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おのれナポレオン 5月11日19時開演 東京芸術劇場プレイハウス [演劇]

天海祐希が心筋梗塞で降板し、その代役に宮沢りえが立った話題の舞台。宮沢りえは4回の舞台を踏むだけだが、その3回目を観る機会に恵まれた。最初から予定していた観劇なので偶然なのだが、こんな事はなかなか起きる事ではないので興味深々で劇場に向かった。当日券を求める人の列は2階の劇場前から階段を伝わって1階ロビーまで伸びていた。ほとんどが午前中から並んでいたようで、消防法ギリギリ?まで並べた補助席や立見席を販売していたようだった。そんな人気舞台でも、所々に空席があったのは天海祐希ファンの席だったのかもしれない。

宮沢りえは、わずか2日だけの稽古しかしていないとは思えないほど堂々たる演技を披露して立派だった。演技スペースは、舞台奥から客席にまで突き出した長方形の傾斜舞台。しかも上手と下手にステージシートとして観客が座っているので、歌舞伎の様にプロンプターに頼る訳にはいかない。時間や場面が目まぐるしいほどに移動するので、ちょっとしたキッカケを間違えると芝居として成立しなくなってしまう。

登場人物が6人だけで、複雑な心の動きをみせる芝居だけに、単に台詞を覚えるだけ、動きを覚えるだけでは務まらない役である。野田秀樹をはじめとする共演者に負けない個性をも発揮しなければならないので、相当ハードルは高かったはずである。たまたま宮沢りえはスケジュールが空いていたから良かったものの、上演中止になっても可笑しくない状況だった。必死で台詞や演技を覚えても、たった4回しか上演出来ないのである。損得だけなら、引き受けても損ばかりである。万一、舞台で立ち往生でもしたら最後、彼女の女優のキャリアを傷つける恐れもあった。

そんな困難な状況を乗り越えて、宮沢りえは立派に代役を務めた。見事な女優魂と言わなければならない。しかし、それだけの成果のあった舞台かというと微妙だったかもしれない。ナポレオンの死の謎を巡る物語。登場人物の誰もがナポレオンに殺意を抱いていて、死後20年を経て真相を明らかにしようとする試み。チェスの名人で、遥か先の手まで読み切ってしまう能力のあったナポレオン。彼が見通す事の出来たのはチェスだけではなかった。と書いてしまうと単純で勘の良い観客ならば先が読めるような、少々底の浅い芝居だった。

三谷幸喜の作品らしく適度に笑いが散りばめられてはいるが、心に残る様な物は少なく、ひたすら野田秀樹の個性的で珍妙?な台詞回しで観客を翻弄し続けるのを眺める他はなかった。とにかく野田秀樹の存在感に尽きる芝居で、そこへ目を付けた三谷幸喜は流石なのだが、途中から三谷幸喜の作品なのか、野田秀樹の作品なのか分からなくなってしまった。

野田秀樹の作品としては、饒舌さや軽妙さ詩的なイメージが不足しているし、三谷幸喜の作品としては完成度が低かった様に思う。特に野田秀樹が登場するまでの前半が低調で面白くなくて退屈。ようやく野田秀樹が登場して、軽やかな演技を披露してから舞台が弾んだ。

カーテンコールは気の早い観客が最初からスタンディングオベーション。宮沢りえの快演は認めても、野田秀樹はテンションが高すぎて何を言っているのか分からなくないことが多かった。しかも結構老けている事に驚いた。他の共演者も非常事態だからかテンションが高かったが、台詞が不明瞭な役者もチラホラ。一日潰してまで並んで当日券を買った観客は気の毒だったかもしれない。

作・演出 三谷幸喜

ナポレオン・ボナパルト 野田秀樹
アルヴィール・モントン 宮沢りえ

シャルル・モントン 山本耕史
マルシャン 浅利陽介
アントンマルキ 今井朋彦

ハドソン・ロウ 内野聖陽

演奏 高良久美子 芳垣安洋

19:00〜21:20
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