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ラ・バヤデール 新国立劇場 2015年2月17日初日 [バレエ]



2000年に初演された牧阿佐美版の『ラ・バヤデール』。人気レパートリー?として再演が繰返されているが、今回で5演目。「影の王国」は有名で、単独で上演されることも多いが、はっきり言ってこのバレエは傑作とは言い難いものがある。ちょっと微妙な人間関係がバレエにしては複雑で、第1幕はバレエよりもマイムが多く、作品としての面白味に欠け盛り上がらない。

それを救ったのが小野絢子のニキヤである。初役ではなく、すでに経験済みの役とはいえ、最近の好調を物語るように完璧な出来。第1幕は清楚な中にも柔らかく、それでいて激しい気性を表現していて見事だった。第2幕は感情表現と身体の柔らかさが抜群。最後のソロでは、それまで観客を沸かせていたガムザッティの米沢唯、ソロルのワディム・ムンタギロフ、黄金の神像の八幡顕光の高度な技術も霞んでしまうほどの情感溢れたバレエを披露して、休憩時間はその余韻に浸って静かに過したほど。

そして「影の王国」から神殿崩壊、ソロルとの昇天まで確かな技術と心の底から湧いてくる感情表現が最高で、素晴しい一夜を経験させてくれた。観客もそれを知っているのか、ほぼ満員の盛況だった。特に今宵は、ニキヤも踊る予定の米沢唯がガムザッティで登場するなど、小野絢子と米沢唯の共演が観られたのも嬉しかった。小野絢子はワディム・ムンタギロフとのパートナーシップも良好で、それぞれ理想的な相手役を得た感じである。

以前から定評のある32名による、第1アラベスクのパンシェを繰り返しながら坂道を降りてくる場面。今回も美しく決まって見事だった。神殿崩壊の屋台崩しも迫力があり、最後の場面でその坂道をニキヤとソロルが登っていくのも象徴的な場面になって素敵だった。

そして何より特筆したいのは、アレクセイ・バクラン指揮による東京交響楽団の演奏。けっして名作とはいえないなずのミンクスの曲が最高に美しく奏でられ、舞台上のダンサー達と息もピッタリだった。この組み合わせは来月の日本バレエ協会の公演『コッペリア』にも引き継がれるらしいので大いに楽しみである。小野絢子のニキヤは、もう一度観たいが、あと1回だけ平日のマチネに出演するとあっては観ることができない。非常に残念である。

2015年2月17日(火) 19:00開演 21時45分終演予定
振付: マリウス・プティパ
演出・改訂振付: 牧阿佐美
音楽: レオン・ミンクス
編曲: ジョン・ランチベリー
照明: 磯野睦
装置: 森岡肇

指揮: アレクセイ・バクラン
管弦楽: 東京交響楽団

【キャスト】
ニキヤ: 小野絢子
ソロル:  ワディム・ムンタギロフ
ガムザッティ: 米沢唯
ハイブラーミン(大僧正):: マイレン・トレウバエフ
ラジャー(王侯): 貝川鐡夫
マグダヴェヤ: 福田圭吾
アイヤ: 今村美由起
黄金の神像: 八幡顕光
壺の踊り: 寺田亜沙子
第一バリエーション: 寺田亜沙子
第二バリエーション: 堀口純
第三バリエーション: 細田千晶


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うめのす

ハンナさん、はじめまして。


私も17日のバヤを観ました。

ハンナさんとほぼ同じ感想でしたので、
嬉しくなってコメントさせていただきました。


仕事の都合上、新国立劇場のバレエを初日に観ることは、
ほとんどありません。


初日の今回、明らかに観客の雰囲気が違っておりました。


絢子ちゃんと唯ちゃんのキャストでの
豪華なバヤに、
そして、期待通りの出来栄えに、
客席は熱狂し、ライブのような興奮を感じました。

私も、うるさいほどの拍手を贈っていた一人です。


素晴らしい舞台となって、良かったですね。




by うめのす (2015-02-19 09:48) 

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