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蝶々夫人 二期会 10月10日東京文化会館 [オペラ]2009-10-10 [オペラ アーカイブス]

 昨日から始まった二期会の「蝶々夫人」へでかける。三連休の初日ということもあり、さらにオーディションで選ばれた新人の公演ということもあって、2300人入る会場なのに、埋っていたのは1階席の中央ブロックだけで、1階から5階までのR席とL席のブロックには、ほとんど人がいない惨憺たる入り。ロビーには、銀座三越の着物フェアの展示があって、訪問着が何点か飾られていた。さらにベンツのE300が置かれていて、自分の買ったベンツをヨーロッパで試乗でき、さらに日本までデリバリーしてもらえるというサービスの宣伝をしていた。でも、二期会の客層にはマッチしていない販促だったような気がする。

 さて定評のある栗山先生の「蝶々夫人」の演出。オーケストラピットの背後の壁に蒔絵風の草花が描かれていて舞台床面から障子にまで広がっているという舞台美術。しだれ桜に囲まれ、歌詞の中にも出てくるように、南蛮船の大きな屏風が背景に置かれ、さらに柳、老松の屏風などが置かれるという、華麗な装飾でありながら、能舞台を思わせるような簡素な二重舞台で演技が繰り広げられるというバランス感覚が見事だった。

 第一幕は、下手側に障子屋台が、上手側に階段状になった丘?がある。舞台中央には結納品が置かれ、下手には長持ちが置かれている。蝶々さんの家紋が丸に揚羽蝶だったりと細部へのこだわりは日本人の演出家ならではだった。演出家生活50年以上であり、現役最長老であるだけに安心してみていられるのが何よりだった。

 最も感心させられたのは、蝶々さんの登場場面で、芸者の出の衣裳で登場した合唱団に続いて、蝶々さんが出るのだが、その衣裳の好みは「らしゃめん」そのもので、外国人の妻になる覚悟のようなものが感じられて、涙がポロポロと流れた。全編を通じて素晴らしかったのはこの部分だけというのは寂しい気もするが、オペラだけああって、いくら演出がよくても音楽が充実していないと感動には至らない。

 歌手で足を引っ張ったのは、ピンカートンの小原啓楼で第一幕の後半から幕切れまで、あんなに心のこもらない二重唱を聴いたのは初めての経験だった。あまりに何も伝わってこなくて、退屈の極みだった。ここで二人の愛のありようをみせておかないと、第二幕以降は蝶々さんの真の愛が生きてこない。それなのに、あの歌唱では何もかも嘘になってしまう。二期会でのテノールの人材不足は深刻だと思った。

 さらに呆れたのは、指揮者のジャック・デラコートの音楽づくりである。しばしばゲネラルパウゼが挿入されて音楽が止まってしまう。どうして、ここで音楽が止まるのか・・・。まったく理解しがたい指揮ぶりで、何もかもぶち壊していた責任の大半は指揮者にあるように思えた。そうかと思えば、無意味にあおるような粗雑な音楽を奏でて、せっかくの「蝶々夫人」が台無しになった。そう思うと、動員の面では観客の臭覚は正直なのかもしれない。


会場: 東京文化会館 大ホール(JR上野駅公園口前)
公演日: 2009年10月10日(土)14:00

開場は開演の60分前/上演予定時間:約2時間50分(休憩を含む)

指 揮:ジャック・デラコート
演 出:栗山 昌良

舞台美術:石黒 紀夫
   衣裳:岸井 克己
   照明:沢田 祐二

舞台監督:菅原 多敢弘
公演監督:高 丈二

蝶々夫:文屋小百合
スズキ:小林 由佳
ピンカートン:小原 啓楼
シャープレス:久保和範
ボンゾ:三戸 大久
神官:渥美 史生
ゴロー:栗原 剛
ケート:谷原めぐみ
ヤマドリ:境 信博

合唱:二期会合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団

2009-10-10 23:30

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