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遠野物語  劇団わらび座 東京芸術劇場 [演劇]

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畑中先生が生前に音楽の友の連載で絶賛していた劇団わらび座の公演をようやく観ることができた。秋田県の田沢湖の近くに本拠地を置き、オリジナルミュージカル公演年間250ステージをおこなうほか、7つの公演チームが国内、海外で年間約1200回の公演を行っているという。さらに愛媛県東温市にも「坊っちゃん劇場」という拠点劇場がある。日本では劇団四季に継ぐ規模を持つ劇団で、伝統芸能を基本に、歌やダンスに和楽器もこなすという集団であるという。劇団の収入だけで生活ができるというのも劇団四季と同じ。

劇団四季が海外ミュージカルの翻訳上演と、お子様向けのミュージカルに時々ストレートプレイを上演していて、観客の平均年齢が低いのが特徴で、日本人の団員の他、韓国籍や中国籍の団員も多い。劇団わらび座は、主に日本を舞台にしたオリジナルミュージカルを上演していて、幅広い年齢層の観客を集めているようだ。

開幕前は温泉施設を周辺に持っている本拠地というのも何やら宝塚のようでもあり、かつて温泉センターに出演していた大衆劇団のような役割もあったのかなあという先入観もあった。東北を中心とする郷土芸能をベースに、よさこいソーラン風の洋楽にのせたダンスも披露し、さらに合唱といった音楽的な面も本格的で、劇団わらび座という素朴な名称の割りには、かなり高度なパフォーマンスを繰り広げる集団で、世界のどこにもないオリジナルな世界を持つ劇団だと思った。

手塚治虫原作の「ブッダ」、スタジオジブリの「おもいでぽろぽろ」、横内謙介の「小野小町」など、挑戦的ともいえる意欲的な作品もレパートリーにもっていて、劇団四季よりも活力を感じる劇団である。劇団四季のような、妙な日本語での台詞もないのもよい。ただ知名度の点では、遠く及ばないのか東京芸術劇場のプレイハウスという格好の規模の劇場を使用しながら、満席とは言い難い動員だったのは残念だった。

第1部は柳田邦男の「遠野物語」の99話に登場する大津波で妻子を失った福二のその後を描いたオリジナルストーリーで、山男と暮らす娘、カッパ、座敷わらしなどが登場し、たどりついた遠野の人々の交流を通じて心の再生を果たすという物語。主題歌が印象的な旋律で、終演後も頭の中から離れなかった。この中では、春の耕作から秋の取り入れまでを取り入れた「田植え踊り」、頭につけたしし頭?をつけて踊る「しし踊り」が披露された。心に傷を持つ主人公が「しし踊り」を踊ることで蘇る姿が感動的だった。

第2幕は翁を狂言回しに、ある時は生演奏の太鼓、合唱、録音の洋楽を伴奏に使い、次々と東北地方の郷土芸能を繰り広げて、ちっとしたお祭り気分で、辛い日々を送る東北の人々に思いをはせることのできる作品となっていた。

鰊漁を題材にした「沖揚げ音頭」は男性中心の力強いものだった。次は女性だけで「雛子剣舞」。太鼓を叩いての「じゃんがら念仏踊り」、勇壮な「虎舞」、最後は「さんさ踊り」が披露され、華やかに幕となる。その間を翁がつないで、笑わせる場面もあって飽きない。最後は短いアンコールもあるが踊りっぱなしの団員は、劇場の出口で見送るサービスまであって満足させてくれた。

出演者のレベルは高く、腰をグンと落とした姿勢に力強さと柔軟性があり、日頃の鍛錬の厳しさを想像させた。元々は左翼系?だったようだが声高に何かを訴えるような主張する演劇とも無縁で、ひたむきに歌と踊りを繰り広げる芸能集団で他の作品も観てみたいと強く思った。

首都圏での公演予定
ミュージカル「ブッダ」

ミュージカル「おもひでぽろぽろ」

「遠野物語」

平野 進一
椿 千代
安達 和平
笹岡 文雄
千葉 真琴
高田 鵬
森下 彰夫
塚越 光
飯野 裕子
末武 あすなろ
吉田 葵
渡邊 真平
小山 雄大
鎌田 千園
山田 愛子
高橋 真里子


第一部 舞踊詩「遠野物語」 台本・演出/ 栗城 宏

作曲/ 甲斐 正人
美術/ 土屋 茂昭
照明/ 塚本 悟
衣裳/ 樋口 藍 
音響/ 小寺 仁
ヘアメイク/ 馮 啓孝
小道具/ 平野 忍

17:30~18:25

休憩 18:25~18:40

第二部 舞踊集「故郷(ふるさと)」 台本・演出/ 安達 和平

振付/ 安達 真理
作曲/ 紫竹 ゆうこ
美術/ 土屋 茂昭
照明/ 塚本 悟
衣裳/ 樋口 藍 
音響/ 小寺 仁
ヘアメイク/ 馮 啓孝
小道具/ 平野 忍
編曲/ 只野 展也

音楽監督/ 甲斐 正人

18:40~19:20


制作にあたって

わらび座61年目の夏、東北に生きるわらび座が、東北に息づく歌と踊りと物語を土台に、勇気とエネルギーの舞踊の舞台をお届けします。大自然に挑む暮らしの中で、心とコミュニティのより所として育んできた東北の民俗芸能と祭、そして昔語り。今回はその代表として「遠野物語」をベースに舞台化致します。

「遠野物語」は、人間はあらゆるものと共存しているという当たり前の事実を突き付けてくると同時に、そんな世界を人々が自らの知恵と想像力で乗り越えてきた証でもあります。山にも里にも人間とは関係なく自由に生き物が暮らし、天変地異が襲い、人間の魂でさえも無事にあの世に行くものもあれば彷徨うものもある。「遠野物語」の人々は予期せぬ事に遭遇するたびに翻弄されます。しかし逞しくどこか大らかに、妖怪や神様の存在を借りながら思い通りにならなかった事も受け入れて、明日に向かってまた歩み出すのです。

わらび座の「遠野物語」は、森羅万象の中で生きるちっぽけな人間達が、知恵と勇気を持って明日に挑み続ける姿をお届け致します。東日本大震災を越えてゆく私達にとって、これらは今まさに強い力を発揮し、魂を奮いたたせてくれるものと確信しています。


第一部 舞踊詩「遠野物語」

自然の神・精霊たちやもののけたちが集い踊る美しいオープニング。そして山の中を彷徨い歩く男・福二が登場します。山に棲む者たち、山男と暮らす娘おひで、座敷わらし、狐の美女、いたずら河童―。あらゆる生命と共存する遠野の里で、人々は実におおらかに逞しく暮らしています。彼らとの出会いの中で福二の心は徐々に解き放たれ、故郷でもう一度生きてゆこうと決意します。

第二部 舞踊集「故郷(ふるさと)」

遠野や三陸をはじめとした東北各地の舞踊を、未来を切り開くエネルギーと誇りに満ちた舞台にしてお届けします。
重厚な鬼剣舞の合唱の中に浮かび上がる翁舞。漁に生きる男たちの姿を描く沖揚げ音頭。ひな子剣舞をモチーフにした可憐な花の精たちの舞い。生者と死者の魂が熱く対話するじゃんがら。虎舞が未来に向かって躍動し、やがて総踊りのフィナーレへ。翁がいざなう故郷には、喜びも悲しみもより合わせ、支え合って生きてゆく人々の姿があります。


劇団わらび座のホームページはこちら
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