息子 三國連太郎主演 [映画]
山田洋次・名作映画 DVDマガジン 2013年 4/30号 [分冊百科]
- 作者:
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/04/16
- メディア: 雑誌
【解説】
「男はつらいよ」の山田洋次監督が、椎名誠の『倉庫作業員』を基に、田舎に住む父親と都会でフリーアルバイターを続ける息子との葛藤を描いた感動ドラマ。三國をはじめ、永瀬、和久井ら出演者たちの抑えた演技が冴え渡る。
東京でフリーアルバイターとして生活を送る哲夫。母の一周忌に岩手の田舎に帰るが、フラフラした生活に不満を持つ父・昭男とはギクシャクしたままだった。東京へ戻った哲夫は、下町の鉄工場で働き始める。そこで取引先の倉庫で働く征子と出会う。やがて、哲夫は征子が聾唖であることを知る……。
先日亡くなった三國連太郎が主演した1991年の映画である。実にタイミングよく「山田洋次 名作映画DVDマガジン」が発売になったので、早速購入して観た。公開当時にも観ているが、舞台『ホロヴィッツの対話』に出演していた和久井映見があまりに初々しくて驚く。
物語は最新作「東京家族」の元になったのではと思えるような部分もあるが、三國連太郎の個性と演技力で全く別の様相をみせ感動的な映画となっていた。「息子」という題名は、もちろん不肖の息子である次男坊のことなのだが、実は親を引き取れない長男のことでもあって、なかなか意味深な物語でもある。三國連太郎は、後年の「釣りバカ日誌」のスーさんと違い、岩手の田舎親父を好演。一家を養うために出稼ぎで東京へ来ていたという過去、さらに戦争へ行っていたという過去をにじませた演技の深さで唸らせる。
最も感動的だったのは、息子の婚約者に会った夜、あまりの嬉しさに起き上がってビールを飲みながら、祝福のしるしに「お富さん」を歌う場面。永島正敏と気持ちが通じ合っていく瞬間の輝きが静かな涙を流させた。さらに追い討ちをかけるのは、雪深い故郷の家へ一人戻り、一家団欒の幻想を見る場面。映画史に残る名場面かもしれない。
きっと三國連太郎の演じる父親の手のひらは、ゴツゴツとした働き者の手だったろうと思う。次男坊も同じようにゴツゴツした手を持つだろうなと思うと泣けてきた。22年前の映画で、若い二人にはその後どうなっただろうかと想像をめぐらすと面白いし悲しくもあった。
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