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仮名手本忠臣蔵 第41回文楽鑑賞教室 [文楽]2009-12-07 [文楽アーカイブス]

今月で文楽を見始めてから31年を迎えた。昭和53年12月の本公演を観たのである。翌年の12月に初めて鑑賞教室を観ていて今年が天使にとっては30年目である。その時の演目は、『菅原伝授手習鑑』で大夫、三味線、人形役割は以下の通りである。

「寺入りの段」
豊竹 英大夫(Aプロ)、鶴澤 清介(Aプロ)
竹本 緑大夫(Bプロ)、鶴澤 清友(Bプロ)

「寺子屋の段」
竹本 文字大夫(=竹本住大夫・Aプロ)、鶴澤 道八(Aプロ)
竹本織大夫(=竹本綱大夫・Bプロ)、竹澤 団六(=鶴澤 寛治・Bプロ)

菅秀才      豊松 清三郎
よだれくり    吉田 簑二郎
源蔵女房戸浪 吉田 文雀
松王女房千代 吉田 簑助
小太郎      吉田 玉志
下男三助    桐竹 勘緑
武部源蔵    豊松 清十郎
松王丸     吉田 玉男
春藤玄蕃    吉田 玉松
御台所     桐竹 勘寿


30年前なので、現在の人間国宝や切り場語りも40歳後半から50歳代の中堅クラスの出演だったことがわかる。大夫は現在ではどちらも切り場を語りになってるので、今月の大夫も将来は人間国宝になるかもしれないのだ。天使は、この時、Bプロで観たのだが歌舞伎とは違った魅力に驚き、泣かされ、感動して、現在に至るまで文楽を愛し続けているのである。

今回は土曜日の公演にでかけたのだが、夜の本公演も観るので、14時からの鑑賞教室と17時からの本公演と続けて観ればスケジュール的には良いのだが、あえて11時開演を選んだ。13時半前には終演となってしまい、17時まで時間を潰さなければならないのだが、東京体育館のプールで1000メートル泳いでから。雨の中を神宮外苑のいちょう並木の見物にでかけたりした。

何故、11時開演のAプロを選んだかというと、天使が大の贔屓である英大夫が「塩冶判官切腹の段」を語るからである。31年前は「寺入りの段」を語っていた(残念なことに天使は観ているはすなのに英大夫の記憶がないが、ともかく31年後には一番の聴かせどころを語るまでに成長していたということである。そして、この先何年か後には、切り場語りになり、人間国宝になるのだろうか。

今回は解説「文楽の魅力」はパスして、休憩後の「仮名手本忠臣蔵」に集中することにした。「下馬先進物の段」「殿中刃傷の段」「塩冶判官切腹の段」「城明け渡しの段」のみが上演された。有名作品とはいえ、初心者には難易度の高い演目の選択である。歌舞伎では色々入れ事があり、上演時間が長引きがちだが、文楽はポンポンと物語が展開していくのがよい。役者の芸を観るなら歌舞伎で、作品を理解するなら文楽という印象である。

それだけに、贔屓があると興味も倍増する。今、文楽の大夫のなかで、誰に一番魅力を感じるかというと、豊竹英大夫以外には考えられない。実は天使にとって生まれた初めて観た大夫が英大夫なのだが記憶にない。同時上演の『鳴響安宅新関』で駿河次郎を語っていた竹本 貴大夫 にひと目惚れしてしまったからである。貴大夫がとってもハンサムに観えて一度で大好きになってしまったのである。

ところが30年も経過すると「抱かれたい大夫のナンバー・ワン」は英大夫がダントツの第一位である。彼の長所は、なんといっても人間的な良さが芸にでているように思えるからである。そして深くて的確な表現力が武器である。今回も語り出しの「浮き世なれ」の第一声で、仮名手本忠臣蔵の世界に観客を一気に連れて行ったと思わせたのは流石である。各登場人物の心の中まで見透せるような語りわけも見事だった。

判官が「打ち寛いで御酒ひとつ」と石堂らに酒をすすめるのも、由良助に生きているうちに会って伝えたいことがあるのだということが自然に理解できた。しかも某大夫のように、俺が俺がと前に出て、全体とのアンサンブルを破壊するような行為もなく、むしろ、その存在さえ感じさせないほど観客を劇世界に巧みに誘導していたと思う。非常にレベルの高い芸を披露していたように思う。

あまりに英大夫が見事だったので、他が全く記憶から飛んでしまったような気がする。さて、どんな風に物語が展開しているかなど意識させないほど、深くて遠い世界へ連れた行かれたような気がした。また、そうしたものが乏しいと将来の大成はないのかもしれない。少なくとも英大夫にはそれがあったように思う。

人形では中堅クラスの出演だが、やはり由良助を演じた勘十郎が素晴らしい人形を遣った。かつては、玉男が由良助では他を寄せ付けない圧倒的なものだったが、それに匹敵するような大きさ、力強さがあった。それ以外は、残念ながら発展途上で将来に期待したいところである。

2009-12-07 01:07
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