の高校の優等生が踊るような「シンフォニー・イン・スリー・ムーヴメント」はストラビンスキーの音楽に振り付けたバランシンの作品。気品はあるがあまりに毒がなさすぎて感心しなかった。バレエだからといって時代に背をむけるべきではなく、常に新しい表現を追い求めるべきという立場でみると面白みに欠ける作品である。色気がなさすぎて、バレエを観る重要な楽しみを奪われたような気分でがっかり。物語のないバレエ作品は一歩間違えると、高度な技術が必要なラジオ体操になってしまうが、その典型のような作品。バランシンやロビンス作品など、過去の作品を継承していくだけでは早晩、行き詰まるのは見えてりるのだが…。

 音楽は小柄な女性指揮者であるクロチルド・オトラントが新日本フィルハーモニーを指揮して、単なるバレエの伴奏の域を超えていて秀逸だった。でも、ニューヨークに行ったときに、ニューヨーク・シティ・バレエ団がバランシンの作品を上演していても行かないかも。別の刺激的なパフォーマンスを選択してしまいそうだ。 


プログラムC 10月11日(日)18時 Bunlamuraオーチャードホール

指揮:クロチルド・オトラント
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

ワルプリギスの夜日本初演(振付:バランシン 音楽:グノー)
マリア・コウロスキー、チャールズ・アスカゲート、アナ・ソフィア・シラーほか
バランシンが1975年にパリ・オペラ座で上演されたシャルル・グノー作曲の歌劇「ファウスト」に振付し、1980年にバレエ作品としてNYCBで初演され大絶賛された、きれいで親しみやすい作品。ロシア版は日本でも上演されているが、バランシン振付の作品は日本初演。壮大な音楽と躍動感ある振付がなんとも美しい!

タランテラ (振付:バランシン 音楽:ゴットシャルク ピアノ:ナンシー・マクディル)
タイラー・ペック、ダニエル・ウルブリフト
快活で若々しいダンスが楽しいバランシン振付作品。タンバリンを片手に持ったまま男女のペア踊り続ける超絶技巧に注目したい。バランシンにはめずらしく、ダンサー個人の技量がフィーチャーされている。


休憩20分

ダンシズ・アット・ア・ギャザリング 日本初演(振付:ロビンズ 音楽:ショパン ピアノ:スーザン・ウォルターズ)
イヴォンヌ・ボレ(ピンク)、ミーガン・フェアチャイルド(アプリコット)、サラ・マーンズ(グリーン)、キャサリン・モーガン(ブルー)、ジェニファー・リンガー(藤色)、ジャード・アングル(パープル)、アントニオ・カルメナ(れんが色)、アマール・ラマザール(グリーン)、ベンジャミン・ミルピエ(ウラウン)、ジョナサン・シタンフォード(ブルー)
ロビンズ振付。マズルカ、ワルツをメインにショパンのピアノ作品20曲あまりを使用している。ロビンズにとってダンス作品の代表作とも言える作品で、饒舌で楽しく豊かなステージが繰り広げられる。日本初演。

休憩20分

シンフォニー・イン・スリー・ムーヴメント (振付:バランシン 音楽:ストラヴィンスキー)
スターリン・ヒルテン、ミーガン・ルクローン、アビ・スタフォード
アダム・ヘンドリクソン、エイドリアン・ダンチグ=ワーリング、アマール・ラマザール
バランシン振付。多くのダンサーが舞台に立つが大所帯になっても洗練さは決して失われず、揃った動きの迫力に圧倒される。小粋なセンスが持ち味のNYCBが持つ、正統派というもうひとつの顔で大人数による一糸乱れぬアンサンブルを見せてくれる。

2009-10-13 00:01
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