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アイーダ  劇団四季 新名古屋ミュージカル劇場 [ミュージカル]2007-07-16 [ミュージカル アーカイブス]

 2000年のトニー賞では作品賞でノミネートされず(最優秀はコンタクト)結局、最優秀主演女優賞、音楽賞、装置デザイン賞、照明デザイン賞の4部門の受賞にとどまった。2003年に大阪で劇団四季が初演し、京都、福岡と上演されてこの5月から名古屋公演が始まる。いまだに東京での上演はないのだが、韓国でもすでに上演が終了していて気がつけば世界で上演しているのは名古屋だけになってしまったらしい。ゆくゆくは東京での上演もあるのだろうが、もう旬なミュージカルではなくなってしまったような気がする。内容が男女の三角関係、片方はお嬢さまでお洒落好き、しかも女性同士が友情で結ばれているという設定など類似点が多い「ウィキッド」が上演されてしまっているのはどうなんだろうか? 両作品とも高音を目一杯張り上げてフルボイスで聴かせる場面があり、しかも初演の主役が濱田みゆきが演じているという共通点もある。

 テーマは重いが楽しさでいえば「ウイキッド」の方がずっとディズニーらしい夢にあふれたものであるのだが、ディズニーでも「アイーダ」の映画版をビヨンセ主演で製作するらしい。第1幕は両作品とも上演時間が1時間30分と長い割には「アイーダ」の方が退屈させられた。オペラでは、あまりに有名な物語であり、今さら二人の出会いを演じられてもという感じだった。何よりもエルトン・ジョンの楽曲にさほど魅力が感じられないことと、主役二人の出会いから惹かれあうまでの過程がなんとももどかしいのである。

 舞台美術は、革新的で斬新なデザインがされているが、エジプト色は少なく、むしろ中近東かアジアの色彩が濃く感じられた。場面、場面に驚くような工夫が凝らされていて美しいには美しいのだが、いずれも平面的で物足りなさが残る。衣裳はモダンなデザインで統一されていて、途中にファションショーもどきな場面もあるのだが、出来の悪いSF映画みたいで、あまり美しいとは思えなかった。というよりもむしろ軽薄。特にラダメスの父親で悪役のゾーザーたちの詰め襟の学ランのような衣裳は???だった…。

 第1幕に感情移入できなかった大きな要因は、やはり劇団四季の発声法にある。毎度毎度で恐縮なのだが、あの母音を強調しすぎて不自然な気持ちの悪い台詞術には何とも我慢がならなくて白けた。アイーダの秋 夢子は歌はともかく台詞が不自然すぎて、ついていけなかった。もし濱田めぐみだったらと思った瞬間が何度もあった。本来なら盛り上がるはずの「神が愛するヌビア」は迫力不足で物足りないのは情けない。

 第2幕になってミュージカルとしてようやく盛り上がる。特に冒頭の星空?に浮かぶ緑のレーザー光線で作られた三角形(たぶんピラミッド)に浮かぶアイーダ、アムネリス、ラダメスの三角関係という図式の中で歌われる「どうしたらいい」はなかなかの名場面。ここから物語はサクサクと進んで前半の停滞が嘘のよう。結局、二人は石室に閉じこめられて死を迎えるのはオペラと同じ。そこに冒頭の場面の博物館で出会う若い男女の場面につながって幕という心憎い趣向。しかもその部分はまったくの無音だったのも良かった。輪廻転生が実現したと観客に想像させる部分が一番心を動かしてくれたかも。しかもアムネリスも展示物として永遠にその姿をさらし続けるというある意味残酷な運命を描いていて、これにも感心はさせれれた。

 このミュージカルには、観客をねじ伏せるような高度な歌唱力と強烈な個性が必要だと思うが、残念ながら満足させてくれた俳優は皆無。儲け役だったネヘブカの石倉康子が目立っていた程度で、作品本位の劇団四季とはいえ寂しい結果となった。もし東京で上演が始まっても行くかどうかは微妙。笑いが起こった場面がたった一カ所というのも辛かった。それにこの作品からヒット曲が生まれなかったというのも時代とはいえ残念である。ミュージカルといいながら、実はカラオケにあわせて歌うものなのも残念だった。地方公演だといってもロングランなのだからオーケストラが欲しい。あの大須オペラでさえ18人のオーケストラなのである。なぜスーパー一座にできることが天下の劇団四季でできないのだろうか。大方の劇団四季のファンはカラオケに慣れてしまっていて生のオーケストラの良さを自覚していないのではないだろうか。たとえ下手でも血の通った音楽がミュージカルには絶対に必要である。そもそも新名古屋ミュージカル劇場にはオーケストラピットはあるのだろうか?劇場周辺は再開発されるようだが、もし新しい劇場ができるのなら考慮してもらいたいものである。

2007年7月15日 13時開演/15時45分終演

アイーダ 秋 夢子、アムネリス 佐渡 寧子、ラダメス 福井 昌一、メレブ 中嶋 徹、ゾーザー 大塚 俊、アモナスロ 石原 義文 ファラオ 前田貞一郎、ネヘブカ 石倉 康子

男性アンサンブル 谷本 充也、塚下 兼吾、川東 優希、深堀 拓也、富澤 和麿、黒木 豪、影山 徹、海老沼 良和

女性アンサンブル 伊東 恵、松下 沙樹、杏奈、市川 友貴、上延 綾、須田 綾乃、オ ユナ

2007-07-16 21:39

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