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再現・その2 NHKラジオ深夜便「輝いて生きる」 畑中良輔・更予米寿&卒寿記念コンサート [音楽]

収録(インタビュアー:水野節彦)
2010年3月2日(火)自宅にて

放送(アンカー:石澤典夫)
2010年3月10日(水) 午前1時12分より

再現・その1

(敬称略)

更予 だけどね。

良輔 こんなに素晴らしい歌、小学唱歌ひとつ歌って涙流させる。

更予 教わらないからよ。

良輔 そういうの今いない。

更予 勝手に歌っているだけなの。

良輔 だから、いや僕は生後すぐにヨーロッパでも行けてた時代だったら、当然、もうヨーロッパの女王になってたはずだと思う。

更予 あの、実はね、行くはずだったんです。父はね、お金がないから、そういうのできないけれど、お友達がイタリアで、コロラトゥーラはイタリアじゃなきゃダメだから、そしたら、そのおじさん名前も忘れちゃったけれど、戦争になったら一に死んじゃった。それで、もう全然。それにあたし、あのコロラトゥーラってね、別にあんまり好きじゃなかったの。自分の声が。

水野 そうですか。

更予 そして、日本の歌っていうのでね、本当にその「四季の歌」もそうですけれど、低くて、ちょっとコロラトゥーラには辛いんですけれど、日本の歌曲の方がね、本当にその詩の心が歌えるので、そういうのに目覚めて、日本歌曲が好きになったんです。だから外国の歌は、あの色んな国のを勉強したけれど、やっぱりドイツリートが一番好きなんですね。それは詩の心が本当にね、深く表現されているから。で、詩の内容がねえ、日本の「月」「雪」「花」のような情感の世界だけじゃなくてね、やっぱり哲学があっての芸術でしょう。だからね、そこの、そこから湧いてくる詩のね、深みっていうのが、ドイツリートに一番感じられるから、それでドイツリートばっかり好きになっていったんです。39歳のときに、すっごく、あの、身体が悪くなって、それで、この人は世の中に出ていかなきゃならない時期になったでしょ、それで別居をして、私があの、声もなにもでできなくて筆談をしたりして、生徒を教えたの食べていかなきゃいけないから。そうすると、あの生徒が今でも私の筆談のレッスンをとったりする子がいるんです。で、良輔はねえ、オペラのいろんな本をだしていますでしょう、ああゆうんで大変で、もう私のことなんか離れているからわからない。だから、いつも死にそうなときは、ひとりぼっちなんです。あのね、とってもお医者はね、あなたの顔見ると嫌になります。なんていうくらい凄まじい発作を起こすんです。で、だから知らないですよ。仕事、仕事。

良輔 やっぱり転地しないと、喘息なっていうのはね、やっぱりしょうがないし、僕もねえ。

更予 だから、

良輔 朝から晩まで、学校と演奏とオペラと、全国、でもなんとか全国、日本の歌うたって、二人で回っていました。

更予 別れているときも電話夫婦でね、電話はよくくれましたけれど、そのときは、喘息じゃないからしらないんですよ。

水野 そんな時代もあったんですか。

良輔 だって戦後、働かなきゃ食えないじゃないですか。明日、買う豆腐のお金もなかったね、我々ね。

更予 だから、私はN響の人たちとバンドを組んで、進駐軍のところに歌いに行って、その時は良輔より私の方がお金がとれたのよ。そういう時代もあった。だって戦争がが悪いから、この人、全然文無しになったんですもの。

良輔 彼女、発音が素晴らしんですよ。たから、やっぱり進駐軍のオフィザーズクラブなんかで歌うと、一番彼女がよく、綺麗な英語で、歌うんだよ。

更予 知らないけれど、よく進駐軍の人たちが泣いたりして、将校が出てきてね、ごめんなさいって、みんなホームシックになっちゃったって言ってね。

良輔 だから、そのころ、僕もジャズ歌って、あの帯番組で朝9時15分くらい毎日あるんですよポピュラーの時間、それほとんどジャズ歌っていました。そして伊原健二っていう名前でやってた。もう芸大の先生も知っていたから、そしたら「ダンスと音楽」という本で、大型ジャズ歌手現るってねえう出たんですよ。

水野 紹介されたんですか。

良輔 うん。

水野 ジャズ歌手、畑中良輔。

良輔 でも更予もポピュラー歌って、それはN響の人たちが伴奏で、その日、どんな編成になるかわかんないから、僕が編曲していました。

水野 そのときでも、オペラというものは、やっぱり自分のめざすものだと思われてたわけでしょう。

良輔  目指すと、けっこうそれをやらないことには、

更予 だって生きるために大変だったんですよ。

水野 生きるためにジャズを歌い、生きるためにオペラを歌ったんですか。

更予 いや、だってそれ皆そうでしょう。

良輔 好きです。ジャズが好きだったし、だからヒットキットていうね、あの当時GIたちのために、その新しいポピュラー、ジャズのパンフレットが来るんですよ。それから新しいジャズをThat's only pepper moonだとかね。彼女はね、

更予 年柄

良輔 サンダーズなんてうまかったじゃない。

更予 シンコペが楽しくて、私大好きだけれど、その頃日本人てシンコペショーンがとっても

良輔 シンコペショーンは節分をね、ウパ、ウパ。

更予 それが大好きでね、

良輔 だから生活のためと、やっぱり僕、ポピュラーやったことが、今のよく司会業をやるけれど、聴衆がどんな音楽にどう反応するかとか、そういうポピュラー畑でずいぶん勉強した。

更予 でも、あのクラシックの人がね、畑中良輔ともあろうものが、ジャズ歌手になったなって言われて、私びっくりしたことがあります。

水野 そりゃ、そうでしょうね。

良輔 コロンビアが言ってきたんですよ、専属はいかがですかとか。新宿のコマができる前で、そこの音楽の支配人がやってきて、そこの音楽監督やってくれとか、でも、もうすでに芸大では助教授やってたんで、芸大をとるべきか、ポピュラーをとるべきか、ポピュラーをとってたら、今頃御殿に住んでたかかもね。

水野 ああ、そうですか。

良輔 あの戦後のあの混乱期が、僕にとっては非常に凄い経験ていうのか、人生体験、普通そのままいって、学校の先生してたら、アカデミックな教授になっていたかもしれないですねえ。

水野 で、今、わたしたちがこう、先生の定着しているのは、モーツァルト歌手っていうのが定着していますけれれど。

良輔 あの僕は、まるっきり大きな声で生まれてないんです。イタリアオペラ歌うような。

更予 でもパパゲーノがね、モーツァルトって言われるのは、モーツァルトの「魔笛」のパパゲーノはね、観たときは、私はオペラ嫌いなんですけれど、良輔は全くね、そのものがパパゲーノみたい、本当によく似合うと思ってね。

良輔 一番数多くやったのは、もう百何十回やってます。パパゲーノ。その相手役を彼女がやりましたけれど。

水野 そうですか。

良輔 二人で踊るんですけれど。

更予 あんまり好きじゃないんですけれど、この人が出てくると、何にもオペラやってないのに、お客さんが手を叩いちゃうんです。出てきただけで、パパゲーノの感じになっちゃう。

良輔 川端康成先生が、とっても僕のパパゲーノが好きでね、パパゲーノやるたびに、鎌倉からご夫妻で川端先生がよくいらした。鳥をとって女王様にあげて、自分が食べ物をもらうという、走り回るんですね。あの、野原やあれを自然児です。だから鳥の羽つけて、

更予 三枚目なんです。この人、三枚目が似合うの。でもね、二枚目半だなんて言うんですよ自分で。それを本番で言ったりする。なんか、それが自然、ごく自然。全然、良輔らしい感じがねお客さんにうけるのね。作ってないのね。だから、役をつくらなけいけなくてね、オペラはオーケストラを越える声をださなきゃいけないから、皆なん皆、緊張感つくるのね。自然のまんま。それが、

良輔 僕、初めて魔笛やったときは、中原淳一さんが楽屋に遊びにいらして、「ああ、畑中さん顔描いてあげようか」って、あのころは自分でとメーキャップして、今はメーキャップ師がいて、オペラは専門化されて、昔は自分で書いたもんですよ。そんで、中原淳一さんが描いてくれた。で、どんな衣装ですけかって言うから、さっき言ったように綺麗な鳥の羽、いっぱい着て出てくる、それ見てハッーていってね、どんな顔か描かれたか知らないの僕もね、もう開演で「畑中さん、板附ですよ」て言われて、そのまま舞台に出た。一幕終わったら、指揮者がマンフレット・グルリット先生だった。「畑中さん、マエストロが呼んでます。怒ってます」って言うからね、何怒られているかわからないから、行ってみた。「Look your face」て言われたんですよ。

水野 顔を見ろと。

良輔 うん、で僕どんな顔かよくわかんないから、鏡のところで観たら、貴公子みたいな王子様みたいな、

水野 美少年?

良輔 もう、美少年、色気があったかな?それであわてて、二幕になって顔汚して、日焼けした茶色なった真っ白の顔が、だからお客さん、なんで二幕になったら茶色になったかと思った人がいたかもしれない。

水野 それは、そうですね。

良輔 うん。

水野 混乱しますよ、こりゃ。

良輔 でも、初演だったからね。

更予 でも顔はそうでもね、その柄がね、オペラの役として本当にぴったしはまっている。そんときね良輔のパパゲーノだったら、誰にでもすすめたの。ほかのは、まあどうぞって、あんまりオペラ好きじゃないもんですから。

良輔 次に立川澄人君が出て、僕がやっている役どころを受け継いで回った。

(つづく)
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