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近江源氏先陣館 伊達娘恋緋鹿子 12月文楽公演 国立劇場小劇場 [文楽]2009-12-08 [文楽アーカイブス]

 12月は若手・中堅が活躍する舞台が繰り広げられるので楽しみな公演である。31年前の12月に初めて文楽を観たときの出演者は以下の通りだった。今も現役の大夫、三味線、人形遣いがある一方で、懐かしい名前があり、消えてしまった人もいる。

「寺入りの段」豊竹 英大夫/鶴澤 浅造
「寺子屋の段」竹本 伊達路大夫/野澤 勝平(野澤 喜左衛門)・野澤 勝司(豊澤 富助)

女房戸浪  吉田 簑太郎 ( 桐竹 勘十郎)
菅秀才  吉田 玉英
よだれくり 吉田 栄光( 吉田 玉也 )
女房千代 桐竹 一暢
小太郎   吉田 簑二郎
下男三助 桐竹 勘士朗
武部源蔵 吉田 玉松
春藤玄蕃 吉田 玉女
松王丸  吉田 小玉 ( 吉田 文吾)
御台所  豊松 清之助 (豊松 清十郎)


「新口村の段」口 竹本 文字栄大夫/竹澤 弥三郎
         前 豊竹 嶋大夫/鶴澤 清介
         後 豊竹 小松大夫/竹澤 団二郎(竹澤 団七)

忠三女房 吉田 簑司
八右衛門 豊松 清之助 (豊松 清十郎 )
亀屋忠兵衛 桐竹 勘寿 (
梅川 桐竹 紋寿
樋の口の水右衛門 吉田 福丸
伝が婆 吉田 玉英
置頭巾  吉田 栄光 (吉田 玉也)
弦掛の藤治兵衛 吉田 玉輝
針立の道庵 桐竹 小紋
親孫右衛門 吉田 作十郎
捕手小頭 吉田 若玉 (吉田 文司)

「勧進帳の段 」武蔵坊弁慶   豊竹 呂大夫
         富樫之介正広 竹本 相生大夫
         源義経      豊竹 松香大夫
         伊勢三郎    竹本 津駒大夫
         駿河次郎    竹本 貴大夫
         片岡八郎    竹本 南司大夫
         常陸坊海尊   竹本 文字登大夫
         番卒       竹本 三輪大夫
         番卒       竹本 津国大夫
         梶下左忠太  竹本 緑大夫

三味線    鶴澤 清治、鶴澤 清友、鶴澤 燕太郎(豊澤 菊二郎)、鶴澤 八介、野澤 錦弥(野澤 錦糸) 、竹澤 弥三郎、鶴澤 浅造

富樫之介正広 吉田 玉幸
梶下左忠太 吉田 文昇
源義経 吉田 和生
伊勢三郎 吉田 玉輝
駿河次郎 桐竹 亀次
片岡八郎 桐竹 勘弥 ( 吉田 勘弥)
常陸坊海尊 桐竹 勘士朗
武蔵坊弁慶 吉田 玉昇

 今月は大曲『近江源氏先陣館』と『伊達娘恋緋鹿子』の二本立てである。今日の出演者が30年後にどのように成長しているか大いに楽しみである。もっとも天使は、見届けられそうもないが…。



 文楽は古典芸能のなかでも実力主義が徹底しているように思える。『盛綱陣屋の段』の千歳大夫、文字久大夫、『八百屋内の段』の呂勢大夫らが、日頃の実力を発揮していた。彼らが文楽の将来を背負って立つのは間違いがない。また、そうした自覚が見えるのも頼もしい。

 その一方で、伎倆の実力通りに冷遇されていると感じる大夫もいて複雑な思いである。歩みが遅い、あるいは音声障害かと思うような声の出ていない大夫がいる。たぶん後輩達の後塵を拝する形になって、彼らの心中はいかがなものかと思わずにいられない。彼らとて、数十年に渡る芸道修業にあけくれたはずである。どうして差がついてしまったのか、さらに年月を重ねれば良くなるものなのか…。 今日も満員御礼の出ていた文楽の盛況を観るにつけ、複雑な思いである。

 人形遣い、三味線とも、元々が手薄な陣容ゆえに、人間国宝級が出演しないだけで、本公演とあまり変わらない。静かに世代交代へ向かっているのは間違いがない。勘十郎、玉女、和生、清十郎らが活躍し、客席から拍手が起こるなど人気も出てきているようである。彼らが大成するかどうか、見届けるのも天使には困難だろうと思う。

 今月の文楽は、いろいろ思い巡らす楽しみはあるが、はやり人間国宝級が出演しないと一向に面白くなってはれない。大夫、三味線、人形とそれぞれ楷書の芸を見せるのが、やはり生涯かけて芸道を究めようとする、あるいは極めた人の芸とは、ひと味もふた味も違う。おかげで、どの場面も破綻なく演じられているものの、観客席まで届くような熱いエネルギーは感じられなかった。

 それは客席の観客のせいかもしれない、生真面目を絵に描いたように舞台に集中している人、大部分は居眠りしていても、見せ場になるとガバッと起き上がる人。字幕をひたすら追い続ける人。舞台すら観ないで床本集を
顔の前にもってきて読みふける人。どのように楽しもうと自由なのだが、もっとナマの反応を舞台に返さないと、舞台が盛り上がらないのではないだろうか。

 どうして文楽を観るのか、その理由はさまざまだろうが、天使はもっと面白がりながら、愉しみたいと思っている。時として耐え難いほど冷たい雰囲気の客席は、好きになれない。住大夫を聴く、簑助、文雀を観るだけが文楽の楽しみではないはずである。本来の文楽の姿に近いのが今月のハズである。回を重ねるごとに、どんどんスノッブになっていく客席が辛い。

2009-12-08 23:11
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