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敵討襤褸錦 2月文楽公演第二部 [文楽]2009-02-17 [文楽アーカイブス]

ベテランから若手までバランスのよい舞台

二月は黒澤明監督没後10年ということで、BSで「七人の侍」「赤ひげ」「用心棒」「生きる」「天国と地獄」を放送していた。作品の最後には、作品の中には、現在では問題となる表現が含まれているが、オリジナルを尊重して、そのまま放送しました。といったような断りの文章が流された。50年前の名作映画でもそうなのである。江戸時代の作品に遠慮会釈などあるはずもない。精神薄弱者、被差別者に対する視点は、現在とは違いすぎて、誠に不愉快な物語である。しかも敵討とはなっているが、結末では敵討の模様は上演されない。

 歌舞伎では、かつて二代目鴈治郎によって上演されたが、暗かったという印象しかない。けっして面白い物語ではないのである。それを面白く見せるのが芸の力なのだが、もっとも感心させられたのは、春藤屋敷出立の段を語った嶋大夫である。愚鈍な助太郎を母親自ら殺し、敵同士になった若い恋人の別れなど、観客の紅涙を絞る要素に事欠かないのだが、過不足なく描き出して見事である。

 眼目は主人公が非人になって敵をねらうという趣向だが、感動できるようなドラマらしいドラマがない場面で、観客をいかに劇世界に引き込むことが勝負となる。主人公の人間としての高潔さ、志の高さを描き出すことができたら、成功ということになるだろう。現役最長老の住大夫は、さすがに世界を堅実に構成して納得させてはくれた。しかしながら、嶋大夫に感じたような感動があったかというと、はなはだ疑問である。深さが足りずに物足りなさを今回も感じてしまった。住大夫に感心しないのは毎度毎度のことなのであるが、多くの観客は彼の芸に心酔しているようなのが不思議に思える。

 人形では、清十郎、玉女、勘十郎らが活躍。蓑助が助太郎という珍しい役柄を遣った。何を遣っても蓑助に目が行ってしまうのは仕方がないが、中堅の人形遣いに目配りをしていたという意味でも彼の出演した意義は大きい。ベテランから中堅まで、バランスのよい舞台だったのがなによりだった。

2009-02-17 23:56
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