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四天王楓江戸粧 11月明治座 花形歌舞伎・夜の部 [歌舞伎]

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十月、十一月の市川猿之助の奮闘連続公演の目玉は、18年前に国立劇場で一日がかりで顔見世狂言をできる限り再現して上演した『四天王楓江戸粧』の再演である。一日がかりの上演を4時間半に短縮するので、国立劇場版からは、「脇狂言 福祭り」、「序開き」、「愛宕山の場」、「三島明神の場」、「足柄山の場」といった部分が省略された。もっとも花道のスッポンから鶴屋南北に扮した猿之助が登場し、本舞台で引き抜いて?猿之助の口上になるという趣向。顔見世狂言なので頭で考えても納得できない展開があるらしく、細かいことはあまり気にしないようにと断りがあった。

今回の上演は、下町の劇場である明治座に合わせて、楽しさを徹底的に追求したようである。宙乗りは開幕して直ぐに辰夜叉御前が蜘蛛の糸を客席に飛ばしながら空中を進んだ。原田保の照明により、客席の天井に蜘蛛の巣が写し出されるという大胆なものだった。照明の工夫といえば、花道に仕込まれた照明だが、花道全体を照らすのではなく、いつもの七三の位置に役者が立った時だけ1/5ぐらいが点灯するという省エネ照明だった。しかし、照明の技術なのか単なる偶然か、花道だけが浮か上がるような工夫もあったおゆである、

宙乗りは後半にもあり、小女郎狐が拝領した刀を持って、狐忠信よろしく飛ぶという趣向。ここでもムーヴィングライトなどを駆使して、客席の天井に春の景色が出現した。そのうち、プロジェクション・マッピングを使用した舞台装置も工夫されるかもしれないと思ったら、東京バレエ団の「くるみ割り人形」は、業界初のプロジェクション・マッピングを使用するらしい。幕切れは、七綾姫が馬簾つきの四天姿で、猿之助とともに大勢の敵を倒すという場面もあり、花道で二つの赤い梯子を使った立ち回りは一面の雪景色の中で効果的だった。さらに水平線から太陽が昇ってきた時は、神々しささえ感じていたのだった。二回の宙乗りでは、桜の花が照明によって劇場の天井へ映し出され面白い工夫だった。

前半と後半は全く芝居の色調が変わるので大いに戸惑った。それでも、「暫」、「だんまり」、「雪景色」など顔見世狂言に必要不可欠なものは、ちゃんと入っていて面白かった。「楽しさ」がキーワードであるならば、いささか問題だったのは「第二場 平井保昌館の場」で、大事な場面ではあるが、飽きっぽい観客の興味を繋ぎとめて芝居の世界に誘う姿勢だけはかいたいと思う。門之助や秀太郎など出演者も強力な助っ人だったのだが、芝居の毛色が違うので大いに驚いたのではないだろうか。

猿之助には自信があったようだが明治座の舞台では実現が困難と言われていた作品を堂々と上演できて素晴しい成果をあげたように思う。歌舞伎の世界では若いのだから、ドンドンと挑戦していけばいいのである。終わってしまうと何か残っているような芝居ではないが、「楽しさ」においては最高の作品だったかもれない。

来年の5月の登場も決定したようで何が飛び出すのか大いに楽しみである。

三代猿之助四十八撰の内
通し狂言 四天王楓江戸粧
      市川猿之助宙乗り相勤め申し候
   
辰夜叉御前    市川 猿之助 
平井保輔       
相馬太郎良門  
小女郎狐の精  
   
渡辺綱/碓井定光 市川 右 近
和泉式部妹橋立 市川 笑 也
田原千晴/卜部季武/鷺の森有祐卿 市川 猿 弥
鬼童丸実は季武弟季明 市川 團 子
和泉式部 市川 笑三郎
季武妹春町 市川 春 猿
家主茂九郎右衛門/後家おくま 市川 寿 猿
坂田公時/左少弁優連卿 市川 弘太郎
七綾姫 尾上 右 近
左大臣高明 坂東 亀三郎
さぼてん婆 坂東 竹三郎
源頼光 市川 門之助
保輔母幾野 片岡 秀太郎

三代猿之助四十八撰の内
四天王楓江戸粧

序幕 岩倉山の場

4:00-4:30

幕間     5分

二幕目第一場 一條戻橋の場
     第二場 平井保昌館の場
4:35-5:35

幕間     30分

三幕目 花山御所の場
6:05-7:00

幕間     25分

大詰第一場  地蔵堂の場
   第二場  紅葉ヶ茶屋の場
7:25-8:30


公演名:第199回歌舞伎公演
日時:平成8(1996)年 10月 5日 ~ 27日
会場:国立劇場大劇場
国立劇場開場三十周年記念
平成八年度芸術祭協賛


脇狂言
福祭り  19分

序開き  34分

第一番目 三建目
第一場 愛宕山の場 40分
第二場 岩倉山の場 28分


四建目
第一場
三島明神の場
浄瑠璃 雪振袖山姥
常磐津連中        32分

第二場
足柄山の場
浄瑠璃 雪振袖山姥
常磐津連中        61分

五建目
第一場
一條戻橋の場 31分
第二場
平井保昌館の場 44分
第三場
地蔵堂の場    13分

六建目
花山御所の場  58分

第二番目
紅葉ヶ茶屋の場  75分

辰夜叉御前      市川 猿之助
平井保輔       
相馬太郎良門  

小女郎狐の精  市川笑三郎  
   
渡辺綱/碓井定光  市川 段四郎
和泉式部妹橋立 市川 笑 也
田原千晴  坂東弥十郎
ト部季武 市川 段四郎
和泉式部 澤村田之助
季武妹春町 市川 春猿
家主茂九郎右衛門 坂東弥十郎
後家おくま 市川 寿 猿
坂田公時  市川 右近
七綾姫 澤村田之助
左大臣高明  中村 歌六
さぼてん婆 坂東 竹三郎
源頼光 市川 門之助
保輔母幾野 中村 歌六
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