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2ピアノ4ハンズ 日生劇場 [演劇]



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今日は平日ながら会社は休み。一日地元でゆっくり過ごす予定だった。早起きして、忙しさに負けてこの頃すっかり練習を怠けていたチェロを弾きだしたら止まらなくなって3時間が経っていた。さすがに疲れてしまって、さて夕方のレッスンまでどう過ごそうかと思っていたら、急に閃いたので上京して日生劇場で来日公演中の『2ピアノ4ハンズ』を観ることにした。自宅から劇場そして練習場というまさにトンボ帰りの弾丸ツアー状態だった。

前回8年前の来日公演のことは全く知らず、たまたま新橋演舞場のポスターやら歌舞伎の筋書に広告が出ていたので、このユニークな舞台の存在を知ったのだが、観る観ないは別にして演劇にはアンテナを張っているつもりだったのに全く引っかからなかった。案の定、月曜日の13時半開演では観客の大半は高齢者ばかりで空席が目立っていた。確かイープラスの「得チケ」でもS席が5000円くらいででていたような気がする。

今回はオリジナル・キャストで作・演出を担当もしているテッド・デクストラとリチャード・グリンブラッドが出演。宣伝用のポスターでは若々しかったのに、流石に年齢を重ねてきたので二人とも、すっかりオジさんになっていた。カナダでの初演、ニューヨークのオフ・ブロードウエイやロンドンでもロングラン公演を成功させ、他のキャストでの公演や各国のプロダクションを加えると200万人もの人々が観ているそうである。

登場人物は二人だけ。舞台には天版が外されたYAMAHAのフルコンサートピアノが2台向き合うように置かれている。背景には大きな額縁が二つ。下手側は縦置き、上手側は横置きで背景は黒一色。上手側の額縁の上に横2列で字幕がでる仕掛けなので、オペラなどと違い科白の意味も演技も両方とも視線に入るので英語上演といいながら字幕映画を観ているかのように楽しめた。

上手側のデッドはブラックタイのタクシード姿で、下手側のリチャードはホワイトタイの燕尾服姿で登場。最初のバッハの「チェンバロ協奏曲 ニ短調 第一楽章」が演奏されるまでは、コント風のやりとりがあって笑わせるが、演奏が始まると素人のレベルとは違った音楽が流れてきて驚くという仕掛け。玉三郎の「阿古屋」や自由劇場の「上海バンスキング」など役者が楽器を演奏することなど珍しくもないが、プロ並みの腕前を持った男性俳優が二人揃うというのは、なかなか日本ではないことである。

結局、冒頭の曲は最後まで演奏されずに、上着を脱ぐことによって、交互にピアノ教師などを演じ分けるという演劇的な手法で物語が進んでいく。小さな子供たちが遊ぶ時間もなくピアノのレッスンに明け暮れる話とか、調号がいっぱいついた調性、和音、音符の長さのカウントなど、さっきまで楽譜と格闘していた身にとっては、いささか耳の痛い話が続いて大いに共感できた。

物語は子供には単調で辛いレッスンの日々、小学生時代のコンクールでの緊張や失敗。親が練習を強要したり、学業を優先させるため逆に禁止したり。とピアノを習ったことのある子供なら誰でも同じような体験をしたであろうことが次々に起こる。ピアノ教師も様々でかなり怪しげな教え方の先生なども登場する。第1幕でのお気に入りは、口うるさくレッスンを強制する父親を演じているテッドの胸で子供の役を演じているリチャードが泣く場面。自分自身と父親の関係を見るようで泣かされた。

第2幕は、少年から大人になりかけ、10年以上の歳月を費やして世界的に活躍するピアニストを目指した青年達が直面する厳しい現実が描かれる。クラシックの音楽院への進学では手厳しい判断をされるし、クラッシックからジャズ・ピアニストへの転向を目指そうにも、より厳しい拒絶にあう。第1幕で観客の誰もが思い描いたピアニストとして成功する結末はない。アルバイト?のピアノ教師ではピアノを弾くよりも生徒の世間話に終始してしまうし、バーでの弾き語りでは、誰もピアノを聞いてくれなくて酔っぱらいに不愉快に絡まれたりする。ここでは天使が大好きな『ピアノ・マン』がミラーボールで回る中で歌われた。

そして最後に二人は燕尾服に正装して、最初に演奏されなかったバッハの『チェンバロ協奏曲 ニ短調第1楽章』をコンサートのように弾いて幕となる。苦い結末だけれど、これが多くのピアノのレッスンを続ける人々の姿なのだと思う。それはピアノに限らず、多くの人々が夢を実現できずに生きていることに似ている。

最後はアンコールとしてバッハのカンタータ 第208番 楽しき狩こそわが悦び(狩のカンタータ)BWV 208 2台のピアノ編曲版が演奏された。NHKFMの「朝のバロック」のテーマ曲としても有名なのだが、二人によって演奏されると、その繊細さと優しさが際立って美しく響いて深い感動があって終演後もしばらく席を立てずにいた。

東京公演は20日まで。その後、23日に仙台、26日に名古屋、6月に入って3日まで大阪松竹座で上演される。

第1幕 13:30.〜 14:20

幕間 20分

第2幕 14:40〜15:45

MUSIC LIST

チェンバロ協奏曲 ニ短調 第一楽章(バッハ)

ハート・アンド・ソール(ホーギー・カーマイケル)

バーチ・カヌー(レリア・フレッチャー)

バイ・ザ・ストリーム(リチャード・グリンブラント)

アワ・バンド・ゴーズ・トゥ・タウン

ソナチネ第6番 へ短調(ベートーヴェン)

ピアノ・ソナタ ハ長調第1楽章(モーツァルト)

四手のためのピアノ・ソナタ ニ長調第1楽章(モーツァルト)

山の魔王の宮殿にて− 「ペールギュント」第1組曲より(グリーク)

前奏曲 変二長調(ショパン)

レイエンダ(アルベニス)

2台のピアノのためのロンド ハ長調(ショパン)

幻想小曲集第2番(シューマン)

ピアノ・ソナタ第8番ハ長調「悲愴」第1、第2楽章(ベートーヴェン)

バラード第2番 へ長調(ショパン)

メフィスト・ワルツ第1番(リスト)

ポップス・メドレー
(イマジン、上を向いて歩こう、戦場のメリークリスマスなど)

即興曲 変イ長調(シューベルト)

マイ・ファニー・バレンタイン(リチャード・ロジャース)

ピアノ・マン(ビリー・ジョエル)

チェンバロ協奏曲 ニ短調第1楽章(バッハ)

アンコール曲:カンタータ 第208番 楽しき狩こそわが悦び(狩のカンタータ)BWV 208 2台のピアノ編曲版(バッハ)

レオン・フライシャーの演奏

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