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藤十郎の大津絵道成寺とマイケル・ジャクソンのTHIS IS IT@IMAXシアター [エッセイ]2009-11-15 [エッセイ アーカイブス]


今日は国立劇場で歌舞伎を見物してから、川崎のIMAXシアターで「マイケル・ジャクソンのTHIS IS IT」の6回目(まだ、たったの6回!)を観た。日本に3箇所しかないIMAXシアターが川崎にあり、画面はフィルムではなくデジタル上映でクリア、音響も素晴らしいと聞いたので川崎まで遠征したのである。都会のシネコンは、PCでチケットが簡単に予約できるので便利。ただしロビーなどパブリックのスペースがとっても狭いのが玉に瑕である。混雑時にはどうするのだろう?というくらい狭くて驚いた。

 さて、そのIMAXシアター。つくばの科学万博?で初めて体験して、10数年前にニューヨークのメトロポリタン歌劇場の近くにオープンしたてのときに見物にでかけた。スクリーンは建物の4階分とかで確かに大きいのだが、上映していた作品は面白くない自然のドキュメンタリーだった記憶がある。新宿の高島屋のビルにもIMAXシアターができたのだが、観たいと思う作品がかからないので出かけないうちに閉鎖されたようである。

 川崎のIMAXシアターは、IMAX用のフィルムで撮影した作品でなくとも、デジタル処理でIMAX化でき、さらに3Dも可能なのだとか。確かにフィルムでの上映ではないので、画面がとってもクリア。フィルム上映では見えなかった画面後方のスタッフの姿まではっきり映っていて驚く。音響も大変素晴らしく、地元のシネコンがラジカセだとすると、こちらは本物のコンサートのPAで聞いているサウンドのようだった。スリラーなど、今回撮影された部分の映像の美しさIMAXシアターならではで、細部の美しさはフィルム上映を遙かに凌駕していたと思う。
 
 もっとも不満もあって、IMAXシアターとはいうものの、超巨大なはずのスクリーンはビルの中のシネコンゆえに実現できなかったようで小さめ。それでも床から天井までと横幅を目一杯つかっているので、視界一杯にスクリーンは広がる感じ。往年の映画ファンなら、シネラマ劇場で有名だったテアトル東京のスクリーンが湾曲していない感じといえばわかってもらえるだろうか。

オリジナルがビスタサイズの映画をシネスコサイズの画面にしたようなので、オリジナルの画面に出てくる日本語字幕の上端がスクリーンの最上部ということで、そこから上はちょん切られたようである。何度も観ているファンなら気になるかもしれないが、初めてなら問題ないレベルではあったと思う。

客席はスタジアム形式で前の人の頭が気にならないはずだが、スクリーンが床ぎりぎりまでなので、ちょっと背伸びされると頭が気になることもあった。そんなこんなで巨大でクリアな映像と最高の音響で映画を楽しんだのだが、最低だったのは今日の観客。19時20分から1日1回だけのIMAXでの上映だけに満席だったのはいいが、上映中に出入りする観客があまりに多くて閉口。天使の前も横切った観客がいて呆れた。

さて、今日の国立劇場の感想は後日にするが、「外郎売」、「傾城反魂香」、「大津絵道成寺」という狂言の並べ方は洒落ていた。大津絵の絵師である又平が主役である「傾城反魂香」が團十郎と藤十郎の共演で一番の話題なのだが、その後に大津絵から抜け出た藤娘が道成寺を踊るという藤十郎にしかできないような趣向の変化舞踊が面白くて派手で楽しめた。しかも最後に矢の根の五郎がでてきて、「外郎売」とも関連するという念の入れようである。

五変化の中では、いなせな船頭が素敵だったが、それを観ていてマイケル・ジャクソンを思い出した。スキャンダル先行で マイケル・ジャクソンは、ここ10年間は音楽活動らしいものしていなかった。この映画は再起をかけたコンサートに向けてのリハーサルだった。この映画を観るまでは、彼は表現者であっても、創造者であることを辞めたのだと思っていた。今回のロンドン公演には新曲はなく、ファンは大喜びだが意地悪なことをいえば懐メロ大会といってもいい内容なのではと思ったくらいである。

ところが藤十郎の「大津絵道成寺」を観ていて、違った感じ方をしたのである。藤娘も娘道成寺も、彼にとっては自家薬籠中の演目である。それを解体して全く新しい演目、それもかなり洒落の効いたものに造り替えてみせたのである。しかも一巴大夫や里長など超一流の演奏者を従えての上演である。歌舞伎は同じ演目を何度も何度も演じる。新作がでることはめったにない。それでも毎回新鮮に感じられるのは、作品のよさ、特に古典作品の奥深さによるに違いない。

マイケル・ジャクソンにも、それが当てはまって、既成の人気曲も、すでに古典の域に達していたのである。だから何度同じ映像を観ても飽きないし、毎回新しい発見がある。さらにかつてのような演奏やダンスの振り付けの単なる再現ではなく、現在の彼の最高のパフォーマンスを実現させようとしていた姿に感動させられた。ロンドンの50回公演が実現していたら、完成度はどこまで達していたか想像もできない。それだけの可能性がリハーサル映像に秘められていたように思えてならない。

最高にクリアで大きくて迫力のある映像のおかげで、マイケルジャクソンの瞳の奥底の表情までもが読み取れたのは今回の大きな収穫である。たぶんリハーサル当初の不安と緊張が見え隠れする部分もあれば、かつてのヒット曲に心底楽しそうに歌っているのだと判って、思わず涙ぐんでしまった曲もあった。実際、サングラスの奥の目の表情までも読み取れるとは恐ろしいまでのデジタル映像である。バックダンサーやコーラス、バンドの表情や心の中まで想像できるので、情報量は格段に多くなったようである。遠くに映っているスタッフのおじさんの表情まで見えるとはIMAX恐るべし。

最後には満員の観客から遠慮がちながら拍手まで巻き起こって、川崎まで遠征した甲斐があったというものである。もう一度観たいが川崎まで行く暇がないのが、かえすがえすも残念である。地元のシネコンは避けて隣町まで、また出かけてみようと思う。今回一番受けたのは、マイケルとスタッフが円陣を組んで手をつなぎ、マイケルがスピーチしている場面。画面左に映っているパーカッション担当のバンドメンバーのTシャツの模様。何が描かれているのかは映画を観て確認してください。とにかく受けて、感動的な場面なのに笑いをこらえるのが大変でした。何なの?あれ…。

2009-11-15 23:31
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