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不破留寿之太夫 9月文楽公演・第三部  国立劇場小劇場の [文楽]

九月の文楽公演は3部制とはいうものの、これまでと違って上演形態、上演時間、料金もそれぞれ異なる企画となった。11時開演で15時30分終演の第一部は、これまでの二部制と同じ公演形態で、通し上演スタイルの『双町蝶々曲輪日記』で嶋大夫の「橋本の段」、咲大夫の「引窓の段」がそれぞれ素晴しく見ごたえがあった。

第2部は上演時間が2時間30分で演目が二つという従来の三部制の形態で、中堅が活躍する『近江源氏先陣館』では文字久大夫が熱演で、師匠である住大夫引退で大きく成長したのかもしれない。短くとも見所の多い『日高川』も上演され初心者にも文楽というものを理解し親しんでもらうには、料金も上演時間も手頃で絶好の内容だったと思う。

そして今回最も注目されたのが、シェイクスピアの「ヘンリー四世」と「ウィンザーの陽気な女房たち」を原作とした『不破留寿之太夫』(ふあるすのたいふ)である。上演時間は80分で短い映画並み。料金は1等4,500円、2等3,600円、3等1,500円とお手頃価格ではあるが、三部と通しで観るとなると少々割高ではないかと感じていたが、終わってみれば、上演時間も、料金も適切で大いに満足した。

30分の休憩の間に、床の燭台は外され、床も大夫や三味線の肩衣も草原をイメージしたデザインが施されていて、定式幕ではなく緞帳が使用され、舞台面も黒く縁取りされていた。新作からなのか字幕表示はなく、劇場全体を劇世界に取り込むような美術で独特な雰囲気。

特筆したいのはまず音楽。三味線、琴、胡弓?などが使用され、お囃子も洋楽のパーカッションが多用され、洋風の味付けがされながら日本古典芸能から逸脱しない趣味の良さ。それは衣裳にもいえてヘソのピアスやイアリングは着物だと下品なのだが、この設定だと自然。美術、そして人形にまで新工夫が凝らされていたが古典を逸脱しない方向。シェイクスピアらしき人物も開幕時、居酒屋、幕切れなどに登場。小ネタでは居酒屋でプラット・ヴァレー・ストーンジャグに混じって響のボトルがあったのに個人的には受けた。お品書きの札に、ふぃっしゅ&ちっぷす、ふらいどちきん、びーふしちゅーなどがさりげなく置かれていた。

文楽には珍しい喜劇だが、全てがさりげなく、理解できた人だけが微笑むような仕掛けが満載で、これも文楽のコアなファンあってこそ。シェイクスピアらしい言葉遊びもあって楽しめる。「ヘンリー4世」や「ウィンザーの陽気な女房たち」を翻案上演という訳でもなく、シェイクスピアの研究者が古典芸能である文楽と上手く融合させたという印象。毒はないし、文楽以外のジャンルしか観ない観客には温すぎたかもしれないが、これ以上弄り回されては破壊されてしまうだろう。

喜劇という事で、文楽の大夫の中で最も相応しい大夫となれば、我が愛する英大夫しかいない。その重責をはたして見事な出来。清治らの三味線も大健闘である。勘十郎も最後は舞台から花道風に使用する通路に降りて人形を遣うなど苦労も多かったと思うが、それは十分に報われたようである。

<第三部> 19時開演 (終演20時20分)
 〔新作文楽〕
シェイクスピア=作
    「ヘンリー4世」「ウィンザーの陽気な女房たち」より
    鶴澤清治=監修・作曲
    河合祥一郎=脚本
    石井みつる=美術
尾上菊之丞=所作指導
    藤舎呂英=作調
  不破留寿之太夫(ふぁるすのたいふ)

大夫 豊竹英大夫
    豊竹呂勢大夫
    豊竹咲甫大夫
    豊竹靖大夫

三味線 鶴澤清治
     鶴澤藤蔵
     鶴澤清志郎
     鶴澤龍爾
     鶴澤清公

不破留寿之太夫  桐竹勘十郎
春若          吉田和生
居酒屋女房お早   吉田蓑二郎
蕎麦屋女房お花   吉田一輔
旅人          桐竹紋臣
居酒屋亭主      吉田勘市
蕎麦屋亭主      吉田玉佳

<第三部>
1等席 4,500円(学生3,200円)
2等席 3,600円(学生1,800円)
3等席 1,500円(学生1,100円)

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