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マノン・レスコー  新国立劇場 千秋楽 [オペラ]









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今回の『マノン・レスコー』2011年3月11日の東日本大震災で公演中止になったプロダクションが4年の歳月を経て復活した。何度も何度も繰返されるカーテンコールで、題名役のスヴェトラ・ヴァッシレヴァがとうとうやり遂げたという安堵の表情と日本の観客に責任を果たせたという嬉しさが伝わってきたのは天使だけだったろうか。

演出は3方向が白い壁に白い床というのが基本。第1幕は、さらに塀で囲まれていて、下手に学生達がテーブルに集団お見合い状態で掛けていて、観客に背中をみせている一団は歌うときだけ振り向くという形式。
第2幕はマノンの寝室で、天井まで届く天蓋つきのベッドが中央にあるという設定。第3幕は、周囲の壁が引き上げられ、黒い面が舞台を取り囲む。舞台中空には下手から上手へ橋が架けられ、その下は白い床のはがしてあり、運河のような場所に見立てて、小舟にマノン達が乗り込み、大きな船まで運んでもらう趣向。さらに4幕は3方向が壁で中央に2本の柱が天井まで伸び、そこには荒野を表す砂のオブジェが置かれているという設定。

いずれも、観客に想像力が足りないと陳腐なものになってしまうが、大きな謎が仕掛けられいるわけでもなく、男がカツラや白塗りのお化粧をするロココ調の登場人物たちが生々しいので、十分すぎるくらい説得力のある演出だった。何より清潔でシンプルで品がある。それでいて観客の想像力を刺激せずにおかない優れた美術と衣裳だと思った。

指揮者のピエール・ジョルジョ・モランディと東京交響楽団は、冒頭から安全運転で、若さや官能、疾走する青春といったイメージがわかない凡庸な演奏だった。駆け抜けるような爽快感がなく、むしろ病的な音楽が流れていたように思う。前半は、特にそうした特色が出て楽しめない演奏だった。その一方、第3幕と第4幕は主役歌手の健闘により高水準な演奏になったのが不思議だった。

学生というには、いささか年齢を重ね過ぎたようなデ・グリューのグスターヴォ・ポルタは有望なテノール歌手なのだろうが、前半は容姿が邪魔をしてなかなか歌声だけに集中できなかった。対するマノン・レスコーのスヴェトラ・ヴァッシレヴァも前半はなかなかエンジンが掛からなかったようだが、後半になるにつれて、オペラの聞かせどころ、芝居の盛り上がる場面に至ってようやく本領を発揮したようで、感動的な幕切れを迎えた。

終わってみれば、なかなかの水準だったのだが、点灯夫の松浦健だけは、芝居も歌唱もいただけなかった。カーテンコールでも独りではしゃいだような演技をしていたが、果たしてあの場面の点灯夫の役は、あのような役だったのだろうか?ふざけ過ぎという印象しか残らなかった。


指揮:ピエール・ジョルジョ・モランディ
演出:ジルベール・デフロ
装置・衣裳:ウィリアム・オルランディ
照明:ロベルト・ヴェントゥーリ
合唱指揮:三澤洋史
音楽ヘッドコーチ:石坂宏
舞台監督:村田健輔

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団

出演:マノン・レスコー:スヴェトラ・ヴァッシレヴァ
    デ・グリュー:グスターヴォ・ポルタ
    レスコー(マノン兄):ダリボール・イェニス
    ジェロント(マノンを囲う):妻屋秀和
    エドモンド(デ・グリュー友人):望月哲也
    旅籠屋の主人:鹿野由之
    舞踏教師:羽山晃生
    音楽家:井坂 惠
    軍曹:大塚博章
    点灯夫:松浦 健
   海軍司令官:森口賢二
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