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祈りと怪物 ~ウィルヴィルの三姉妹~ 蜷川バージョン シアターコクーン [演劇]

18時30分開演で22時50分に終演という長大な芝居である。天使は終電で帰ることを断念して、東京へ泊まることになったけれど、それが少しも負担に感じない、長時間の観劇も全く苦痛にならなかった稀有な演劇体験をしたという感じである。

すでに先行して作者であるケラリーノ・サンドロヴィッチによる演出版が上演されていて、同じ作品を蜷川幸雄が演出するという趣向である。かつて同じシアターコクーンで上演された野田秀樹の『パンドラの鐘』と同様の試みである。KERA版は残念ながら観る事はできなかったが、若手からベテランまで実力のある役者が結集し、かつてのアングラ劇を思い出させるような、独特のテイストでの上演。さらに、本水の使用、終幕の舞台後方のドアの開放など、ケレン味たっぷりの仕掛けにあふれていて面白く観た。

物語は複雑怪奇、ありえない展開で、予想を裏切る結末まで用意されていていて楽しめる。架空の国の架空の人々が、陰謀と憎しみが渦巻く中、ほとんど全ての人が死んでしまうという、すさまじい物語が語られていく。

物語の進行は、ギリシャ劇のようにコロスによって行われる。蜷川演出では、コロスの男性は和風の紋付羽織袴、女性は留袖をまとっていて、本筋のドラマの登場人物たちと比べると、異形の人々といった感じで舞台を取り囲んで、録音したパーカションの音に会わせて「ラップ調」で、群読がなされるという、すでにコクーン歌舞伎などで試みられている手法を使う。

舞台の上に、演技スペースとなる長方形の舞台が組まれていて、舞台の下にベッドなどを収納できるようになっていて、多くの場面転換をスピーディーにこなしていた。ほとんど何もない劇空間だが、教会、ミラーになっている壁など、いつかどこかで試みられた手法が…。合唱隊が棒の上に糸で鳥をつけ、それを回転させることで生きているような、不気味な雰囲気を作り出すのだが、これって『ライオン・キング』の演出のパクリ?と思わせるほど似ていた。

かつてのテント芝居でも試みられていた、舞台後方が本物の街に向かって開かれ、役者が渋谷の町にさまよい出ていくことなど、コクーン歌舞伎でも試みられた手法である。さらに舞台の上手と下手の上部には、ト書きを文字情報として観客に提供する電光掲示板?が設置されていた。

一番の楽しみだったのは、原田美枝子、中島朋子、伊藤蘭という天使の世代のスターが出演するという顔合せの場面だった。お互いに歳をとったなあということで納得。

■作
ケラリーノ・サンドロヴィッチ

■演出
蜷川幸雄

■出演
勝村政信:ドン・ガラス(町の権力者でエイモス家のドン)
森田剛:トビーアス(内気な青年)
渋谷将太:ヤン(流れ者)
三宅弘城:パキオテ(錬金術師の助手で白痴)
橋本さとし:ダンダブール(錬金術師)
原田美枝子:バララ(ガラスの娘 長女)
中島朋子:テン(ガラスの娘 次女)
宮本裕子:マチケ(ガラスの娘 三女)
渡辺真紀子:エレミヤ(ドン・ガラスの妻)
石井愃一:ヤルゲン(エイモスファミリーの執事長)
大石継太:アリスト(エイモスファミリーの一員)
伊藤 蘭:メメ(アリストの妻 メイド長)
満島真之介:パブロ(トビーアスの友人)
新川将人:ローケ(仕立屋)
野々すみれ:レティーシア(ローケの娘)
村杉蝉之介:ペラーヨ(学校教師で活動家)
三田和代:(ガラスの母ジャムジャムジャーラ、トビーアスの祖母ドンドンダーラ)
古谷一行:グンナル(司祭)

富岡 弘、マメ山田、本城丸祐、妹尾正文、岡田正、清家栄一、福田潔、塚本幸男、澤魁士、土屋美恵子、蓬莱照子、野口和男、清水ゆり、池島優、前原麻希

1幕 1時間32分
( 休憩 15分 )
2幕 1時間
( 休憩 15分 )
3幕 1時間18分

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合計 4時間20分


物語
北回帰線と南回帰線の狭間にある架空の町に、祖母と二人で暮らす内気な青年。町を牛耳っているのは強欲で好色な町の権力者。彼の三人の娘は、それぞれに複雑な事情を抱え、やがて町を揺さぶる大事件に発展する―。
町の権力者の後妻と百歳を越える母親、子供を亡くした使用人夫婦、テロを企てる市民たち、怪しげな教会の司祭、謎の錬金術師と白痴の助手、そしてよその町からやってきた放浪の若者。幾多の登場人物が壮絶に絡み合う一大クロニクル。
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