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九月文楽公演 第1部 夏祭浪花鑑 [文楽]2007-09-26 [文楽アーカイブス]

 開演前に国立劇場近くの平河天満宮へお詣りに行く。マンションやらビルに囲まれた狭い境内だけれど、昔読んだ岡本綺堂の日記にはたいそうな賑わいが書かれていたので由緒正しい神社なのだろうと思う。第二部では「菅原伝授手習鑑」が上演されるので天神様へ手を合わせるのも意味のないことではないように思えた。毎回引くことにしている「おみくじ」は「末吉」だった。あまり運勢はよくない模様…。

 さて第1部は「夏祭浪花鑑」の半通し上演である。作者が「菅原伝授手習鑑」と同じ並木千柳、三好松洛、竹田小出雲というのも興味深いし、「鑑」という文字が外題にあるもの何やら意味ありげに思えてくる。

 住吉鳥居前、内本町道具屋、道行、釣船三婦内、長町裏、田島町団七内という場割である。住大夫、人間国宝になった綱大夫、咲大夫と充実した顔ぶれが揃い、同じく人間国宝になった清治が若手のホープ千歳大夫と登場と聴き所の多い公演となった。その中でも一番感心させられたのは「住吉鳥居前の段」の奥を語った松香大夫である。

 いささか世間とはズレてしまったような上方の全身に刺青をいれた若者を活写して見事に語っていくのである。牢から出たばかりなのに、直ぐに喧嘩をしてしまう救いのない危うい若さを言葉のはしばしに忍ばせて唸らせてくれた。これほど実力のあるひとだったとは大いに見直した。

 「道具屋」から「道行」は歌舞伎ではほとんど上演されない場面だが面白く観た。道行の残酷な展開も人形だと笑ってみていられるから安心である。歌舞伎と違って余計な思い入れの演技がなくトントンと話が運んでいくが、無軌道な若者を語るには良いテンポだと感じた。「釣船三婦内」の住大夫、「長町裏」の綱大夫、「田島町団七内」の咲大夫と文楽を聴く楽しみを改めて実感させてくれる素晴らしいもので一瞬も気をぬけない緊密な劇空間が広がっていたように思う。

 人間は団七を遣った勘十郎が迫力があって大きく、蓑助のお辰はむせかえるような色気が横溢。玉女、和生らの世代が活躍して、これまた充実した舞台を見せてくれて満足させてくれた。この舞台は間違いなく「大吉」だったと思う。


2007-09-26 23:12
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