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コンタクト 劇団四季 自由劇場 [ミュージカル]

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劇団四季が主にストレートプレイを上演するための専用劇場であるはずの自由劇場。結局、2014年は1月19日から2月2日まで加藤道夫の『思う出を売る男』の1作品が上演されただけだった。ストレート・プレイのレパートリーも硬直化していて、この5年でみても『エクウス 馬』、『ハムレット』、『スルース 探偵 』、『オンディーヌ』、『ヴェニスの商人』、『思い出を売る男』、『解ってたまるか!』、『間奏曲』、『ひばり ジャンヌ・ダルク 奇蹟の少女』、『この生命誰のもの』、『鹿鳴館』のわずか11作品にすぎない。レパートリーという名の同じ作品の再演を繰り返しているだけだる。看板演目であるはずのアヌイやジロドウの作品もなかなか上演されない。ファミリーミュージカルとロングランが厳しいミュージカル作品の短期上演の場と化してしまったようだ。

主に外国の作品を取り上げる劇団とはいえ、日本人の作家の新作上演は1979年の山崎正和の『地底の鳥』以来途絶えてしまっている。浅利慶太が退いてしまっては、自由劇場でストレートプレイが上演される機会はもっと減ると思われる。舞台美術家の金森馨の名舞台『エレファント・マン』、『桜の園』、『かもめ』など再び日の目を見ることもないだろう。チェーホフ作品を演出したアンドレイ・シェルバンは、その後はオペラ演出も手がけるようになり、いくつもの名舞台を残している。

今回上演された『コンタクト』の振付・演出のスーザン・ストローマン も今シーズンのメトロポリタン歌劇場の喜歌劇『メリー・ウイドー』の新演出を担当しているようなので、それなりの才能のある人なのだとは思うが、この2000年のトニー賞ミュージカル作品賞を受賞した「ダンス・プレイ」ミュージカルが定着しなかったところをみると、単なる目新しさだけではなかったかと思う。作品自体の持つ力は、それほど大きくなく、むしろ出演者のダンス技術、表現力に頼った作品なのだと思う。何かがあるようにみえて実は底が浅い作品である。

そうした作品に全力で立ち向かい、へとへとになるまで踊りこんだであろうダンサー達にまず敬意を表したい。すべてを捨てて打ち込むような作品とは到底思えないにもかかわらず真摯に作品と取り組む姿勢だけは賞賛するしかない。

さて、この作品のテーマを言い表わすならば「妄想」である。劇場に入ると黄金色の額縁舞台に幕が降りていて一枚の絵がかけられている。最初の作品と同じく、若い女性がブランコに乗り、若く美しい貴族と戯れている。その背後には、ブランコを押す召使いが暗い表情で描かれている。観客に向かって、この1枚の絵からどのような妄想を引き出せるか勝負!と言っているかのようである。

そこで描かれるのは、ズバリSEX。さすがに舞台上で本当にSEXするわけにはいかないので、それを昇降するようなブランコがポイント。ワインを取りにいった貴族のいない間に、召使いが若い女性に誘われるまま大胆に結ばれてしまうのである。しかも、憧れの姫様に低俗な召使いが性行為を働く、されに被虐趣味なども加わってポゼッションプレイというか何というか。なんともいえない変態プレイのオチがつく。これも「妄想」が大きなテーマだと思う。しかも若い女性も得体に知れない存在で娼婦かもしれないのである。

続いて上演されるのは、高圧的なマフィア?の夫とイタリアンビュッフェのレストランを訪れた妻。それこそ、ウエイター長と「妄想ダンス」を繰り広げて踊りまくるのだが、所詮は「妄想」は「妄想」に終わるという救いのない物語。結局、夢見る妻に、いかに解放的なダンスを踊らせるかに主眼があって中身はからっぽ。エンターテイメントに徹しているのだと割り切れば、アイディアにあふれた振付に感心すればいいのである。

最後の『コンタクト』と名づけられた作品は、イエロードレスの女という役名のダンサーにかなりのダンス力が要求されていて、ダンスで観客をねじ伏せるようなものがなければならないのだが、残念ながら演じた高倉恵美には何も感じられなかった。本当に彼女は踊ることを楽しんでいるのだろうか。そうした気持がなければ、観客の心を動かすことなど出来ないのである。役柄とはいえ、日本人なのにツンとすました感じがどうしても馴染めなかった。

ここでは、自殺願望のある心を病んだ主人公の自殺未遂のうちに起る「妄想」をダンスで表現するという趣向。なにしろ広いとは言えない劇場空間のダンスなので制約があるとはいえ、振付は単調なもので、跳躍や回転もこじんまりとまとまって面白くない。はっきり言って飽きるし退屈である。ダンサー達は体力の限界まで追い込まれている必死さが伝わってくるだけに、余計に複雑な思いにかられた。

主人公がどう救われたのか、あるいは道ずれに自殺に巻き込んでしまったのか、明確な答えをださないまま幕となり、カーテンコールになるので、あまり深く考えさせないようにしているかのようだった。ダンサー達にはご苦労様。もっともらしい解説や賞賛があふれているが、残念ながら、それほど評価の高い作品とは思えなかった。


オリジナル・スタッフ

演出/振付 スーザン・ストローマン
脚本 ジョン・ワイドマン
装置デザイン トーマス・リンチ
衣裳デザイン ウィリアム・アイビー・ロング
照明デザイン ピーター・カザロウスキー
音響デザイン スコット・ストウファー
演出補/振付補 スコット・テイラー
振付アシスタント ジョアン・マニング


『コンタクト』
2014年11月27日(木)13:30開演
公演劇場:自由劇場(浜松町)
上演時間:約2時間15分(休憩を含む)

Part 1 SWINGING

ブランコに乗る女  井上佳奈
貴族   ツェザリモゼレフスキー
召使い 松島勇気


Part 2 DID YOU MOVE?

妻 坂田加奈子
夫 青羽 剛
ウェイター長 金久 烈

岩崎晋也
松島勇気
永野亮比己
水原 俊
新庄真一
ツェザリモゼレフスキー

加藤久美子
宮田 愛
村上今日子
加島 茜


Part 3 CONTACT

マイケル・ワイリー 田邊真也
バーテンダー青羽 剛
黄色いドレスの女 高倉恵美

岩崎晋也
松島勇気
朱 涛
永野亮比己
水原 俊
新庄真一
ツェザリモゼレフスキー

加藤久美子
宮田 愛
井上佳奈
村上今日子
馬場美根子
加島 茜

Contact (Broadway Musical) Part One: "Swinging"


Contact (Broadway Musical) Part Two: "Did You Move?"

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