SSブログ

五右衛門ロック 新感線☆RX  新宿コマ劇場 [ミュージカル]2008-07-20 [ミュージカル アーカイブス]

 今日は新感線☆RXの「五右衛門ロック」とアメリカン・バレエ・シアターの「海賊」のダブルヘッダーだった。松平健の公演以来なので2年ぶりの新宿コマ劇場である。まず今日からオープンしたシネコン「新宿ピカデリー」を見学。21世紀的な清潔感あふれるビルで、昔のいかがわしさを漂わす佇まいは、きれいサッパリなくなっていた。歌舞伎町にある新宿コマ劇場は、旧の新宿ピカデリーと同じく昭和の香りがするのだが、年末で閉館ということなので、今回がたぶん最後のコマ劇場体験である。

 天使が初めて新宿コマ劇場の存在を知ったのは、町内の電気屋が主催した観劇会に昨年100歳で亡くなった祖母が招待されたからである。由美かおるや由利とおるらが出演した喜劇公演だったように気がするが、祖母が持ち帰ったパンフレットを毎日眺めて、新宿コマスタジアム(そう呼ばれていたらしい)に憧れていた。進学のため上京して初めて観た新宿コマの公演は宝塚の正月公演だった。当時はコマ劇場でも宝塚を上演していたのである。

 さて、このコマ劇場は限られた敷地に最大限の客席を確保するということで、現在の形状になったようである。舞台から客席最後列まで階段状になっており、まさにスタジアム。三重の回り舞台を客席に迫り出すことにより、奥行きの足りなさを補い、それを取り囲むように客席を配置したので独特の劇空間となっている。

 当初はギリシャの円形劇場をイメージして設計されたらしいが、さすがにサイドの席は見切れてしまうのと、三方向から観られては芝居がしにくかろうと現在の形状になったということらしい。舞台から照射されるライトに照らされる客席の天井はボロボロ。これでは建て替えが必要かもしれない。

 ギリシャを夢みたコマ劇場は美空ひばりや北島三郎を代表とする歌手の座長芝居の殿堂だった。東京の喜劇陣の公演もあれば、「ピーターパン」をはじめとするミュージカルも上演されている。客席上手後方にあるベビールーム?は、泣き出す子供用に作られた専用室で、美空ひばりの発案というか命令だったとか。その劇場の最後の年になって、ギリシャ悲劇に匹敵する北大路欣也のスケールの大きな演技で、ようやくギリシャの夢を実現した格好になった。

 さらに天使が思い出したのは映画「海底軍艦」である。田舎町にあった昭和座という映画館。夏休み、春休みと何かというと、他の映画館では東映まんがまつりとか東宝チャンピオンまつりとかやっているのに、「海底軍艦」を出してきたのである。ラストシーン、滅亡する海底王国・ムー帝国へ泳いで戻る王女?の姿が強烈な映画だった。滅びの美というかなんというか。この芝居も、最高に美しく海に没する北大路欣也が素晴らしかった。

 五右衛門が活躍するので、江戸時代以前の物語なのだが、南の島へ進出する日本人、登場するそれぞれの風俗など太平洋戦争の侵略の歴史とも重なるように思えて興味深く観た。図式的には悪徳商人の西洋人は、アメリカと見えないこともない。表面上のチャンチャンバラバラやギンギンのロックの底には、けっこう骨太のテーマが流れていたりする。

 とはいうものの新感線☆RXである。コマ劇場の上手と下手の脇花道の上には櫓が組まれ、波やジャングル?が画かれたブラインドの下がった歌舞伎でいう黒御簾があって、ロックバンドが生演奏を披露する。天使のキャラとは、まったく違うのだが、カーテンコールではノリノリで拳を突き上げてしまった。それにしても座席も震える大音量。よくご近所から苦情が来ないものである。

 チャンバラ、ダンス、シャウトするヴォーカル、強烈な照明、小ネタ満載の芝居。ちょっと刈り込んで短くしてもと思うが、3時間半の舞台を最初から最後まで飽きさせずに見せたスタッフの力業に感服した。北大路欣也は別格として、五右衛門役の古田新太、江口洋介、森山未來ら客演の男優陣が充実していた。なかでも川平慈英のカッ飛びぶりが目立っていて、一瞬たりとも目が離せない存在となった。なんという身体能力。このテイストはどこかで体験したような…。今回怪我のため来日中止になったABTのアンヘル・コレーラと同じ匂いがする。

 「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」でバランシーンもビックリのジャンプしながらのフェッテ。あの空気の読めない爆走ぶりが川平慈英そくりなのである。そして天使がご贔屓の橋本じゅん。今回も想像以上の怪演を披露してくれて大満足である。はっきり言って歌われるナンバーの歌詞は全く聴き取れないのだが、まあ聴き取れなくても問題がないという単純なストーリーなのがよかった。

 最後はお約束なのか全館スタンディングオベーション。周囲がみんなやっているので拳を突き上げたわけだけれど、そこまでの感動があったかどうか。深いメッセージがこめられた芝居だったようだが、ただガンガン響くロックで脳みそがとろけてしまっただけのかも…。テーマパークのアトラクションみたい。その時は楽しいんだけれどね。

五右衛門:古田新太
真砂のお竜:松雪泰子
カルマ王子:森山未來 
岩倉左門字:江口洋介
ペドロ・モッカ:川平慈英
ジュザク夫人:濱田マリ
ボノー将軍:橋本じゅん
インガ:高田聖子
ガモー将軍:粟根まこと
クガイ:北大路欣也

右近健一 逆木圭一郎 河野まさと 村木よし子 山本カナコ
礒野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ 保坂エマ
冠 徹弥 村木 仁 川原正嗣 前田 悟
飯野めぐみ 嶌村緒里江 NAMI 角 裕子 福田えり 葛貫なおこ 早川久美子 鈴木奈苗
蝦名孝一 安田栄徳 青山航士 古川龍太 
武田浩二 藤家 剛 矢部敬三 工藤孝裕 根岸達也 加藤 学

作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
作詞:森雪之丞
美術:堀尾幸男
照明:原田 保
衣裳:小峰リリー
音楽:岡崎 司
振付:川崎悦子

2008-07-20 00:38
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:演劇

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。