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ポリニャックのサロンで ~ポリニャック邸の3つの演奏会をめぐって~ 花岡千春リサイタルシリーズ 2009-1 [演奏会]2009-06-17 [演奏会 アーカイブス]

2009年6月13日(土) 18時開演 
東京文化会館小ホール
ピアノ:スタインウェイ 調律:武田陽一

18:00 ピアノ:花岡千春P.A.ソレール:ソナタ嬰ヘ長調、M.アルベニス:ソナタ二長調、
C.ドビュッシー:アナカプリの丘(前奏曲集第1巻より)金色の魚(映像第2集より)
M.ラベル:悲しい鳥たち(「鏡」より)、フォックス・トロット(オペラ「子供と魔法」より)
E.サティ:木製のふとっちょ人形へのスケッチとからかい
1.トルコ風チロル賛歌 2.痩せた踊り:あの諸氏のやりかたで 3.エスパニューニャ
F.プーランク:ハ調の組曲
1.プレスト 2.アンダンテ 3.ヴィフ(生き生きと)
I.アルベニス:エボカシオン、港(「イベリア」第1集より)、
F.モンポウ:歌と踊りの第4番、E.ハルフテル:ジプシーの踊り
1938年1月18日(月) Ricardo Vinesのリサイタルの再現

19:30 ソプラノ:小泉恵子
E.サティ:声とピアノのための《ソクラテス》
ヴィクトール・クザン仏訳のプラントンの対話に基づく3つの交響的ドラマ
1.ソクラテスの肖像
2.イリソス河の岸辺
3.ソクラテスの死
1924年9月初頭(ヴェニスのポリニャック別邸で) Marya Freundのリサイタルの再現

20:15 ヴァイオリン:小林美恵
I.ストラヴィンスキーの作品による
デュオ・コンセルタント(1932)
1.カンティレーヌ 2.田園詩Ⅰ 3.田園詩Ⅱ 4.ジグ 5.感激的叙情詩 
「火の鳥」より《子守歌》《スケルツォ》、「ペトルーシュカ」より《ロシアの踊り》、
「ウグイスの歌」より《アリア》《中国の行進》
1.序曲 2.セレナータ 3.タランテッラ 4.ガヴォットと2つの変奏 5.スケルツィーノ 6.メヌエットとフィナーレ
イタリア組曲~ペルコレージのテーマによる~
1932年12月7日(水) Samuel Dushkin,Igor Stravinskyのリサイタルの再現

20世紀の初頭、パリのミューズは六人組やストラヴィンスキーのパトロネスとして新しい音たちの誕生に絶大な助力を与えた

 休憩を含めて3時間を越える演奏会となった。20世紀の初頭にパリのポリニャック邸で催されたサロンコンサートを再現した意欲的なプログラムである。新しい音楽を発表する場を与えられ、またそれを享受し、その真価を見いだしたポリニャック夫人の功績をたどることになった。「ベルサイユのばら」の登場人物として有名な美しき陰謀夫人ポリニャック伯夫人の子孫が今回の主役である。音楽ばかりでなく、バレエ・リュスのディアギレフにも支援をしたようである。

 第1部は、リカルド・ヴィニェスのリサイタルの再現で花岡千春のピアノである。安川加壽子に師事し、フランスに留学していただけあって、フランス的な音楽を奏でていたように思う。特にドビュッシーの曲の冒頭の音の美しさは比類がないもので、その繊細な響きは、まさに「音楽の天使」が舞い降りてきたようで、知らず知らずのうちに涙があふれて止まらなくなった。きっと1938年のポリニヤック邸に集った人々も同じ思いを味わったのではないかと思った。

 今宵の白眉は、第2部のサティによる『ソクラテス』である。4人の役柄を一人の女性歌手が歌うのがピアノ版の特徴だという。舞台の両脇には、オペラで使うような字幕装置が置かれていた。第2部だけのために字幕装置を用意するというのはソロバンの合わない話だと思うが、その効果は絶大で舞台上で何が歌われているのか、ピアノの伴奏は何を語ろうとしているのか、非常に理解しやすいのである。

 最も感動的だったのは、自ら遵法精神にもとづき、毒薬を飲むように命じられ法律に従ってそれを受け入れるソクラテスの精神の美しさを雄弁なピアノと説得力のある歌唱で、驚くほど深い世界を描いた部分で圧倒された。特にソクラテスの死の場面の崇高なまでの音楽の美しさには深い感動があった。演奏が終わってからもしばらく立ち上がることもできず、休憩時間はひたすら自分の生き方などをふりかえる時間となった。

 第2部が、あまりにも感動的だったので第3部の印象が薄くなってしまった感もあるが、今でも十分に新しい音楽が当時の人々に受け入れられたことに驚きを隠せなかった。ヴァイオリンの奏法にも新しい試み?がなされていて、当時の人をも驚かせ感動させたに違いないと思うと、それだけでも胸が熱くなった。無料で配布されるプログラムの編集もピアニスト自身の渾身のコラムも筋が通った意見である。

2009-06-17 00:35
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