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袈裟と盛遠 日本オペラ協会公演 日本オペラシリーズ No.75 国立劇場中劇場 [オペラ]

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歌舞伎だと国立劇場でも上演された南北の『貞操花鳥羽恋塚』。映画になると衣笠貞之助監督の『地獄門』。
人妻の袈裟御前に盛遠が横恋慕というかストーカーのようにつきまとい、夫の身代わりになって袈裟御前が盛遠に殺されるという物語。愚かで身勝手な主人公なので、なかなか共感できないのだが、第3幕は自ら愛する人を殺してしまったのがわかり盛遠の苦しみを歌い上げ、視覚的にも面白く、さらに音楽的にも満足させようという意図は明確だったと思う。

しかしながら2015年の今、上演しなければならないというほどの作品とも思えなかった。演出のせいかもしれないが、第1幕は物語の展開上、最初から説明的なのが退屈。第2幕も袈裟御前が夫の身代わりになって盛遠に首を跳ねられるというところで幕になる。ようやくオペラらしい主人公の苦悩が明らかにされる第3幕になって、幻想的な場面も登場するのだが、平安朝の衣裳に魑魅魍魎を表現した?ダンサーが絡むのは、なんだかショーを観ているみたいで軽かった。

第2幕と第3幕を続けて上演するので、なんだかオマヌケな空白の時間ができてしまった。続けて歌わされる盛遠役の豊島雄一も気の毒で休憩を入れても良かったのではないだろうか。第2幕の幕切れと第3幕の開幕が同じ場面として語られるので妙な具合だった。

歌手陣は最初から最後まで出ずっぱりの盛遠の豊島雄一が大健闘。かなり過酷な条件であっても歌い通す姿勢に感銘を受けた。しかも肉声でありながら、明瞭に発音される日本語で彩られた歌詞。字幕表示はあっても、十分に聴き取れるし、美しい日本語を耳にしたという感じである。歌手陣は傑出した歌手がいない代わりに、長期間?にわたり稽古を積んだ成果が現れて、舞台上の誰もが見事な歌唱を披露していたように思う。日本語の歌詞の字幕意表示もされるのだが、さすがに数箇所間違っていたところもあったようだ。それが少しの瑕にも感じられなかったのは、歌手と合唱団、若手である柴田真郁が指揮するオーケストラも寄せ集め?オーケストラにしては健闘していたと思う。

問題だったのは演出で、いささか古めかしい日本人の書いたオペラという概念を打ち破るためか、回り舞台や照明などあらゆる手法を用いていた。おかげで美しく設計された多彩な照明で各場面をライブのようなショー的なものになっていたけれど、説明過剰で観客の想像の翼をへし折ってしまうようなものだったのが、作品を2015年に上演する意義が、今ひとつ飲み込めないままだった。

第2幕はオーケストラボックスを上手と下手から挟み込むような花道を使用しての演出があり、花道の七三で見得をきめるような演出はなく、単なる入場前の通路になってしまったようだ。盛遠の苦悩が中心になる第3幕は、演出家の腕の見せ所だと思ったのか、これでもかこれでもかと色々な球を投げてくる演出だが、軽薄に過ぎたように思う。渡辺渡の小山陽二郎は烏帽子を落としてしまったのか、何故か現代風のヘア・スタイルで演技を続けていたが、カーテンコールでは烏帽子をつけていたので、単なるミスだと思うが、さすがにアンバランスで無理があったようだ。

オペラ『袈裟と盛遠』は、1968年明治百年記念芸術祭特別公演として二期会、藤原歌劇団合同で初演し、東京を皮切りに東海・関西含め8公演を華々しく行った日本オリジナルのオペラ作品。今回は、気鋭の三浦安浩による新演出、近年人気が高まっている柴田真郁の指揮、沢崎恵美、川越塔子、泉良平、豊島雄一、中鉢聡、小山陽二郎ら充実したキャストにより上演し、日本オペラの位置づけをより確かなものとすることを目指す。

2015年3月29日(日)15:00開演 新国立劇場中劇場

原作:芥川龍之介
作曲:石井 歡
台本:山内泰雄
総監督:大賀 寛
指揮:柴田真郁
演出:三浦安浩

出演:
【盛遠】豊島雄一
【袈裟】川越塔子
【渡辺渡】小山陽二郎
【白菊】山田真里
【平清盛】江原 実
【佐藤義清】川久保博史
【呪師】井上白葉
【勢至菩薩】望月成美
【鬼子母神】西野郁子

合唱指揮:諸遊耕史
合唱:日本オペラ協会合唱団
管弦楽:フィルハーモニア東京
美術:鈴木俊朗
衣裳:坂井田操
照明:稲葉直人
舞台監督:八木清市
公演監督:荒井間佐登

第1幕 15:00~15:40

休憩20分

第2幕 16:00~16:40
第3幕 16:40~17:20
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