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第12回世界バレエフェスティバル ガラ・パフォーマンス [バレエ]2009-08-15 [バレエ アーカイブス]

 17時に始まって23時直前に終演となった『第12回世界バレエフェスティバル ガラ・パフォーマンス』の長いカーテンコールを早めに切り上げて東京文化会館の楽屋口の前を通ると、NBSの佐々木忠次氏が車に乗り込むところだった。御御足がご不自由なのか美青年に腕を支えられて移動されていた。素晴らしい公演を我々に贈ってくれた方である。また天使が「劇場の天使」になったのも彼のおかげである。ある意味、大恩人なのである。彼がいなければオペラやバレエを観ることもなかったと思うのである。カルロス・クライバーが最後に指揮した『ばらの騎士』も、ジョルジュ・ドンが最後に踊った世界バレエフェスティバルのガラ公演の『ボレロ』に出会うこともなかったであろう。一言御礼が言いたいし、握手してみたいと心底思った。

 さすがに、それはできなかったけれど、感謝の気持ちはいつまでも消えることがない。佐々木氏は「劇場の天使」の産みの親といえる。30年前、ある場所で佐々木氏を見かけた。もちろん、どこの誰とも知らず、多くの外国人と食卓にいて談笑していた。優秀な商社マンが商談中?とも思ったが、佐々木氏からは今まで感じたことのない強烈なオーラを感じた。彼は一体何者なんだろう?

 1年ほどが経った9月、国立劇場で文楽を観て自宅に戻ろうとしたが電車まで時間があったので上野公園を散歩した。すると文化会館に着飾った人たちがどんどん吸い込まれていっていた。何事だろうか?その人たちについていくと、ミラノスカラ座の「シモン・ボッカネグラ」の公演の日だったのだ。そういえば昨夜は、偶然にNHKホールから生中継されたクライバー指揮の『オテロ』を聴いた。受付をみると1年前強烈な印象を残した紳士がいた。彼はこういう仕事をしていたのか!なんだか嬉しくなったのと、観たこともないオペラへの興味で少々高かったが当日券を買って、オペラを観ることにした。アバド指揮、フレーニ、ギャウロフ、カップチェッリと当時の世界最高の舞台芸術だったから当たり前なのだが、完全にオペラの虜となり、佐々木氏が招聘するバレエを観るようになったのだった。それが、どんなに豊かで幸福な人生になったことだろうか。だから佐々木氏が恩人なのだ。しかも佐々木氏は、天使の実の父親に顔が似ているのである。

 世界バレエフェスティバルは、世界の一流ダンサーが勢揃いして、有名作品のパ・ド・ドウや現代作品を次々に披露していく3年に一度の催しである。Aプロ、Bプロそれぞれ4時間に及ぶ長い公演が各4回。さらに一日限りのガラ公演は、普通のプログラムよりさらに多くの作品が踊られ、本公演の終了後に出演者による歌舞伎でいうところの「天地会」があるのである。そのため人気が高く、抽選でチケットが販売される。公演を観ることができるのは、本当に運の良い人々なのである。

 さて第1部は、グレアム・マーフィーが振付した「白鳥の湖」第1幕よりパ・ド・トロワから始まる。登場人物をダイアナ妃、チャールズ王子に見立てた異色作。三角関係を絶妙の振付でみせて面白い。オーストラリアバレエ団のルシッダ・ダン、レイチェル・ローリンズ、ロバート・カランの三人が緊密な世界を描き出していた。

 ローラン・プティ振付の「カルメン」を踊ったのは英国ロイヤルバレエのタマラ・ロホとフェデリコ・ボネッリのペア。衣裳と振付にプティのテイストが感じられ、少々長い気きもしたが充実した舞台成果を残したように思う。

 ニコラ・ル・リッシュがソロで踊ったのはジェローム・ロビンズ振付の「ダンス組曲」である。バッハの無伴奏組曲によって踊られるのだが、舞台上では遠藤真理がチェロを演奏する。どうしてもチェロが気になってしまって、踊りまでに神経がまわらなくて集中できなかったのが心残りである。バッハの無伴奏組曲は、元々は舞曲なのだそうで、そうした意味でも興味深かったのだが…。

 ハンブルグ・バレエのジョン・ノイマイヤー振付「いにしえの祭り」を踊ったのは同団のエレーヌ・ブシェとティアゴ・ボァディンで、Aプロ、Bプロでも名演を残したが、今回も独特の世界を描き出し印象深かった。

 来春のパリ・オペラ座バレエ団の上演演目でもある「ジゼル」より第2幕のパ・ド・ドゥを踊ったのは、アニエス・ルテステュとジョゼ・マルティネスである。第1部では、唯一の古典作品だがパリ・オペラ座の底力を見せつけられたような感じで、美しさは比類がなく切なさが胸に迫り素晴らしい舞台となった。

 第2部の開幕は、バランシン振付の「ジュエルズ」よりダイヤモンドをディアナ・ヴィシニョーワとウラジーミル・マラーホフが踊った。まさにダンサーは宝石なのだと思った。音楽も、衣裳も、なにもかも美しい世界が広がった。

 モーリス・ベジャール振付の「カンティーク」は、ユダヤの伝承音楽によるもので、ジル・ロマンとエリザベット・ロスによって踊られた。この公演をはじめ数々のベジャール作品に接してきたのだが、もう新しい作品は生まれないのだと思うと胸に迫るものがあった。16日、17日はジル・ロマンが最高傑作の「アダージェット」を踊るが、これが最後かもしれないと思うと楽しみな反面、寂しくもある。

 ポリーナ・セミオノワとフリーデマン・フォーゲル のそれぞれドイツの著名なバレエ団のメンバーが踊ったのは、グゾフスキーの「グラン・パ・クラシック」で、以前はこうした公演でよく踊られていたように思うが久しぶりで懐かしい気がした。ただし、他のペアに比べるとしっくりこなかったように思う。

 ラッセル・マリファント振付の「TWO」は何度も観ているが、そのたびに発見があり新鮮に感じる。ギエム自身の成長もあるし、観客である天使も成長しているのだろうか?光の矢のように照明に照らされた手や足が空間を切り裂くたびに戦慄が走った。本当に凄い物を観てしまった感じである。ギエムには、もっともっと高みを目指して観客を異次元へ誘って欲しい。

 大好きなオレリー・デュポンとマニュエル・ルグリが踊ったのはバランシン振付の「ソナチネ」である。ラヴェルのピアノ曲に合わせて踊られる美しさは比類のないものだった。派手さはないが、こうした演目で観客を満足させるのが、本物のダンサーなのだと思った。

 今回の台風の目、マリア・コチェトコワとダニール・シムキンは「海賊」で場内を再び興奮のルツボにした。かつへ「海賊」といえばフエルナンド・ブフォネスという時代が続いたが、これからはシムキンなのかも。意外に身体が華奢なのと童顔なのに驚く。一体何処にあんなパワーがあったのだろう。カーテンコールは3回(普通は2回)最後はシムキンがジャンプして登場して、客席が大きくどよめいた。

 第3部はブルノンヴィル振付の「ラ・シルフィード」から始まる。ナターリヤ・オシポワとレオニード・サラファーノフのペアで、コチェトコワとシムキンとともに今回の注目株だったのだが、テクニックはともかく、表現力が安定していて、コチェトコワとシムキン組にちょっと差をつけていたかも。

 ノイマイヤー振付のソロ「アルミードの館」よりシャムの踊りは、ティアゴ・ボァディンが民族衣装?で踊った。なかなか印象の薄い彼だったが、最後に実力を知らしめたといったところだろうか。

 ここからはシェイクスピア作品がつづく。ワシーリエフ振付の「マクベス」は、スヴェトラーナ・ザハロワとアンドレイ・ウヴァーロフが踊った。手足が長く舞台映えする人達なのだが、振付や衣裳が今ひとつピンとこなかったので印象が意外にも薄い。

 シオマラ・レイエスとホセ・カレーニョは、マクミラン振付の「ロミオとジュリエット」より "寝室のパ・ド・ドゥ"
である。レイエスのジュリエットが本当に少女のようで、去っていくロミオを見送った演技に泣かされた。実に切なかった。

 クランコ振付の有名な「じゃじゃ馬馴らし」のパ・ド・ドゥである。ハイデとクラガンが玉三郎も出演したMETのガラで踊った「じゃじゃ馬馴らし」の映像は天使の宝物である。何回観たかわからないほど大好きバレエである。二人が心を通い合わす瞬間には思わす涙ぐんでしまった。全幕を久しぶりに観たくなった。来日しないのかなあ。

 第4部はヤーナ・サレンコとズデネク・コンヴァリーナの「パリの炎」である。Bプロのシムキンが素晴らしかったので、比較されて可哀想なのだが、誠実に踊っていたという印象。やはり爆発してくれないと、数々の名舞台が続く中では厳しい。

 マクミラン振付の「三人姉妹」はマリアネラ・ヌニェスとティアゴ・ソアレスの英国ロイヤルバレエ団のペア。演劇の国のバレエだけあって、劇的な盛り上がりがあって素晴らしい。英国という王をいただく国と、かつて王国だったロシアが舞台のチェーホフの作品だけあって、相通じるところがあるのかもなどと想像しながら観た。

 ルグリがソロで踊ったのは「ザ・ピクチャー・オブ」である。冒頭にクジラの鳴き声が流れるが、意外にバレエ似合っているのが面白かった。クラシックの殿堂である東京文化会館にクジラの声が流れるというのも異例なことなのだろうなと思った。今回ステージマナーが一番良かったのはルグリで、幕前で上手、下手、中央と挨拶するのは観客に親切だと思った。

 オレリー・デュポンとローラン・イレールが踊ったのはプロコフィエフの音楽に乗せた「ロミオとジュリエット」で、墓場でジュリエットが亡くなったことを嘆き、自ら命を絶つところと、ジュリエットが蘇生して最愛の人の死を嘆きリストカットして自殺するまでを描いている。プレルジョカージュ振付の本作は、確かリヨン・オペラ座によって日本公演もされて観に行った記憶があるのだが、ドラマの濃密なのはパリ・オペラ座に軍配があがったように思う。

 アシュトン振付の「春の声」は、アリーナ・コジョカルとヨハン・コボーの英国ロイヤルバレエのペア。花吹雪を手のひらから散らす美しさは見物だった。見事なリフトで楽しませてくれた。

 トリは東京バレエ団の上野水香とデヴィッド・マッカテリの「ドン・キホーテ」である。今までの世界フェスティバルでも、数々の名演と興奮を生んだだけに期待されたが、上野にはバランスで絶妙な表現をみせたが、全体的には低調だったように思う。後の演目が凄かったので、細部は忘れてしまったが、オーケストラが少人数で演奏するような編曲?になってるのと、遅めのテンポだったのだけは覚えている。

 次はガラ公演のお楽しみな演目でちょっとびっくりな展開。メイクが濃すぎて?誰が誰やら判らない女装ダンサーたちの活躍もだが、ヴィシニョーワのアルブレヒト、ランケデムはコチェトコワ、オシポワのパリの炎など、女性ダンサーも負けてはいなかった。アイシュヴァルトの青い鳥が踊ろうと思った瞬間に、指揮者のワレリー・オブジャニコフが扮した猟師に撃たれたのが面白かった。

 そして圧巻は「ラ・バヤデール」かの影の王国!背景が上がるとスロープを設置しているスタッフが見えてしまったりして最初から波乱の展開。ジョゼ・マルティネスの驚異的なテクニック、相変わらずノリノリのホセ・カレーニョとか、とにかく大笑いさせられた。もっとも若手中心のパフォーマンスで、本当のスター達は登場しないのが少々残念。昔はハイデなど率先してパフォーマンスを披露したものなのだが…。ギエムやザハロワのおふざけ振りを観てみたい気もした。

 上演時間が約6時間とはワーグナーの楽劇よりも長いのだが、最後まで飽きさせずに舞台に釘付けだったのは、世界の一流ダンサーにより全力投球の舞台だったからにほかならない。3年後にも必ず観に行きたいのだが、休憩時間のトイレの想像を絶する大行列はなんとかならないものだろうか。休憩時間が一気に興ざめになるので困る。入口でオルラーヌのクリームが試供品で配られていてちょっと得?した。

世界バレエフェスティバル [ガラ] 
8月13日(木)17:00開演  会場:東京文化会館

■第1部■ 17:00~18:00

序曲「戴冠式行進曲」 (ジャコモ・マイヤベーア作曲)

「白鳥の湖」第1幕よりパ・ド・トロワ
振付:グレアム・マーフィー/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
ルシンダ・ダン レイチェル・ローリンズ ロバート・カラン

「カルメン」
振付:ローラン・プティ/音楽:ジョルジュ・ビゼー
タマラ・ロホ フェデリコ・ボネッリ

「ダンス組曲」
振付:ジェローム・ロビンズ/音楽:J.S.バッハ
ニコラ・ル・リッシュ

「いにしえの祭り」
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:リヒャルト・シュトラウス
エレーヌ・ブシェ ティアゴ・ボァディン

「ジゼル」より第2幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジャン・コラーリ /ジュール・ペロー/音楽:アドルフ・アダン
アニエス・ルテステュ ジョゼ・マルティネス

<休憩20分>

■第2部■ 18:20~19:35

「ジュエルズ」よりダイヤモンド
振付:ジョージ・バランシン/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
ディアナ・ヴィシニョーワ ウラジーミル・マラーホフ

「カンティーク」
振付:モーリス・ベジャール/音楽:ユダヤの伝承音楽
エリザベット・ロス ジル・ロマン

「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトール・グゾフスキー/音楽:ダニエル・オーベール
ポリーナ・セミオノワ フリーデマン・フォーゲル

「TWO」
振付:ラッセル・マリファント/音楽:アンディ・カウトン
シルヴィ・ギエム

「ソナチネ」
振付:ジョージ・バランシン/音楽:モーリス・ラヴェル
オレリー・デュポン マニュエル・ルグリ

「海賊」
振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリゴ
マリア・コチェトコワ ダニール・シムキン

<休憩15分>

■第3部■ 19:50~20:40

「ラ・シルフィード」
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル/音楽:H.S.レーヴェンスヨルド
ナターリヤ・オシポワ レオニード・サラファーノフ

「アルミードの館」よりシャムの踊り
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:ニコライ・チェレプニン
ティアゴ・ボァディン

「マクベス」  
振付:ウラジーミル・ワシーリエフ/音楽:キリル・モルチャノフ
スヴェトラーナ・ザハロワ アンドレイ・ウヴァーロフ

「ロミオとジュリエット」より "寝室のパ・ド・ドゥ"
振付:ケネス・マクミラン/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
シオマラ・レイエス ホセ・カレーニョ

「じゃじゃ馬馴らし」
振付:ジョン・クランコ/音楽:クルト・ハインツ・シュトルツェ
マリア・アイシュヴァルト フィリップ・バランキエヴィッチ

<休憩15分>

■第4部■ 20:55~21:55

「パリの炎」
振付:ワシリー・ワイノーネン/音楽:ボリス・アサフィエフ
ヤーナ・サレンコ ズデネク・コンヴァリーナ

「三人姉妹」
振付:ケネス・マクミラン/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
マリアネラ・ヌニェス ティアゴ・ソアレス

「ザ・ピクチャー・オブ」
振付:パトリック・ド・バナ/音楽:ヘンリー・パーセル
マニュエル・ルグリ

「ロミオとジュリエット」
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
オレリー・デュポン ローラン・イレール

「春の声」
振付:フレデリック・アシュトン/音楽:ヨハン・シュトラウス
アリーナ・コジョカル ヨハン・コボー

「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス
上野水香 デヴィッド・マッカテリ

指揮:ワレリー・オブジャニコフ 
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団  
ピアノ:高岸浩子
チェロ:遠藤真理

「ジゼル」 ジゼル:マラーホフ、アルブレヒト:ヴィシニョーワ
「海賊」 ランケデム:コチェトコワ、ギュリナーラ:シムキン
「眠り」 フロリナ:サラファーノフ、青い鳥:アイシュヴァルト、狩人:オブジャニコフ(指揮者)
「海賊」 オダリスク:マッカテリ、コンバリーナ、バランキエヴィチ
「パリの炎」 オシポワ
「ラ・バヤデール」影の王国:マルティネス、カレーニョ、ソアレス(ブラジル国旗)、ボアディン、レイエス、フォーゲル、カラン、ボネッリ、セミョーノワ、ブシェ

フィナーレ 「眠れる森の美女」よりアポテオーズ (ピョートル・I.チャイコフスキー作曲)

手拭いまき  全員

2009-08-15 00:04
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