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第12回世界バレエフェスティバル プログラムB  [バレエ]2009-08-09 [バレエ アーカイブス]

プログラムBは、発表されていたものから一部のプログラムが変更になった。ポリーナ・セミオノワとフリーデマン・フォーゲルは、ロナルド・ザコヴィッチ振付の「トランスパレンテ」から同じ振付家の「アレキサンダー大王」へ。アリーナ・コジョカルとヨハン・コボーは、マクミラン振付の「マノン」より“沼地のパ・ド・ドゥ”から同じ「マノン」より第1幕のパ・ド・ドゥへ。これはプログラムにすでに発表されていた。そしてシオマラ・レイエスとホセ・カレーニョは、マクミラン振付の「ロミオとジュリエット」より“バルコニーのパ・ド・ドゥ”から「海賊」より“寝室のパ・ド・ドゥ”という地味な演目に変更になってしまった。理由は不明だが、いずれも内容が充実していたのは何よりだった。

 第1部が新顔のダンサー中心に古典から名作のレパートリーを。第2部がノイマイヤー、フォーサイス、グレアム・マーフィー、マクミラン、マッツ・エック、イリ・キリアンと著名な振付家の作品を集めたプログラム。第3部がプティパの3作品とベジャール、クランコ、アンジェラン・プレルジョカージュの作品という凝ったプログラムであった。

 世界バレエフェスティバルらしい超絶技巧を披露したのは「パリの炎」のコチェトコワとシムキン組と「エスメラルダ」のロホとボネッリ組であった。もっとも「パリの炎」は、第8回に登場したタバレス=デニスとボアダに比べればまだまだといった具合だし、ロホならもっともっとできるような気がしたので、そんなに客席が熱狂するほどには興奮しなかった。

 それではどの作品が最も感動させてくれたかというとAプロに続いてオレリー・デュポンとマニュエル・ルグリが踊ったイリ・キリアンの「ベラ・フィギラ」だった。ルグリが素晴らしいのは当たり前?だが、デュポンの充実には目を見張った。とにかく舞台で次々に繰り出すダンスが美しいのである。現代作品なので様々なポーズというか動きが出てくるのだが、ため息のでるほど美しく二人が輝いて見えたのである。キリアンの作品の美点を余すところなく見せて圧倒的な完成度を示したと思う。

 次に心に残ったのはクランコの名作「オネーギン」より第3幕のパ・ド・ドゥを踊ったアイシュヴァルトとバランキエウィッチのシュツットガルト・バレエ団のペアであり、ベジャールの「ブレルとバルバラ」を踊ったエリザベット・ロスとジル・ロマンのペアであり、ノイマイヤーの「ナイト・アンド・エコー」を踊ったブシェとボァディンのハンブルグ・バレエ団のペアである。それぞれ所属するバレエ団を代表して最も得意とするレパートリー演目なのだから当然といえば当然なのだが、世界バレエフェスティバルらしい目配りのよさで堪能させてくれた。

 第1部はAプロと同じく「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」で始まった。ヌニュスとソアレスのロイヤルバレエ組は、超絶技巧でというよりも丁寧にバランシンの名作をこなしたという印象である。続くサレンコとコンヴァリーナの「コッペリア」はサレンコが素晴らしかった。セミオノワとフォーゲルの「アレキサンダー大王」は黒の衣裳が印象的で近い将来に全幕物になるらしいが、期待できるの作品になるのではないだろうか。「海賊」はカレーニョに見せ場がなく、故障でもしたから演目が変更になったのではないかと心配したくらい短くあっさりと終わってしまって残念だった。上野水香とマッカテリの「白鳥の湖」より“黒鳥のパ・ド・ドゥ”は、次の「パリの炎」にすっかりさらわれてしまって華やかね演目なのに印象が薄かった。

 久しぶりの目にするフォーサイスの「スリンガーランド・パ・ド・ドゥ」は、ルテステュとマルティネスのパリ・オペラ座のペアで衣裳が変わっていたのが、いかにもフォーサイスらしいと思った。オーストラリアバレエ団の三人はダイアナ妃をモデルにした三角関係?を描いた「白鳥の湖」第3幕よりは面白すぎ。全幕で観たかった。「マノン」の第1幕のパ・ド・ドゥはマスネのエレジーに合わせて踊られる。「マノン」のテーマともいわれるもので、沼地のパ・ド・ドゥでも流れるので、その関係性に興味を持つ。天使もチェロでよく弾くのでコジョカルとコボーに親しみがわく。マッツ・エックの「アパルトマン」より“ドア・パ・ド・ドゥ”は、2003年のガラでも踊られていて、その演技力はますます深化したようである。バレエの表現力は無限なのだと思った。

 第3部の「海賊」は期待のサラファーノフよりもオシポワの超絶技巧が凄かった。ヴィニニョーワとマラーホフの「ル・パルク」は派手な振付な部分もあるのに、とっても地味な印象でマラーホフの存在感は希薄だった。最後を飾った「ドン・キホーテ」はザハロワとウヴァーロフで超絶技巧で勝負というよりも抜群な存在感でという感じだった。

第12回世界バレエフェスティバル [プログラムB] 
8月9日(日)15:00開演  会場:東京文化会館

■第1部■ 15:00~16:10

序曲「戴冠式行進曲」 (ジャコモ・マイヤベーア作曲)

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
振付:ジョージ・バランシン/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
マリアネラ・ヌニェス ティアゴ・ソアレス

「コッペリア」
振付:アルテュール・サン=レオン/音楽:レオ・ドリーブ
ヤーナ・サレンコ ズデネク・コンヴァリーナ

「アレクサンダー大王」
振付:ロナルド・ザコヴィッチ/音楽:ハンス・ジマー
ポリーナ・セミオノワ フリーデマン・フォーゲル

「海賊」より "寝室のパ・ド・ドゥ"
振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリゴ
シオマラ・レイエス ホセ・カレーニョ

「白鳥の湖」より "黒鳥のパ・ド・ドゥ"
振付:マリウス・プティパ/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
上野水香 デヴィッド・マッカテリ

「パリの炎」
振付:ワシリー・ワイノーネン/音楽:ボリス・アサフィエフ
マリア・コチェトコワ ダニール・シムキン

<休憩20分>

■第2部■ 16:30~17:35

「ナイト・アンド・エコー」
振付:ジョン・ノイマイヤー音楽:イーゴリ・マルケヴィッチ
エレーヌ・ブシェ ティアゴ・ボァディン

「スリンガーランド・パ・ド・ドゥ」
振付:ウィリアム・フォーサイス/音楽:ギャヴィン・ブライアーズ
アニエス・ルテステュ ジョゼ・マルティネス

「白鳥の湖」第3幕より
振付:グレアム・マーフィー/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
ルシンダ・ダン レイチェル・ローリンズ ロバート・カラン

「マノン」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ
アリーナ・コジョカル ヨハン・コボー

「アパルトマン」より "ドア・パ・ド・ドゥ"
振付:マッツ・エック/音楽:フレッシュ・カルテット
シルヴィ・ギエム ニコラ・ル・リッシュ

「ベラ・フィギュラ」
振付:イリ・キリアン/音楽:アレッサンドロ・マルチェッロ
オレリー・デュポン マニュエル・ルグリ

<休憩15分>

■第3部■ 17:50~19:10

「海賊」
振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリゴ
ナターリヤ・オシポワ レオニード・サラファーノフ

「ル・パルク」
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ/音楽:ヴォルフガング・A.モーツァルト
ディアナ・ヴィシニョーワ ウラジーミル・マラーホフ

「ブレルとバルバラ」  
振付:モーリス・ベジャール/音楽:ジャック・ブレル、バルバラ
エリザベット・ロス ジル・ロマン

「エスメラルダ」
振付:マリウス・プティパ/音楽:チェーザレ・プーニ
タマラ・ロホ フェデリコ・ボネッリ

「オネーギン」より第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
マリア・アイシュヴァルト フィリップ・バランキエヴィッチ

「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ 音楽:レオン・ミンクス
スヴェトラーナ・ザハロワ アンドレイ・ウヴァーロフ

フィナーレ 「眠れる森の美女」よりアポテオーズ (ピョートル・I.チャイコフスキー作曲)

指揮:デヴィッド・ガーフォース
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団  
ピアノ:高岸浩子

2009-08-09 23:02
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