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ばらの騎士 新国立劇場  [オペラ]

初日のチケットを買っていたのに、震災の影響で指揮者のアルミンクをはじめ5人の歌手が降板し、10日に初日が延期になってしまった。16日のほぼ同時刻に東京文化会館で行われる東京バレエ団の『ラ・バヤデール』のチケットも持っていたのだが、お目当てのフリードマン・フォーゲルが来日できなくなり降板してしまったので、迷わず「ばらの騎士」のチケットを買い足す。

東京へ向かう列車の中で、あちらこちらで携帯電話の緊急地震速報が鳴り出し、緊急停車し、かなり強い地震が起きる。その影響で15分ほど停車。動き出しても安全確認のため途中までノロノロ運転で、特急が各駅停車になったものの、津田沼で通常運転になったので、開演10分前に客席に滑り込めた。

新国立劇場では、開演前のアナウンスはほとんどないのだが、不測の事態に備えて、緊急事態の際には椅子に座ったまま係員の指示があるまで待つように案内が繰り返された。他の劇場でも同じような案内があり、地震が起こった場合は、自分の席に座ったまま誘導があるまで待つのが共通の対処方法らしい。

こちらも余震に備えて、携帯ラジオ、LEDを使った懐中電灯、携帯電話の電池の予備、携帯用の食料、ペットボトル、笛などサバイバルキットを携行しての観劇である。いつ起こるか分からない余震の恐怖に耐えながら、舞台に向かうのは、戦時中にいつ空襲警報が発令されるか分からない状況でも、命がけで歌舞伎を演じた役者や、舞台を見詰めた観客に似ているかもしれない。

余震も収束せず、原発の問題も解決しないでは、来日する団体が公演を中止するのも仕方がない。レベル7になってしまっては、これから予定される公演の上演が実現しなくても不思議ではない。上演中に地震はなかったが、開演前、休憩後など、万一の場合は、座席に座ったまま係員の指示に従うようにと何度もアナウンスが繰り返された。大きな余震の不安も払拭されない中での上演だったことを改めて認識する。それだけに断固来日したオリジナルキャストのフランツ・ハヴラタに大拍手です。

東日本大震災と原発の影響で、指揮者のアルミンクルをはじめ、女声陣が来日しないので、上演が危ぶまれた「ばらの騎士」ですがカヴァーの日本人歌手と新たにキャスティングされた元帥夫人のおかげで、なんとか上演に辿り着いた。

さすがに再演だけあって、初演時のような演出の冴えがなかったような気もするが、一筋縄ではいかない大曲を見事に上演した関係者の努力にに拍手です。この演出は、最近流行の作曲者が作曲した時代に舞台を移していて、おかげでオクタヴィアンを中心とした人間関係が鮮明に浮かび上がった。

元帥夫人は不倫でオクタヴィアンと、オックス男爵は女装したオクラヴィアンと、ゾフィーは純愛?でオクタヴィアンと…。あれっ?「ばらの騎士」ってこういう話だっけ?というくらい新鮮な人間関係だということに気がいた。

このオクタヴィアンを巡る人間関係って、全く別の次元の話のように思わせておいて、元帥夫人もオクッス男爵も、合わせ鏡のように似ていることに気がつく。それは、各幕に必ず置かれている鏡からも理解できる。そう舞台の登場人物は、観客とも似ているのです。

第1幕の主役は元帥夫人、第2幕はオックス男爵ですが、この男爵、何かというとワルツに合わせて腰を振ってしまったり、腰に力ををきゅっと入れてしまったり、頭の中はSEXばかりという設で面白くみた。

急な代役だったこともあるのか、ちょっと温めの指揮だったように思う。クライバーが我が道を行く完璧な「ばらの騎士」だとするなら、今回の音楽は足りないところは聴衆の想像力で補ってくださいね!という、アレ、アレ?という場面が目立ちました。よく挑戦したけれど、大感動にまでは至らなかったという感じでした。

ばらの騎士

2011年4月16日(土) 午後2時

リヒャルト・シュトラウス/全3幕
(指 揮)マンフレッド・マイヤーホーファー
(演 出)ジョナサン・ミラー
【元帥夫人】アンナ=カタリーナ・ベーンケ
【オックス男爵】フランツ・ハヴラタ
【オクタヴィアン】井坂 惠
【ファーニナル】小林由樹 
【ゾフィー】安井陽子
【マリアンネ】黒澤明子
【ヴァルツァッキ】高橋 淳
【アンニーナ】加納悦子
【警部】長谷川 顯
【元帥夫人の執事】小貫岩夫
【ファーニナルの執事】経種廉彦
【公証人】晴 雅彦
【料理屋の主人】加茂下 稔
【テノール歌手】水口 聡
【帽子屋】國光ともこ
【動物商】土崎 譲
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】新日本フィルハーモニー交響楽団


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