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まだ7回目!マイケル・ジャクソン THIS IS IT [映画]2009-11-17 [映画 アーカイブス]

 おととい川崎のIMAXシアターに遠征したばかりなのに、7回目の「THIS IS IT」を観に隣町のシネコンにでかけた。川崎のIMAXシアターはデジタル上映だけあって、映像はアナログとハイビジョンくらい画質が違ったのだが、実は音響ではド田舎のシネコンの方が良かった印象があった。本当かどうかもう一度確かめに行こうと思ったのである。なにしろ現在は、そのシネコンで最も大きく音響も優れた施設のある劇場で上映されているが、新作が次々に公開される土曜日からは劇場が変わるのではないかと懸念されたからでもある。

 天使の住まいからは、21世紀だというのに村を通らなければ、隣の町のシネコンに行けない。かつて新国立劇場で「椿姫」のヴィオレッタを歌ったことのある女性オペラ歌手と同じ名前の村である。

畑のど真ん中に突然に出現する巨大なニュータウン。広大な敷地にいろいろな超大型店舗が並んでいて、観覧車もあったりして近未来的な雰囲気がする。その人工的な町並みの消防署の隣に、そのシネコンはある。川崎のビルの中にあるシネコンと違って、周囲に民家がないせいか重低音に遠慮がない。「スリラー」の最後の部分など、重低音が身体にズシンズシンと響いてきてびっくり。

 川崎では演出家のオルテガの声が後方のスピーカーから聞こえたりして、距離感を表現していたのだが、演奏になると、かえって音楽的に不自然な方向から音が迫ってきて満足できなかった。ド田舎のシネコンとはいえ、SRD‐EX/DTSのデジタル音響に対応していて、良く調整されているのか、音の分離と音楽に包まれる感じが絶妙なのである。しかも必要以上の音圧がないので、ヴォーカルの繊細なニュアンスが伝わってくる。天使の街のラジカセ並み音響のシネコンとは大違いだし、川崎よりも音響はバランスが良いと感じた。

 平日ということもあり、10名ほどの観客。しかもほとんどが劇場後方に座っているので天使の半径15メートル以内には観客はゼロ。それをいいことに、チュッパチャプスを舐めるのは序の口で、画面に向かって考えられるすべての反応をした。踊りはしなかったけれど、それ以外は全部やった。IMAXシアターのような巨大画面が無理ならば、自分がスクリーンに近づけばいいということで、前から3列目のど真ん中に座った。おかげで、コンサートホールの最前列に座っているような臨場感と、天使の周囲を音楽が取り囲むような素晴らしい音響を経験できた。

 毎回毎回、新しい発見があり、涙ぐむ場所も違うのだが、今回は最後の「Man in the Mirror」のストップ・モーションから 「THIS IS IT」にかけてが涙のツボだった。「Man in the Mirror」が、マイケルからファンへの呼びかけとしたら、「THIS IS IT」は、マイケルからファンへの答えだと思えたからである。それまでは、単なるラブソングだとばかり思っていたのだが、歌詞を噛みしめれば噛みしめるほど、いろいろな意味が立ち上がってきたのである。7回目にしてようやく気がつくとは…。

 もっとも、映画の数十倍もの映像の中から選びだし編集したケニー・オルテガ監督の意思が、強く反映されているのは間違いがない。今まで完璧なステージに近づくために苦闘するマイケル・ジャクソンの姿が多くの人の目にふれることがあっただろうか。そこに何も感じ取れないとしたら…、多くの観客はそこに感動して支持されているようなのでひと安心。オルテガ監督の願いはかなったということなのだと思う。

 冒頭のダンサー達のインタビューで最後に答えるダンサー。ダンサーなら不思議ではないのだが、ゲイらしい彼が「人生はつらいだろ…」と訥々と答え、「人生に打ちこめるものが欲しかった。それが、これ。 THIS IS IT」と結ぶ。オルテガ監督の意図はすべてはここに込められていたように思えてならなかった。だから、エンディングの「THIS IS IT」が俄然輝きを増してくるのである。今回は、そこに深い感動があった。それにしても、クリエティブな才能を持った方々は皆ゲイっぽい。当然といえば当然なのだが、あの衣裳担当のオジさま二人はご夫妻なのかも…。

2009-11-17 21:27

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今週もマイケル・ジャクソン THIS IS IT [映画]2009-11-10 [映画 アーカイブス]

 今週も止めない映画館通い。昼間に地元のシネコンで旧作の『ムーンウォーカー』を観たので、我慢できなくて隣町のシネコンにでかける。これが大正解。地元のシネコンでは満足できなかった音響が、ここでは最高!一番大きな劇場にかかっていたのだが、スクリーンも大きいし、シートも楽ちんだし、壁にあるサイドスピーカーの数も多くて、劇場全体から音楽が流れてくる感じ。各楽器の分離も素晴らしいし、椅子が揺れている?とまで思うほどの重低音が響き渡って、本当のコンサートに来ているようだった。同じ映画なのに、この差は何?最初からここで観ればよかったと後悔。


ライヴ・イン・ブカレスト [DVD]

出版社/メーカー: Sony Music Direct
メディア: DVD


 さて映画の前に「ライヴ・イン・ブカレスト」のDVDをチェックしてからでかけた。もう日本では考えられないような狂乱の観客席で、よく事故が起こらないものと変なところで感心した。このDVDの良いところは、歌詞の字幕が出るところで、『THIS IS IT』とほぼ共通の楽曲なので、マイケルの音楽の本質を知るには必見かも。

こちらのセットリストは以下の通り。
1. Main Title
2. Jam
3. Wanna Be Startin' Somethin'
4. Human Nature
5. Smooth Criminal
6. I Just Can't Stop Loving You
7. She's Out Of My Life
8. I Want You Back
9. I'll Be There
10. Thriller
11. Billie Jean
12. Working Day And Night- Live Video
13. Beat It
14. Will You Be There
15. Black Or White
16. Heal The World
17. Man In The Mirror

そうした準備があって、今回感銘を受けたのは、「 「Black Or White 」、「Heal The World」、「Man In The Mirror」のあたりが天使の好みである。 ショーとしては、「Smooth Criminal」が映画『ムーンウォーカー』でも、ライブでも『THIS IS IT』でも完成度が高いようだ。そして、最も感動した歌詞は、「Man In The Mirror」no
以下の部分である。

I'm starting with the man in the mirror
I'm asking him to his change his way
And a one message could have been any clearer
If you wanna make the world a better place
Take a look at yourself,and then make a change

まずは鏡の中の男から
心を改めさせよう
わかりやすいメッセージだ
世界を良くしたいなら
我が身をふり返り、自分自身から変えていくこと

歌っているマイケル自身にも、心に響く言葉ではなかったろうか。
本当に心を変えていたら、死なずにすんだのか?と思うと悲しくて泣けてきた。


2009-11-10 00:53

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ムーンウォーカー [映画]2009-11-09 [映画 アーカイブス]

解説: マイケル・ジャクソンが最も輝いていた1980年代、マイケル製作総指揮、原案、主演で作られたSFミュージカル。マイケルがスターのマイケルと宇宙からやって来た“ムーンウォーカー”の2役を演じ、地球の子どものために悪と戦う姿を描く。ジャクソン・ファイブ時代の映像やグラミー賞でのパフォーマンスなど、珍しい映像もたっぷり盛り込まれたマイケル・ファンには堪らない内容。ミック・ジャガーやエリザベス・テイラーなど、豪華なカメオ出演にも注目だ。

あらすじ: 大スター、マイケル・ジャクソン(マイケル・ジャクソン)には、誰にも知られていない秘密があった。歌やダンスで世界中を魅了するマイケルは仮の姿、本当のマイケルは愛の守護神コスモから遣わされた使者、ムーンウォーカーだったのだ。ある日、子どもたちとピクニックに出掛けたマイケルは、偶然にも子どもを狙う悪の組織の存在を知り……。

なかなかの駄作という噂だったが、1000円均一ならいいかなと11月7日から2週間限定で始まった21年前のマイケル・ジャクソンの旧作品のリバイバル上映にでかけた。さすがに平日の昼とあって、観客は天使を入れて4名だけ…。

 21年前の映画だから仕方がないが、拙劣なCGに陳腐なストーリーにビックリの内容。ドラマ部分はともかく、実際のコンサートの模様、さらに熱狂する観客席の様子など、興味深い場面の連続で、まあまあ楽しむことはできた。

 『THIS IS IT』を最後までご覧になった方ならご存じのように、最後の最後に出てくる足のアップは、この映画の冒頭部分に繋がっている。楽曲も当然のことながら共通していて、こちらには歌詞にも字幕がつくので、画面の意味や音楽の意味が、よく理解できて感慨深い。特に「Man in the Mirror」は、「THIS IS IT」同様に感動的に歌いあげられるが、やはり面前の観客がいるのといないのは大きく違うようである。

 映画としては突っ込みどころ満載なのだが、「Smooth Criminal」など同じく 「THIS IS IT」同様に作り込まれていた。新しいプリントが用意されたようで、音響も画質も最近の作品のようにきれいだったのは何よりだった。それにしても、彼の地ではブカレスト同様に意識を失って運びだされるコンサートの観客が続出。ちょっと日本人には考えられない過激な反応である。
2009-11-09 16:32
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マイケル・ジャクソン THIS IS IT [映画]2009-10-29 [映画 アーカイブス]

解説: 2009年6月に急逝したマイケル・ジャクソンによって、死の数日前まで行われていたコンサート・リハーサルを収録したドキュメンタリー。何百時間にも及ぶリハーサルを一本の映画にまとめあげたのは、『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』の監督兼振付師で、予定されていたロンドン公演のクリエーティブ・パートナーでもあったケニー・オルテガ。コンサートを創り上げる過程では、偉大なスターであり才能あふれるアーティストでもありながらなおも進化を続けたマイケル・ジャクソンの素顔が垣間見える。

あらすじ: 2009年6月、1か月後に迫ったロンドンでのコンサートを控え、突然この世を去ったマイケル・ジャクソン。照明、美術、ステージ上で流れるビデオ映像にまでこだわり、唯一無二のアーティストとしての才能を復帰ステージに賭けながら、歌やダンスの猛特訓は死の直前まで繰り返されていた。

 世界同時公開、しかも2週間限定。たぶんクリスマスシーズンにはDVDが発売されて、命日には地上波初登場でテレビ放映という筋書が見えるような気もしたが、やはり初日に行かないと意味がないということで、職場の同僚を誘って地元のシネコンへ。仕事帰りなので、せめてもとMJのピンバッジを売店で買って胸につけて見ることに…。実は天使は、マイケル・ジャクソンの大ファン。東京ドームのコンサートには、来日のたびに足を運んだし、「ニーベルングの指環」のレーザー・ディスクの横にマイケル・ジャクソンのレーザーディスクがあったりする。

 映画はリハーサルの映像と、コンサートのために制作された映像、その映像の収録現場、ダンサー達のオーディション風景などで構成されている。リハーサルもセットはあるが、舞台後方の映像装置のないリハーサルと本番同様に映像や客席に伸びるクレーンがあったりする本格的なものの2種類があるようで、高画質のものと家庭用ビデオで収録したような画質が巧みに組み合わされていた。それに対する音源も、異なる画面にシンクロしていて違和感がない。

 おびただしい数のダンサーのオーディション場面が冒頭にあって、技術、容姿、そしてダンサーとしての華など、厳しい選考を経て舞台に立つプリンシパル・ダンサーが選ばれたようである。一流のダンサーが最高の振付で踊るので、バックダンサーといえども目が離せなかった。そのダンサー達に混じって踊るマイケル・ジャクソンも遜色なく踊るので、彼自身も一流のダンサーだったのだと証明してみせた。

 バックバンドもコーラスも一流の実力者ばかりで、彼らとディスカッションしながら最高のステージを創り上げようとする姿に感動させられた。舞台装置、本物の火を使用した演出など、ロンドン公演が実現したら、素晴らしいコンサートになっただろうと想像できた。

 ただリハーサルということもあって、マイケル・ジャクソンがフルボイスで歌わない楽曲もあり、全盛期の声質を失ってしまったような部分があったのは残念だった。しかし、もっとも欠けていたのは、観客の存在で、空の客席に向かって、全力を尽くすパフォーマンスを披露しても、関係者の反応しかなくて、ライブのステージ独特の高揚を感じることができなかった。リハーサル風景を編集したものなので当然なのだが、やはり物足りなさが残るし、マイケル・ジャクソン自身を満員の観客が待つステージに立たせてあげたかった。数年後に実現したかもしれない日本公演に、天使も行きたかったと無念でならない。惜しんでも惜しみきれない「死」である。

 この公演では、映像を多用するのが特徴のようで、「3つ数えろ」?のハンフリー・ボガードと共演したり、CGを使った映像、3D映像で収録した「スリラー」など見事な映像が次々に現れて驚かされた。最も感銘を受けたのは、地球環境を守るメッセージを観客に伝えようとしたことで、「愛」と「地球を救え」という、21世紀に生きる人類に向けた最後のメッセージである。エンドロールが終わってからもメッセージを発していて、途中で帰る観客はいないだろうが、最後の最後まで味わって欲しい映画である。映像がなくなって流れてくる彼の温かい歌声に、本当に癒やされる思いだった。

セットリストは、たぶんこんな感じ?
1、Wanna Be Startin' Somethin' (partially live)
2、Speechless (live)
3、Jam (partially live)
4、They Don't Really Care About Us (not live) / Drill (short) (green screen) / Bad (not live) (short) (green screen)
5、Human Nature (almost live)
6、Smooth Criminal (almost not live)
7、The Way You Make Me Feel (live)
8、Jackson 5 Medley: I Want You Back, The Love You Save, I'll Be There (partially live)
9、Dance and Shout (not live, just dance)
10、I Just Can't Stop Loving You (live)
11、Thriller (not live) / Threatened (not live)
12、Beat It (live)
13、Black or White (not live)
14、Earth Song (partially live)
15、Billie Jean (live)
16、Man in the Mirror (partially live)
17、This Is It (recording)

 2009-10-29 00:01
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沈まぬ太陽 [映画]2009-10-25 [映画 アーカイブス]

解説: 人気作家・山崎豊子による同名ベストセラー小説を、壮大なスケールで映画化した社会派ドラマ。日本が経済大国へと急成長した激動の時代を背景に、巨大企業に翻弄(ほんろう)されながらも自らの信念を貫く男の姿を描く。監督は『ホワイトアウト』の若松節朗、脚本を『陽はまた昇る』の西岡琢也が担当。組織と闘う主人公を演じた渡辺謙をはじめ、三浦友和、石坂浩二など実力派俳優がそろったキャスティングにも注目。

あらすじ: 国民航空の労働組合委員長・恩地(渡辺謙)は職場環境の改善に奔走した結果、海外勤務を命じられてしまう。10年におよぶ孤独な生活に耐え、本社復帰を果たすもジャンボ機墜落事故が起き、救援隊として現地に行った彼はさまざまな悲劇を目の当たりにする。そして、組織の建て直しを図るべく就任した国見新会長(石坂浩二)のもとで、恩地は会社の腐敗と闘うが……。

映画『沈まぬ太陽』は、
山崎豊子の作品をもとに映画化したフィクションです。
登場人物、団体は全て架空のものであり、
実在の人物、団体等とは関係ありません。

もう、この腰の引け方が気に入らない。誰が何と言おうと、国民航空=NALは、日本航空=JAL以外には考えられないではないか。

飛行機事故による犠牲者の皆様のご冥福と
ご遺族の方々へ哀悼の意を表します。
この映画があらゆる交通機関の
「安心・安全」促進の一助になることを願います。

この言葉も白々しい。御巣鷹山の事故をダシに、金儲けしたいだけですと正直に言えないのかとも思う。遺族会の切り崩し工作の件など、遺族の感情を逆撫でするのではないかと心配になる部分もある。

 事故にあった機内の悲惨な状況を再現している冒頭部分は、涙なくしては見ていられない。遺体安置所の模様など、メディアにはのらなかった部分も激しく心を揺さぶってきた。

 それに比べれば、国民航空内の組合と経営陣の対立、社内での権力闘争、政界、官界を巻きこんでの不正など、主人公の恩地を含めて、お客不在、顧客重視の視点が欠如していて、とことん国民航空は駄目な会社なのだと思った。モデルになった、JALは最近まで権力闘争を内部でくり返してきたし、会社存続の危機に陥っているのは周知の事実である。

 恩地のモデルになった人物が実際どうだっかとか、行天のモデルは誰なのかとか、いろいろ詮索する向きもあるだろうけれども、いくつかの行動、思想の集合体なのだと思った方がいい。間違いないのは未曾有の航空機事故で、尊い人命が500名余も失われたという事実である。

 経営者側も組合側も、今こそ真剣に23年前の事故に向き合い、手を携えて会社の再建に邁進するべきだと思うのだが、なかなかそうならないのはJALの体質なのだろうと思う。どっちも、どっちである。

 主人公を演じた渡辺謙が好演。対する行天の三浦友和も魅力的である。それにしても、会社の経営陣、お役人、政治家ともに品がないのが不快である。特に食事をする場面の下品さは最悪。品性下劣な連中が、現在の日本の低迷を招いたのだと思った。金と女にしか興味がない風に描かれているが、多少の誇張はあっても、真実な姿なのだろうと思うと悲しくなる。3時間20分(休憩10分を含む)の長い映画だが、退屈させずに最後まで集中力をきらすことなく見た。

 それにしても、天使の後ろの席の男性が、始まっていきなり大イビキをかきだしたのに怒り心頭。少なくとも航空会社に所縁のある街のシネコンで、御巣鷹山の事故の場面で寝ないで欲しかった。実在の登場人物ばかりでなく、観客も相当にレベルは低かったようである。香川照之が演じた八木の不正行為のおぞましさに、思わず声が出てしまった。最低すぎて吐き気がした。

2009-10-25 19:35
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セントアンナの奇跡 [映画]2009-10-18 [映画 アーカイブス]

解説: 第二次世界大戦中のイタリアで実際に起きた虐殺事件を基に、兵士の葛藤(かっとう)と心の交流をサスペンスタッチでつづる戦争ドラマ。『マルコムX』のスパイク・リー監督が同名の小説を映画化し、リアルな戦闘シーンだけではなく、人種を超えた人間の尊厳と希望を見事に描き切った。主要な4人の若き黒人兵を、『大いなる陰謀』のデレク・ルークや『7つの贈り物』のマイケル・イーリーらが好演。戦争の無意味さや、人間の温もりがダイレクトに伝わってくる。

あらすじ: 1983年、平凡な黒人の郵便局員が客を射殺する不可解な事件が発生。この事件の背景には、第二次世界大戦中のイタリアでのとある出来事が隠されていた。黒人だけで組織された“バッファロー・ソルジャー”の4人の兵士は部隊からはぐれ、イタリア人の少年(マッテオ・シャボルディ)を保護する。4人はトスカーナの村でつかの間の平和を感じるが、ナチスの脅威はすぐそこまで迫っており……。

 東京では上映が終了してしまった映画が、1週間の期限付きで本日から隣町のシネコンで公開。朝、1000メートル泳いでから一回目の上映に駆けつけた。第二次世界大戦のイタリアで、ナチスによる無差別大量虐殺が行われた「セントアンナ」から独り生き残った少年と、味方から人種差別される黒人兵士、ファシストの村民、それに裏切り者のパルチザンなどなど、多彩な人物を配し、現代のニューヨークと戦中のイタリアを結びつけたスパイク・リー渾身の大作。

 非常に残酷な場面も多く、戦争はもとより、人種差別、宗教の問題など、大変に意欲的な作品だと思った。これは主人公の幻想シーンなのか?と思ったくらい、いささか現実離れした結末も、アメリカ映画なので許してあげてという感じ。とにかく現実に目をそらさない監督の姿勢は素晴らしいと思った。観客は、ある時は戦場に、ある時はアメリカの露骨な人種差別のカフェに、イタリアの村に、パルチザンが活躍する雑木林に、そしてセントアンナの虐殺の現場に…。まるで、そこにいるかのような臨場感が凄い。

 特にセントアンアの虐殺の場面とイタリアの村での主要な登場人物がほとんど殺される最後の戦闘場面は、涙なくしてはみられなかった。そして映画がハッピーエンドで終わり、タイトルにスパイク・リー監督の名前がクレジットされると、またまた涙が…。

 バックに流れたのは、天使が一番好きな黒人霊歌。「He's got the whole world in His hand ~すべては主の御手に~」だった。天使が学生時代に所属していた合唱団は黒人霊歌を好んで歌っていたので、思い入れが深い。黒人霊歌は、アフリカから奴隷としてアメリカに強制移住させられた黒人たちが、キリスト教に救いを見いだし、悲惨な生活の嘆きや救済を求める気持ちを素朴に歌ったもの。最初は、文字を読めない黒人たちへの布教のために聖書のかわりに歌が用いられたのが起源。故郷アフリカの音楽と自然に融合され、独特の味わいをもつ黒人霊歌がつくりだされてきた。

 この曲の演奏の極めつけといえば、世界最高の黒人歌手ジェシー・ノーマンが歌ったもの。彼女のリサイタルでは、必ずアンコールに歌われた。(歌わないときもあったけれど)低音から超高音まで、圧倒的な迫力と深さに誰もが感動したものだった。天使も全部歌えるので、映画に合わせてつぶやいたのだが、ここでも涙、涙で…。この曲をラストに持ってきた監督のセンスは天才的だと思う。

 黒人英語、イタリア語、ドイツ語が飛び交う映画でありながら、キリスト教のそれぞれの祈りの場面が交錯する場面が印象的。宗教を真っ向から取り上げて、その矛盾をついた作品はないのではないだろうか。もう上映が終わってしまい、上映時間も長いのですが、おすすめの作品だと思います。

2009-10-18 13:49
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私の中のあなた [映画]2009-10-16 [映画 アーカイブス]

解説: アメリカの人気作家ジョディ・ピコーのベストセラー小説を、『きみに読む物語』のニック・カサヴェテス監督が映画化。白血病の姉のドナーとなるべく遺伝子操作によって生まれた妹が、姉への臓器提供を拒んで両親を提訴する姿を通し、家族のありかたや命の尊厳を問いかける。主演のキャメロン・ディアスが初の母親役に挑み、両親を訴える次女役を『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリンが熱演。シリアスなテーマながら、主人公一家の強い家族愛が胸を打つ。

あらすじ: 白血病の姉(ソフィア・ヴァジリーヴァ)に臓器を提供するドナーとして、遺伝子操作によって生まれた11歳のアナ(アビゲイル・ブレスリン)。彼女はこれまで何度も姉の治療のために犠牲を強いられてきたが、母サラ(キャメロン・ディアス)は愛する家族のためなら当然と信じてきた。そんなある日、アナは姉への腎臓提供を拒否し、両親を相手に訴訟を起こす。

予告編を見たら、難病の治療を目的に姉のために遺伝子操作で生まれてきた次女が、両親を裁判で訴えるという、いかにも訴訟王国のアメリカらしい設定。肉親の情愛を、論理的に裁こうというのは、日本人にはちょっと理解できないと思わせておいて…。

 結局、論理よりも愛情が勝つというテーマだった。それで納得。延々と裁判の場面が続いたらどうしようと思ったが、登場人物それぞれの独白、回想シーンがはさまれて、次々に家族の心の中が露わになっていくという展開でホッとした。なかなか泣かせる展開で、難病の長女にも、彼女なりの恋と別れが訪れてと切ないのだけれど、最後のモンタナの大自然の中で家族の絆を深めていく場面が一番切なかったかも。大きな喪失感を乗り越え、最愛の人と出会ったことに感謝しながら生きている天使には、大いに共感できる映画だった。

2009-10-16 00:01
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パリ・オペラ座のすべて [映画]2009-10-12 [映画 アーカイブス]

解説: 300年以上にわたりフランス文化の中心とされてきたパリ・オペラ座の裏側に密着したドキュメンタリー。17世紀、ルイ14世によって創設されたパリ・オペラ座バレエ団の現在の姿に、アメリカを代表するドキュメンタリーの巨匠、フレデリック・ワイズマン監督がカメラを向ける。トップダンサーたちが華麗に舞うバレエ公演の裏にある、厳しいレッスンやスタッフたちの仕事現場など現実をとらえながらも、オペラ座の秘密をロマンたっぷりに描き出す。

あらすじ: 創設されてから現在までの348年の間、世界最高峰の芸術を提供してきたパリ・オペラ座。聖域とされるオペラ座の深部に潜入し、トップダンサーの創作過程から公演までに密着。さらに、いかにして経営はなされているのかという企業としてのオペラ座にまで迫り、長く重い歴史の裏を鮮明にあぶり出す。

 昨日がオペラ漬けの一日なら、今日はバレエ漬けの一日となった。映画「パリオペラ座のすべて」を観て、夕方からは、オーチャードホールでニューヨーク・シティ・バレエ団の来日公演を観る予定なのだ。朝10時10分にスタートの回は開場が10時だとか。いくらなんでもそれでは全員がチケットを買えないだろうと思い、あらかじめインターネット予約で購入しておいた。9時半に東急文化村の1階入口に到着すると、すでに長蛇の列。インターネット予約者も列に並んでエレベーターに乗り、6階の劇場へ向かうのだとか。

 さすがに9時45分から客入れが始まる。予約済みなので気楽だが、列はどんどん長くなる。たぶん最後尾の人は初回のチケットが買えなかったのではないだろうか。劇場の受付までは行列をつくり、中に入るとインターネット予約者は入口脇の係員の持つ手提げ金庫から予約したチケットをもらう段取り。一緒に並んでいた人はまだチケットが買えていないので申し訳ない感じ。場内の白いカバーの掛かっているのが指定席だが、各列12席ある内の半分の6席が交互に指定席になっていて、間違って座ってしまう人が続出していたようだった。初回から満席のスタートで、映画が終わってロビーに出ると、既に最終回以外は満席だった。

 さて天使がパリオペラ座に初めて行ったのは、20年以上前の復活祭の頃だった。シルヴィ・ギエムがパリ・オペラ座から英国ロイヤルバレエ団へ移籍した直後で、演目はヌレエフが新演出した「眠れる森の美女」だった。パリ到着直後にオペラ座に向かった。しかもガラ公演だというので正装して…。劇場へ着いてみると、なんとストで公演は中止。払い戻しに行った窓口で他日公演のチケットを買い足したのだが、その公演もストで中止。別のオペラを観にいった劇場前で、正規料金でチケットをさばくダフ屋?のオバサンが、たまたま持っていた「眠れる森の美女」の別の日のチケットを買って、なんとかパリを去る前の晩に観ることができた。

 しかも席は最高ランクで、オーケストラ席(日本風にいうと1階席)の前から6列目のど真ん中だった。天使の隣の席には上品な老婦人が座っていた。どうやら、この人がチケットをダフ屋に売ったらしかった。天使はフランス語はしゃべれないのだけれど、その老婦人は英語が堪能だったので幕間には、いろいろお話しをして楽しく過ごした。シャガールの天井画は嫌いだとか。若い頃に観たバレエ・リュスの思い出話とか。今年80歳とかで、ニジンスキーを観たとか観ないとか…。パリのバレエファンの底力を見せつけられた感じだった。終演後に明日はジェノバへ旅立つ老婦人は天使に言った。「どうぞ、バレエを愛してくださいね。きっと素晴らしい人生になるわよ。私のようにね」とウィンクして微笑んだ。天使は、それからズッとバレエを愛しているのです。

 そのパリ・オペラ座にカメラが入り2時間40分の映画になった。ほとんどはリハーサル風景で、本番の舞台が少し。あとは衣裳部屋、メイク部屋、芸術監督のルフェーヴルの仕事部屋などが登場する。バレエに少しでも興味ある人には、見逃せない場面の連続で少しも飽きさせない。まったくバレエに興味がなくても、ダンサー達が、いかに厳しい稽古を積み上げて本番を迎えるかをのぞき見できるので面白いと思う。驚異的な跳躍力や身体能力の高さに驚かれるのではないだろうか。

 取り上げられる演目は以下の通りで、古典とコンテンポラリーがほどよいバランスで取り上げられていた。


ヌレエフ版「くるみ割り人形」 レティシア・プジョルとジョゼ・マルティネスの稽古風景とプジョルとニコラ・ルリッシュの本番


ウエイン・マクレガー振付「ジュニュス」 マリ=アニエス・ジロとパンジャマン・ペシュの振付家自身が指導する稽古風景とアニエス・ルテステュとマチュー・ガニオの本番


アンジュラル・プレルジョカージュ振付「メディアの夢」 ウイルフリード・ロモリとアリス・ルナヴァンのパ・ド・ドゥと鬼気迫るデルフィーヌ・ムッサンの本番。これは素晴らしかった!ローラン・イレールが指導する風景もあり。

ピエール・ラコット振付「パキータ」 コールド・バレエや兵士の稽古風景。マリ=アニエス・ジロの舞台稽古での完璧なフェッテ。ラコット自身が登場するリハーサルでは、アニエス・ルテステュとエルヴェ・モローによるパ・ド・ドゥ。本番ではドロテ・ジルベールとマニュエル・ルグリのパ・ド・ドゥ。

マッツ・エック振付「ベルナルダの家」 マニュエル・ルグリらの奇声?を発しての迫力の本番が圧倒的。

サシャ・ヴァルツ振付「ロミオとジュリエット」オーレリ・デュポンとエルヴェ・モローの本番。終演後のパーティーでは、指揮者のゲルギエフがいたらしいが映らなかったが、当時のモルティエ総裁の姿があった。

ピナ・パウシュ振付「オルフェオとエウリディーチェ」ヤン・ブリタールの稽古風景。

特に紹介されないが、振付家のウエイン・マクレガー、マッツ・エック、ピエール・ラコットらが登場。ローラン・イレールや元エトワールのノエラ・ポントワ(懐かしい!)が指導役で登場。「くりみ割り人形」のローラン・イレールの振り移しでは、ルグリ、ルリッシュ、プジョル、ジルベール、マルティネスなどエトワールが勢揃いで驚く。

 2007年の秋に撮影されたらしく、2008年の秋に予定されているニューヨーク・シティ・バレエ団!の大口寄付者に何を提供するか相談していて、スポンサーの中にリーマン・ブラザース証券の名前が…。どうなったんだろう。

 パリ・オペラ座のバレエ学校に入学するには、両親の体型まで問題にされた狭き門なのに、バレエ団に入団するには、さらに厳しい試験があり。入団すれば入団したで、カドリーユからはじまり、コリフェ、スジェ、プルミエ・ダンスール、エトワールという大相撲より厳しい階級制で、選抜試験が待っている。バレエファンなら誰でも知っているような事も一切説明されない。それでも厳しさと美しさは伝わってくるという不思議な映画である。本当に説明的ではなく、初心者には不親切なようでいて、実はとっても親切な映画だと思った。何かを感じるのは観客自身によるというのはバレエの原点だと思うからである。

 映画の始まる前に、ベジャールのバレエ団のドキュメンタリー映画「ベジャール、そしてバレエはつづく」の予告編あり。本編の中で、芸術監督のルフェーヴルが葬儀の模様を語る場面があってグツときた。映画を観てプログラムはほとんど買わないのだが、表紙のオペラ座のスケッチにひかれて購入。チャコット、NBS、東急文化村のスポンサーであるオムロン、鹿島、キリン、日立などの広告があるおかげか、800円にしてはカラー写真満載で充実の内容。特に「ジュニス」のマリ=アニエス・ジロ驚異的なポーズが美しい。おすすめです。NBSの広告には、来春の来日公演の配役表が掲載されていた。「シンデレラ」がルテステュ&マルティネス、ジロー&パケット、ムッサン&ガニオの3キャスト。「ジゼル」がルテステュ&マルティネス、ジルベール&エイマン、シアラヴォラ&ペッシュ、デュポン&ル・リッシュの4組。デュポンは来日しないと思っていただけに嬉しい。

2009-10-12 00:35
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サマーウォーズ [映画]2009-10-08 [映画 アーカイブス]

解説: 単館公開からスタートし、口コミでロングランヒットとなった『時をかける少女』の細田守監督が放つ劇場アニメーションの最新作。ふとしたことから片田舎の大家族に仲間入りした天才数学少年が、突如世界を襲った危機に戦いを挑むことになる。主人公の少年・小磯健二の声を担当するのは、『千と千尋の神隠し』などで声優としても定評のある実力派若手俳優・神木隆之介。良質なアニメーション映像と、壮大なスケールの展開が見どころ。

あらすじ: 天才的な数学力を持ちながらも内気な性格の小磯健二は、あこがれの先輩・夏希に頼まれ、長野にある彼女の田舎へ。そこで二人を待っていたのは、大勢の夏希の親せきたちだった。しかも、健二は夏希から「婚約者のふりをして」と頼まれ、親せきの面々に圧倒されながらも大役を務めることに……。

 アニメの上に、デジタル・ネットワークの世界と聞いただけで尻込みしてしまって、地元のシネコンでも8月1日に公開したらしいのに見逃して、明日で公開終了ということで、隣町のシネコンのレイトショーで駆け込みで観に行った。

 最初の予想は大きく外れ、なかなか見応えのある作品で、実写版でなくアニメである必然性も、デジタル・ネットワークの可視化という大義名分があるので、デジタルに馴染みのない天使にもスッと世界に入っていけた。それはデジタルの世界の作り込み感と、現実部分のリアル感の対比が見事だったからにほかならない。

 歴史のある旧家の佇まい、朝顔の鉢、入道雲と夏空、などなど懐かしさを感じさせる日本の原風景と、大家族の有り様など、作り手の愛情の深さが感じられて心地よいのである。いささか、オーバーな表現や突っ込みどころもあるようには思うが、大きな古民家の中で、ほとんどドラマが展開していく設定の上手さにやられたという感じである。

 最高のキャラクターは、富司純子が吹き替えを担当した女主人公の90歳になる祖母の存在で、突然訪れた危機を旧式の黒電話を使って、乗り切る部分で観客の溜飲を下げさせたり、家族に当てた手紙で観客を泣かせたりと、なかなかツボを押さえた展開で面白くみた。昔ならともかく、これだけ気品のある老嬢を演じられる女優がいないので、アニメにするのも仕方がないのかなと思ったりした。

 さすがに公開2ヶ月が経過して、上映館も少なくなっているようだが、ご覧になってもご損のない映画だと思います。物語の展開がかけないのが残念ですが、ハラハラドキドキ。最近はとんとご無沙汰の花札で遊んでみたくなりました。それと親戚一同が揃って食卓を囲むのを子供の頃に戻って、もう一度体験してみたいような…。扱っている題材と懐かしさの混ざり具合が絶妙でした。

2009-10-08 23:32
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幸せはシャンソニア劇場から [映画]2009-10-04 [映画 アーカイブス]

解説: 『コーラス』の製作者ジャック・ペランとクリストフ・バラティエ監督が再タッグを組み、フランスで130万人の動員を記録した感動作。経済不況や戦争の影が忍び寄る1936年のフランス、パリ北部の街角にあるミュージックホールを舞台に、力強く生きる親子、恋人同士、音楽仲間たちの物語が華やかな音楽とともにつづられる。歌唱力抜群の大型新人として注目を集めた19歳のノラ・アルネゼデールなど、キャストたちの好演と歌声にも注目だ。

あらすじ: 下町の人々から愛されるミュージックホール、シャンソニア劇場が不況のあおりを受け、不動産屋に取り上げられる事態に。支配人のピグワル(ジェラール・ジュニョ)は仲間たちとともに劇場を取り戻そうと、オーディションにやって来た美しい娘ドゥース(ノラ・アルネゼデール)の類まれな歌声を頼りに、再び公演を始めるが……。

 映画の前にフレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリー映画「パリ・オペラ座のすべて」の予告編が流れた。インターネットのサイトで予告編は見ていたのだが、さすがに映画館の大画面では迫力が違う。名前を知っているダンサーが出てくる出てくる。予告編だけで感動してしまった。封切られたら絶対に観に行くつもりである。初めてパリ・オペラ座を訪れてから20年が経った。あの豪華絢爛たる劇場、ガラ公演だったので正装して集う人々、むせかえるような香水の匂い。すべてが夢のような世界だった。

 この映画の最後に、戦後初めて主人公が、かつて働いていた劇場を訪れる場面がある。大入り満員。下町のミュージック・ホールなのに、係員は燕尾服?の正装。主人公は普段着?。「もちろんこんな格好で入らないさ」と主人公は雪の積もった劇場の前に佇む。劇場の格が上がったようである。そこからカメラがパリの街を映していって終わり。さすがにアメリカ映画なので、単純なハッピーエンドにしないところがいい。そして親子の絆が再び結ばれることを暗示させるのも上手い。

 題名や予告編から想像すると、親子の情愛やショービジネスの厳しさを描いた芸道ものの映画のようだが、さすがに、そんなに単純なものではなかった。主人公のジェラール・ジュニョの外見からは考えられないような過酷な物語が展開していく。ファシズムが台頭する戦争前の不気味さや労働争議など時代に翻弄される人々など、日本人には背景が理解しにくい部分や、フランス人らしいユーモアのある場面もあって、かなりハードルは高いと思った。

 日本でいえば名古屋の大須演芸場といった感じの場末感が漂う、信じられないような低レベルの芸人しかいない駄目な劇場の再生の物語ではある。とにかく苦い、苦い。それだからこそ、劇中に挿入されるショー場面の明るさが強調される効果があった。大きな感動は少ないかもしれないが、見て損はないかも。映画『コーラス』でも公演した、チビ、デブ、ハゲ&ヒゲの四拍子が揃ったジェラール・ジュニョのすっかりファンになりました。最初は冴えないのに、どんどん魅力的になってきます。見かけよりも実年齢は若いのにも驚きます。

2009-10-04 00:23
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