SSブログ

リトルマーメード  積水ハウスミュージカルシアター四季劇場『夏』 [ミュージカル]



京浜東北線で大井町駅へ向かう品川駅からひと駅なのだが、2010年7月に開場した四季劇場『夏』がなければ一生無縁なままの駅だったと思う。東急線やりんかい線などが交わる交通の要所らしく、駅前も大型スーパー、駅ビル、昔ながらの商店街も長く伸びていてシャッター通りとは無縁な賑わい。一歩外れると団地風の住宅が建っていて、雑然とした雰囲気でミュージカルを観るという雰囲気に乏しい。

これまでの劇場建築の経験を生かしてか、舞台本位の設計で劇場内に入れば2層構造の客席で観易いのだが、ロビーなどは非常に殺風景で観劇の楽しみの半分は奪われているといった感じ。立地条件の悪さからか、杮茸落しが『美女と野獣』、今回が『ルトルマーメード』とディズニー・ミュージカル路線を継承。修学旅行生など団体客に頼る戦略だろうから立地は問わないのだろう。7月まではほぼ全席完売の景気のよさだが、ロングラン公演の後半には平日の夜公演など観客動員は困難と予想する。それは舞台成果が今ひとつに終わってしまったからである。

劇場の入口ではQRコードを読み取っての入場スタイル。携帯を読み取り機にかざすという、飛行機にでも乗る感じ。発券機?から自席を示す簡単な地図と席番が印刷される仕掛け。入場間違いはないけれど、少々手間取るお客も少なからずいた模様。

プログラム売り場、グッズ売り場、売店、クロークはいずれも長蛇の列で快適性に乏しいのは、ロビーが狭いせいでもあろうか。劇場内へ入るとブルーの緞帳というか紗幕に波?の模様がライトによって映し出され、リトルマーメードの題名が写し出されている。

舞台端まで客席があってオーケストラピットはなし。たぶん最初からカラオケミュージカル専用劇場として建築された?のでオーケストラピットはないのかもしれない。地方公演では普通なのだが、せめて東京公演くらいオーケストラで演奏するべきではなかったろうか。劇団四季のファンは長年カラオケでの上演に慣れてしまっているから違和感がないのだろうが、生演奏ではないミュージカル上演は異常事態だとそろそろ意識した方がよい。

メルヘンの世界を借りて、若い男女がさまざまな障害に出ないながらも最後には結ばれるというミュージカルの王道を行く物語。ディズニー作品らしくハッピーエンドになるので安心して観ていられるのが取り柄といえば取り柄なのだが、障害となるべき悪女に毒がないので残念な結果に。

主役であるアリエルの谷原志音、エリックの上川一哉ともにルックス、歌唱力とも適役なのだが、個性的な才能の存在を許さない劇団四季だからなのか、敵役のアースラの青山弥生に全く悪の存在感がなく、歌唱力、演技力ともに中途半端で役目を果たしていない。

ニーベルングの指環のヴォータンを思い出させるトリトンの芝清道には父性と威厳が足りなくて、カーテンコールのチョコチョコ歩きで笑いをとるなどみっともないだけ。セバスチャンの飯野おさみはパワー不足でハラハラさせられる。ベテラン勢の低調さも舞台成果を低下させた一因のようである。

もっと根本的な問題は、フライング技術に頼った演出の単調さにあって、水中を表現する手段としては悪くないのだが、左右の移動、上下動、方向転換だけという単調さとスピード感のなさ、腰を両方から吊る方式でワイヤーが見えていて、少々興醒め。つねにクネクネと下半身を動かし、舞台上にあっても体を揺らし続ける役者の努力は報われなかったようである。

プログラムによれば、海中は3Dの立体感、地上はアリエルの憧れを具現化した2Dの世界観で表現ということだったが、フライングのためにスペースを確保しなければならないので、あまり大掛りな舞台装置が組めなかっただけだと思う。愛する王子を追って足を得るために、自分の声が出なくなるという試練も、心の内の声として歌い上げてしまうので、あまり苦難だという風に感じないのも問題。

最大の見せ場になるはずだった「アンダー・ザ・シー」も登場人数が少なくて空間が埋まっていなかった。黒衣ならぬ水後見の扱う魚の群れや大タコ、その他水中の生き物のパペットの表現も、ライオンキングの二番煎じに過ぎなくて感心しない。

唯一、素晴しかったのは紗幕越しに、水中に落ちていく王子をシルエット風に表現した部分で、詩的な雰囲気があって想像力が広がった。全体に暗い場面が多いのだが、最もダークな表現に魅力があるのは作品の雰囲気にもあっているように思う。ディズニー作品なので、人魚も怪物というよりも愛すべき存在に描かれているが、実際はダークな世界の人々なのではないだろうか。そのあたりを深堀すれば、面白い舞台になったろうが、表層的な演出で退屈に感じる部分が多数。

音楽的には、端整に歌われてはいるが、お互いに想いが交錯する様な重唱の部分は、まったく気持ちが通じあっていなくて厳しい局面が続いた。またアップテンポの曲では、出演者の熱さというものが伝わってこないので興奮とも感動とも無縁な舞台となってしまっていた。日本語が完璧でない出演者が多いのも原因だったかもしれない。最終的には悪が滅びるのだが、水戸黄門の印籠並にあっけなく滅んでしまうので驚かされる。面白いサブキャラクターも多いのだが、これまた生真面目に演じているのだが、面白さが伝わらないもどかしさがあった。

なにかとスタンディングオベーションをしたがる媚びたお客の多い劇団四季だが、ちょっと立ち上がりにくい舞台だったようで、熱狂のカーテンコールとならなかったのは、水中なのだから当然だったのかもしれない。

ミュージカルではないが、劇団四季のレパートリーには「オンディーヌ」という名作がある。同じ様な題材であるのに、落差が大き過ぎて落胆は大きかった。ブロードウェイで成功していない作品は、劇団四季ではヒットしていないという過去の事例がいくつもあるのに、何故取り上げたのか不思議である。



好奇心旺盛な彼女は、今日も幼なじみの魚、フランダーを連れて冒険へと出かけていく。

ある日、アリエルは航海中の船へ近付き、そこで人間の王子エリックを見つける。たちまち恋に落ちてしまったアリエル。しかし、船は彼女の目の前で嵐に襲われ沈没し、エリックは海に投げ出されてしまう。

溺れたエリックを抱え、必死に水面に向かうアリエル。浜辺まで運ぶと、歌を口ずさみながら介抱をする。朦朧としながらもアリエルの美しい歌声が脳裏に焼き付いたエリック。自分を救ったその声に惹かれ、声の持ち主である女性を必ず見つけると心に決める。

一方アリエルも、父トリトンの警告をよそに、地上への憧れとエリックへの恋心をますます募らせていく。そんな彼女に目を付けたのは、海の魔女―アースラだった。

アースラはアリエルに、「その美しい声と引き換えに、3日間だけ人間の姿に変えてやろう。この間にエリック
とキスを交わすことができれば、一生人間のままでいられる」という話を持ち掛ける。ただし、それが果たせぬ場合は、アリエルの魂はアースラのものになるという…。悩み戸惑うアリエルをアースラは言葉巧みに誘惑し、遂に契約書にサインをさせる。そして、アリエルの尾ひれは人間の足へと変わり、彼女は憧れ続けた陸の世界に向かうのだった。

実はアースラは、海の王トリトンの姉であった。自分を王宮から追放した弟を恨み続けていたのである。弟の愛娘アリエルの恋心を利用して、海の王の力を奪おうと企んだのだ。

何も知らないアリエル。ようやく人間の世界に辿り着き、エリックの王宮に招かれたものの、声を奪われた彼女は、自分がエリックを救い、彼が憧れる声の持ち主であることを伝えることかできない。

アースラとの契約の期限は刻々と迫ってくる。果たして彼女の愛の結末は…。


オリジナル・クリエイティブ・スタッフ

作曲アラン・メンケン
作詞ハワード・アッシュマン
    グレン・スレイター
台本ダグ・ライト
演出グレン・カサール
装置・衣裳デザインボブ・クローリー
振付ジョン・マッキネス
音楽スーパーバイザー、ボーカル及び附帯音楽アレンジマイケル・コザリン
オーケストレーションダニー・トルーブ
ダンス・アレンジメントデヴィッド・チェイス
照明デザインヘンクヤン・ヴァン・ビーク
音響デザインギャレス・オーウェン
パペット考案・創作トビー・オリエ
ヘア&メイクアップデザインシュールト・ディデンハロルド・マルテンス
フライングデザイン・振付ポール・ルービン
演出補クリスチャン・ドゥーラム.

『リトルマーメイド』グローバル・スタッフ

装置デザイン補ロズ・クムブズ
照明デザイン補エズラ・ホンモル
衣裳スーパーバイザーマリッツカ・ヴァン・アースト
衣裳スーパーバイザー助手モニーク・ヴァン・スプラング
小道具スーパーバイザーリジー・フランクル
電子音楽プログラマージェフ・マルダー.
シークエンス音楽担当マーティン・アースキン.
サウンド・スタジオ・エンジニア、ミキサーアリエン・メンシンガ
プロダクション・マネージャーケリー・マクグラス.

ディズニー・シアトリカル・プロダクションズ・ワールドワイド・スタッフ

プレジデント トーマス・シューマーカー
エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント&マネージング・ディレクターデヴィッド・シュレーダー
シニア・ヴァイス・プレジデント/マーケティング担当アンドリュー・フラット
シニア・ヴァイス・プレジデント/国際担当ロン・コーレン
シニア・ヴァイス・プレジデント/ビジネス法務担当ジョナサン・オルソン
ヴァイス・プレジデント/シアトリカルMD担当スティーブン・ダウニング
ヴァイス・プレジデント/クリエイティブ開発ベン・ファミグリエッティ
ヴァイス・プレジデント/財務・事業開発担当マリオ・イアネッタ
ヴァイス・プレジデント/プロダクション担当アン・クアート
ヴァイス・プレジデント/ワールドワイド・パブリシティジョー・クェンカ
ディレクター/国際戦略・プロダクション担当フェリペ・ガンバ
ディレクター/財務担当ジョー・マクラファティ
カウンシル/ビジネス法務担当ナイラ・マッケンジー
セス・ストゥール.アシスタント・マネージャー/マーチャンダイズマイク・ディカス
国際アシスタントリー・タグリン.シアトリカル/ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー(ジャパン)リツコ・オカモト.

日本スタッフ

日本語版歌詞・台本藤川和彦
翻訳協力井筒 節
日本語版演出助手 加藤敬二 礒津ひろみ 藤川和彦.


2013年4月13日(土) 13:00開演  終演予定15:35

キャスト

アリエル 谷原志音
エリック 上川一哉
アースラ 青山弥生
トリトン 芝 清道
セバスチャン 飯野おさみ
スカットル 丹下博喜
グリムスビー 星野元信
フランダー 大空卓鵬
フロットサム 一和洋輔
ジェットサム中橋耕平
シェフ・ルイ/リーワード岩城雄太

男性アンサンブル

斉藤准一郎 高橋基史 成田蔵人 権頭雄太朗 光田健一 南 圭祐

女性アンサンブル

加藤久美子 松本菜緒 観月さら 浅井美波 高瀬悠 三井莉穂 三平果歩


ミュージカルナンバー

第1幕

オーヴァーチェア

第1場
「トリトンの娘たち」

第2場
「海の上の世界」

「深海の秘密」

第4場
「パート・オブ・ユア・ワールド」
「嵐」

第5場
「パート・オブ・ユア・ワールド」(リプライズ)

第6場
「恋してる」

第7場
「パパのかわいい天使」

第8場
「あの声」

第9場
「アンダー・ザ・シー」

第10場
「海の上の世界」(リプライズ)
「もしも」
「いい子」

第9場
「不幸な声」

第2幕

間奏曲

第12場
「マエムキニ」

第14場
「どんな夢よりも」

第15場
「レ・ポワソン」

第16場
「レ・ポワソン」(リプライズ)

第17場
「一歩ずつ」

第18場
「パパのかわいい天使」(リプライズ)

第19場
「キス・ザ・ガール」

第21場
「もしも」(カルテット)

第22場
「コンテスト」

第23場
「もしも」(リプライズ)

第24場
「フィナーレ」
nice!(0)  コメント(3)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 3

むっしー

 天使さんは劇団四季は情熱がないとか思いが通じ合っていないとかいってますが、それは天使さんが感じ取ろうとしていないからではないのですか?舞台が始まる前から文句ばかり言って、どうして劇場に足を運ぶの?劇団四季の観客を批判することによって自分はすごいんだって思いたいだけなのでは?あなたの文章を読んでてミュージカルが好きだとは思えない。あなたにミュージカルを語る資格はない。劇団四季のセリフはあーだこーだと言ってますが、去年のミスサイゴンに出演していたある俳優が何言ってるかわからなく寝ました。帝劇、日生はデカすぎで何がいいかわからない。結論、あなたは日本一の劇団である劇団四季を批判して優越感に浸っているだけ。そんな人がミュージカルをかたるな。
by むっしー (2013-07-26 14:53) 

アップダイク

アースラの足と、ライオンキングのマペットの表現は全く違うよ。歌舞伎観ていてそれ位分からないかなぁ。まぁEXILEのライブで感激する程度の人なら仕方ないかぁ。評論家気取りは個人の自由だけど、観劇代、もったいないと思うよ。因みにわたしはプロの音楽制作者です。
by アップダイク (2013-07-27 21:50) 

NO NAME

中学生のような論と小学生のようなコメント。笑止。
by NO NAME (2014-02-19 11:18) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。