SSブログ

バレエ・フォー・ライフ モーリス・ベジャール・バレエ団 2008年日本公演 [バレエ]2008-06-14 [バレエ アーカイブス]

6月14日(土) 15:00開演 / 東京文化会館

イッツ・ア・ビューティフル・デイ: カンパニー全員
フレディ: ジュリアン・ファヴロー
タイム/レット・ミー・リヴ: カンパニー全員
ブライトン・ロック:ダリア・イワノワ、エリザベット・ロス、ティエリー・デバル
          ジル・ロマン、カテリーナ・シャルキナ
          オクタヴィオ・デ・ラ・ローサ、ルイザ・デイアス=ゴンザレス
ヘヴン・フォー・エヴリワン:アレッサンドロ・スキアッタレッラ
                ジル・ロマン
天使: エクトール・ナヴァロ
ボーン・トゥ・ラヴ・ユー: エリザベット・ロス
              ダフニ・モイアッシ
モーツァルト「コシ・ファン・トゥッテ」: ジル・ロマン、カテリーナ・シャルキナ
                      オクタヴィオ・デ・ラ・ローサ、ルイザ・ディアス=ゴンザレス
モーツァルト「エジプト王タモス」への前奏曲: ジル・ロマン
ゲット・ダウン・メイク・ラブ: カテリーナ・シャルキナ、ジル・ロマン
                ダリア・イワノワ、ティエリー・デバル、ジュリアン・ファヴロー
モーツァルト「協奏曲第21番」: ダリア・イワノワ、ティエリー・デバル
                   アレッサンドロ・スキアッタレッラ、ヴィルジニー・ノペ
シーサイド・ランデヴー: カトリーヌ・ズアナバール
テイク・マイ・ブレス・アウェイ: カテリーナ・シャルキナ、ジル・ロマン
モーツァルト「フリーメーソンのための葬送音楽」:ジル・ロマン
Radio Ga Ga: ドメニコ・ルヴレ
ウインターズ・テイル: オクタヴィオ・デ・ラ・ローサ、アレッサンドロ・スキアッタレッラ
             ヴィルジニー・ノペ
ミリオネア・ワルツ:那須野 圭右
            ジュリアーノ・カルドーネ、ヨハン・クラプソン
            ニール・ジャンセン、ヴァランタン・ルヴァラン
ラヴ・オブ・マイ・ライフ―ブライトン・ロック:ジル・ロマン、カテリーナ・シャルキナ
                         オクタヴィオ・デ・ラ・ローサ、ルイザ・ディアス=ゴンザレス
ブレイク・フリー(フィルム): ジョルジュ・ドン
ショー・マスト・ゴー・オン: カンパニー全員


 前回の来日公演から2年。10年間で4演目の「バレエ・フォー・ライフ」の舞台である。さすがに前回の五反田・簡易保険ホールでの上演が最後だとばかり思っていたら、ベジャールが亡くなって追悼公演という位置づけになったらしい。前回は、あまり感動がなく、むしろ「愛、それはダンス」の方に、ベジャールの惜別の想いが込められていて切なくなり、ホールから大崎駅まで泣きながら歩いたのが、ついこの間のことだと思っていたら、もう2年の歳月が流れていたとは。そして日本初演から10年が経過したのである。

 クラシック音楽とオペラをこよなく愛し、ロックは苦手だとばかり思っていた友人のCypressさんと席は別だが一緒に観劇。終演後、食事と飲みに出かけるため公園口から上野駅前に続く坂道を「ベジャールは天才だね…」とつぶやいただけで、二人は黙って歩いた。ホームに出るまでお互いに顔を見あわせることができなかった。涙が止めどもなく溢れたからである。何よりも二人の心を激しく揺さぶったのは、このバレエは、ベジャールが愛したジョルジュ・ドンに捧げられたこと、そしてベジャールが本当にドンを愛していたことを、この舞台を通じて知ったからである。

 天使とCypressさんとベジャールとの共通点があるとすれば、ともに最愛の人を亡くして苦しんだ経験があるということだろうか。この作品の最後にドンの映像が流れる。道化の姿で十字架に架けられ、そのあまりにも悲しげな目は観る者の心を震わせずにはおかなかった。けっして美しい姿ではなく、悩み苦しんでいるかのようなドンを、あえてここに映し出さずにおれなかったベジャールの深い愛に感動した。

 そして天使自身も7年前に亡くなった最愛の人に同じように愛されていたのだという記憶が怒濤のように押し寄せてきて、次のショー・マスト・ゴー・オンからカーテンコールまで泣き通しだった。そう10年前、六本木駅から日比谷線に乗って、東横線を経て桜木町へ。バスに乗り換えて神奈川県民ホールの「バレエ・フォー・ライフ」日本初演へ出かけたことが、その日の空気の色までも鮮明に蘇ってきた。理解しがたい奇妙な作品を創作することも多かったベジャールの傑作に立ち会ったこと。絶大な人気のあったジョルジュ・ドンを追悼する意味もあって、劇場内には異様な熱気に満ちていたこと。そしてカーテンコールでは、ベジャール自身が舞台の中央に立ち、ダンサー達と舞台端に進んできたこと。観客は今日の観客以上に熱狂し、自然発生的にスタンディング・オベーションで応えた。

 同性愛であろうとなんであろうと、亡くなった最愛の人にこれ以上の贈り物はなかっただろうバレエ作品。終演後、ニューグランドホテルのイタリア料理店で彼と二人で食事をしていると、NBSの佐々木氏、広渡氏らに引き連れられてバレエ団の一行が店に入ってきた。ジル・ロマン、そしてベジャール自身も!二人は食事を中断して拍手で彼らを迎えた。まるで映画の1シーンのようだった。ベジャールは、あの美しい目で二人を見つめて感謝を表してくれた。でも、その瞳には悲しみの色があったような気がする。それから3年後、今度は天使が同席していた最愛の人を失うことになるのだが、もしかしたらベジャールは天使達の運命を知っていたのかもしれない。そう思えてならないのだ。

 もし今日の「バレエ・フォー・ライフ」を退屈に感じたならば(実際に途中で退場してしまった老紳士がいた)、エイズで亡くなったジョルジュ・ドンがどんなに素晴らしいダンサーだったか、その最晩年の舞台が「死の影」に満ちていたこと、そしてこれ以上はないほど、惨めで寂しい死に方をしたかを知らないに違いない。あるいは、最愛の人を亡くしていない幸福な人か、未だ最愛の人に出会えない不幸な人に違いない。

 本日のキャストは、ジル・ロマン、ジュリアン・ファヴロー、エリザベット・ロス、 カトリーヌ・ズアナバール 、オクタヴィオ・デ・ラ・ローサら最強のキャスト。今が旬、賞味期限ぎりぎりといった感じで、もし数年先にまた再演?ということがあっても、このキャストでの再現は困難ではないかと思われる。もちろんダンサーの側にもそうした想いがあるのか、情熱をこめて踊っているのが痛いほど伝わってきた。

 ノリノリになりたい気持はわかるが、客席後方から観客をリードしようという意図がみえみえの拍手が実に耳障り。追悼公演なので、舞台に対し積極的な反応は、かえってマイナスのような気がした。Radio Ga Gaの手拍子はちょっとしてみたかったけれど…。もちろん積極的な生命への讃歌がテーマのバレエ作品ではあるが、舞台を覆い尽くす「死の影」がつきまとっていたように思う。それでも振付家の死は、少しずつ舞台への緩みになっているようで、完成度が足りない部分も散見された。他の作品同様、ベジャールの作品をいかに継承していくかが、このバレエ団の課題になるであろう。16年前に亡くなったドンやベジャールのことを知らないダンサーが増えてくるのかと思うと少し心配。

 いろいろな曲で構成されている作品だが、冒頭のイッツ・ア・ビューティフル・デイの比類なき美しさ(天使の携帯の着うた)、ボーン・トゥ・ラヴ・ユー(天使のカラオケ・レパートリー)のエリザベット・ロスのスケールの大きなダンス。そしてすべての彼の登場する場面で圧倒的な存在感をしめしたジル・ロマンの素晴らしさ。そして何よりもモーツァルトとクイーンの楽曲にバレエを振付をするという破天荒な試みを成功させたベジャールの天才ぶりを改めて思いし知らされた。

2008-06-14 23:46
nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 0

コメント 1

Tadalafil 10 mg

沒有醫生的處方
cialis canada http://kawanboni.com/ Cialis bula
by Tadalafil 10 mg (2018-04-14 06:19) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。