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東海道四谷怪談  劇団俳優座創立70周年記念公演 俳優座劇場開場60周年 [演劇]

今年の成人式も各地で荒れたという。天使の故郷の隣町では模造刀を振り回して逮捕されたバカがいるとか。天使の頃の成人式はどうだったかというと、成人式には出席しないという若者がけっこういたように思う。今のように普段地味な生活を送っている若者が一世一代で目立つといったようか空気ではなく、行かないのが流行だったように思う。

さて、その成人の日に何をしていたかというと、渋谷にあった東横劇場へ劇団俳優座の『マクベス』を観に行ったと記憶している。加藤剛が主演で、確かコーヒーのコマーシャルにもなったような気がする。小田島雄志
=訳、増見利清=演出のシェイクスピア劇は、その頃の俳優座の看板公演だったのだ。

もちろん六本木には俳優座の本拠地ともいえる俳優座劇場があったが、400名ほどの定員の小劇場では観客をさばけるわけもなく、上演中に階下の地下鉄・銀座線の音が響くという信じられない悪条件ながら渋谷の1000名規模の劇場で公演していたわけで、1月の俳優座、2月、7月、12月の文学座、6月の前進座など、まだ勢いのあった新劇の公演会場として利用されていたのだった。

古い俳優座劇場は2階席があり、かつての築地小劇場はこんなかんじだったのではないだろうかと思わせる緊密な劇空間だった。今でいえば、劇団四季の自由劇場を小ぶりにして両翼にバルコニー席をつけたような感じである。その俳優座劇場が取り壊されて新しい劇場に生まれ変わった。六本木という都心の最高の立地ながら、客席数は300ほど、舞台の間口は広くなったものの、高さも奥行も以前に比べて小さくなってしまった。

劇団昴の三百人劇場、前進座の前進座劇場など、劇団の所有する劇場は無くなってしまったが、俳優座はなんとか持ちこたえているようだが、自分達の?劇場で公演するのは年に1度のようである。劇団俳優座の創立70周年記念公演と俳優座劇場開場60周年という節目の公演に『東海道四谷怪談』が取り上げられた。前進座を別にすると松竹の歌舞伎以外で『東海道四谷怪談』を上演したのは俳優座であるという伝統?を意識してのことだろう。シアターコクーンで蜷川幸雄の演出で歌舞伎以外の俳優で上演された例もあり、またコクーン歌舞伎という演出に工夫をこらした試みもあった。

今なぜ『東海道四谷怪談』を上演しなければならないのか最後までわからなかった。歌舞伎の舞台を知っているか、演劇雑誌の「テアトロ」に掲載された上演台本をあらかじめ読んでおかなければ、今は一体どこで何が起っているのか、さっぱり理解できないであろう不親切な上演だったように思う。

客席の1列目は外され舞台が拡張されていたのは、舞台上手に設けられた自走式の回り舞台?のために奥行を稼ぐためだったのだろう。舞台下手には土手?に使われる足場のような装置があって、適時小道具が並べられて多くの場面が構成されていく。

ほぼ原作を忠実になぞっていくのだが休憩を入れて3時間という制限があるため物語の展開が早い早い。それでも「地獄宿」の地獄のお大の部分や「三角屋敷」といった歌舞伎では上演されない部分も取り上げているので、「東海道四谷怪談」という物語の全体像を理解するには役立ったかもしれない。ちょうど歌舞伎で上演されない箇所を文楽の通し上演で確認するような感覚である。

歌舞伎ではないので、役者の芸をみせるという方向ではない。だから髪梳きもアットいう間。戸板返しも下手の土手下から、戸板を滑らせてくるという手法(なんとなくお岩さまが移動式のベッドに乗っているような感じ)
である。怪談といった要素は極力削られて、ねずみはでないし、赤ん坊はお地蔵様に変わらないし、提灯抜けといったようなケレンは一切ない。

役者の至芸もなく、目で楽しめるようなケレン味もないので、面白いかといわれたら、なかなか面白いと言い難い舞台となってしまった。俳優座の役者が掛け合い漫才よろしく、開幕前に携帯電話の電源を切るようにお願いしたりする前説があったり、劇場の通路に出演者全員が並んでパレード?したりするのが、かつての俳優座のイメージからすると考えられないことで新鮮には思えたが。

最も効果をあげたのが、舞台下手に陣取っていた、パーカッションと琴、尺八のアンサンブル。劇的な効果をさらに高めていて、大いに芝居を盛り上げていた。でも、何故『東海道四谷怪談』なのだろう。現代の観客にも理解できやすいように、仮名手本忠臣蔵の世界ではなく、実録の忠臣蔵によっていた。いっそのこと、忠臣蔵もあわせて一日で上演すれば意外に受けたかもしれない。


劇団俳優座創立70周年記念公演 第1弾
俳優座劇場開場60周年
「東海道四谷怪談~強悪にや誰がした~」

2014年1月16日(木)~26日(日)
俳優座劇場(六本木)

民谷伊右衛門・・・・・内田夕夜
お岩・・・・・・・・・井上 薫
お袖・・・・・・・・・佐藤あかり
四谷左門ほか・・・・・伊東達広
直助権兵衛・・・・・・八柳 豪
佐藤与茂七・・・・・・関口晴雄
宅悦・・・・・・・・・児玉泰次
お政ほか・・・・・・・島美布由
奥田庄三郎ほか・・・・齋藤隆介
通人文嘉・・・・・・・中吉卓郎
柏屋彦兵衛・・・・・・中 寛三
灸点のお大・・・・・・小澤英恵
小仏小平・・・・・・・森尻斗南
伊藤喜兵衛・・・・・・河野正明
お弓・・・・・・・・・瑞木和加子
お梅ほか・・・・・・・桂 ゆめ
下男ほか・・・・・・・宮川 崇
医師尾扇・・・・・・・河内 浩
秋山長米兵衛ほか・・・蔵本康文
非人づぶ六・・・・・・島 英臣
願哲・・・・・・・・・林 宏和
非人 目太ほか・・・・小田伸泰
非人 唖女・・・・・・山本祐梨子

作=四世鶴屋南北
脚本・演出=安川修一
音楽=和田啓
美術=宮下卓
照明=石島奈津子
衣装=二宮義夫
振付・所作=河路雅義
殺陣=島英臣
舞台監督=葛西百合子
制作=山崎菊雄 水野陽子


1968年『東海道四谷怪談』★
1968年8月9日~8月30日
国立劇場大劇場

作=鶴屋南北
演出=小沢栄太郎

≪配役≫
四谷左門・・・・・・・・・小沢栄太郎
民谷伊右衛門・・・・・仲代達矢
佐藤与茂七・・・・・・・加藤剛
小仏小平・・・・・・・・・田中邦衛
直助権兵衛・・・・・・・永井智雄
按摩 宅悦・・・・・・・・三島雅夫
お岩・・・・・・・・・・・・・大塚道子
お袖・・・・・・・・・・・・・市原悦子
お梅・・・・・・・・・・・・・栗原小巻   ほか

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